*Obedient You 「・・・・・全校生徒、公認の仲になっちゃった。」 直人に肩を抱かれ、家までの道程を歩きながらそんな言葉が口から漏れる。 「何だよ、嫌だった?」 「嫌・・・じゃないけど。恥ずかしいじゃない。」 直人が私のクラスに迎えに来た時も、彼がクラスにカバンを取りに行った時も凄い反応で。 囃し立てられるし、女の子からの視線は痛いしで・・・。 思い出すだけでも、恥ずかしいやら不安やらが自分を取り巻く。 「俺は、お前が手に入ったから恥ずかしくとも何ともねぇけど?逆に、みんなに恵子が俺の彼女だって認識してもらって嬉しいけどね。」 「そりゃ、直人はそれでいいかもしれないけど・・・あなたのファンの子から何されるか。」 「ファンって・・・。もし、お前に何かしてこようもんなら俺が許さないから。さっきも言ったろ?俺が護ってやるって。だから、安心しろって。」 「んー。それはそうだけど。」 「俺じゃ頼んねぇか?」 私よりも随分と背の高い直人は、少し屈みながら私の顔を覗きこんできた。 「ううん。頼りにしてる。」 そう、ニッコリと彼に向かって微笑むと、ぎゅっ。とまわされた腕に力が入る。 「あぁ、もぅ。その顔もすっげぇ可愛い!その顔、俺だけのモンだかんな!!誰にも見せんなよ?」 「クスクス。何、言ってんのよ。」 「お前のその顔見たら、誰だってイチコロだぞ?絶対ダメ。恵子は俺だけのモノだから。」 「直人って・・・結構独占欲強い?」 「結構じゃなくて、むちゃくちゃ強ぇ。っつぅか、恵子には特別強ぇかも。」 「え・・・どうして?」 きょとん、とした表情で直人を見上げると、彼の顔から笑みが消えて真剣な表情に変わる。 その表情にドキンッ。と胸を高鳴らせて、彼と視線を合わせた。 「俺、ここまで必死になって手に入れたのって初めてだから。だから、誰にも渡したくねぇの。」 「・・・直人。」 「俺が一方的に迫って、無理矢理に付き合ったような形になったけど・・・絶対俺はお前から離れないから。絶対恵子を裏切ったりなんかしないからな。」 どうしよ・・・すごいドキドキする。 こんなに誰かから想われたのって初めて。 俄かに自分の頬が赤く染まるのを感じて、思わず俯いてしまう。 「恵子・・・キスしていい?」 「・・・・・え?」 彼の声に反応して、上を向いた瞬間にもう唇が重なっていた。 柔らかい彼の唇の感触が自分の唇に伝わり、きゅん。と、心の奥が締まる。 啄ばむようなキスを繰り返されて、次第に自分の頭が、ぼぅ。と霞む。 ゆっくりと唇を離して、直人は耳元に唇を寄せてから、 「恵子・・・好きだよ。」 そう、甘く囁いてくる。 「私も・・・。」 そこで言葉を切って、私は真っ赤になりながら直人の胸に顔をうずめる。 ・・・やっ、やっぱり言えない。 「うわー。恵子の部屋って、すんげぇ女の子〜って感じの部屋だな。」 付き合った日に、自分の部屋に上げるのもどうかと思ったけど。 今日は出来るだけ一緒にいたいって思ったから、夏休みの予定を一緒に組もうって事で私の家に招いたの。 ・・・ちょっと早すぎる? だけど、直人ならいいかなぁ。って・・・1ヶ月通ってくれたご褒美って事で。 直人は私の部屋に入るなり、そんな事を呟きながら床にどっかと腰を下ろす。 「そうかなぁ?普通だと思うけど。」 「しかも、すんげぇいい匂いがする。」 「・・・・・変態。」 クスクス。と笑いながら、そう呟くと、変態って。と苦笑を漏らしながら直人が頭をかく。 「と、・・・夏休み、どこ行く?」 「どこ連れてってくれるの?」 「そうだなぁ・・・海とか?」 「うんうん・・・海とか?」 「海とか。」 「うん、海と?」 「海。」 「海だけかっ!!」 直人の横に腰を下ろしながら、ふざけて軽く肩を叩くとその手を掴まれて引き寄せられる。 「うははっ。嘘、嘘・・・恵子はどこ行きたい?」 「えっ・・・あ、私は・・・直人が行くところだったらどこでも。」 直人との距離が縮まり、近くなった顔の距離に途端に心臓が高鳴り出す。 もぉ。直人と知り合ってから、心臓が高鳴りっぱなし・・・こんな事今までなかったのに。 「可愛い事言ってくれんじゃん。じゃぁずっとこうやって2人で部屋に閉じこもってるのは?」 「あー、それってヤラシイー。」 「バーカ。何、想像してんだよ。誰にも邪魔されずに2人っきりでいたいって言ってんの。」 「ふーん、じゃぁヨコシマな事は何もないわけね?」 「さぁ?それはどうだろ・・・恵子前にすると自制を保ってらんなさそう。今だってキスしたくてたまんねぇもん。」 「なお・・・んっ!!」 クイッと片腕で顎を持ち上げられて、そのまま唇を重ねられる。 先程のように啄ばむようなキスを繰り返されて、次第に自分の体から力が抜けてくる。 直人は角度を変えながら、ゆっくりと舌を私の口内に進めてきた。 「ふっ・・・ん。」 私の手が彼の胸元に伸び、口から甘い声が漏れだす。 口内深くで舌を絡め合わせながら、ゆっくりと私の体を床に倒し更に深くで蠢く。 もうダメ・・・キスだけで頭がぼーっとしてきちゃった。 身体の芯が熱く火照り出した頃、直人が唇を離して耳元に寄せると耳朶を甘噛しながら囁いてくる。 ぞくぞくっ。とした震えが全身を抜けて、微かに自分の身体が反応を示す。 「恵子・・・お前の全部、俺のモノにしていい?」 「ぁっ・・・なおと。」 「ごめん。マジ自制効かねぇかも・・・恵子が欲しくてたまんない。」 「んっ・・・直人。でも・・・まだ。」 「分かってる。付き合ったばっかでまだ早ぇって。俺だって今までそんな事なかったけど、恵子だけは今すぐ欲しくて仕方ねぇんだ。」 少し掠れた声が耳の奥で響き、更に身体の火照りが増したような気がした。 「なお・・・と。」 「恵子がまだ嫌だったら止めるから・・・って、止まりそうにねぇけど。」 苦笑を漏らしながら――――嫌だったら抵抗して。そう、視線を合わせてから再び唇を重ねてくる。 ずるい・・・こんな優しいキスをしてきて、抵抗なんて出来ないよ。 私は返事の変わりに、両腕を直人の首にまわして絡めキスを深めた。 |