*あなたの温もり




何度も何度も降り注がれるユキちゃんからの優しいキス。

次第に自分の身体の芯が熱く火照って行く気がしていた。

「もう、お前を離さないから・・・他のヤツになんて目を向けたら許さねぇからな。コンパに行く事も、他のヤローと仲良く話す事も禁止だ。分かったか?」

ユキちゃんは少し唇を離すと、手を私の頬に添えて呟く。

「そんなっ・・・コンパにはもう行かないけど・・・クラスの男の子とも話しちゃダメなの?」

「ダメ。」

「そんなぁ。無理だよ。クラスの仲のいいグループに男の子もいるもん。」

「仲良く話さなきゃいいだろ。」

「そんな・・・。」

無茶苦茶な。

私が眉を顰めていると、頬に添えられた手でそのまま、うに。っと摘まれる。

「お前ね、どんだけお前は狙われてると思ってんだよ。俺が阻止しただけでも結構いるんだからな。」

「阻止?」

阻止って・・・どういう意味?

私が首を傾げていると、しまった。とでも言うようなユキちゃんの表情。

「・・・・・ま、その話は置いといてだな・・・。」

「ユキちゃん?」

「・・・・・・・・はぁ。まぁそのなんだ・・・お前に変な虫がつかねぇように裏で手をまわしてたっつう事だよ。」

裏で手を・・・?

だから今まで一度も男の子から告白された事がなかったの?

「ユキちゃん・・・。」

「傍にいてやれねぇ分、そういう所でしか護ってやれなかったんだよ。まぁ半分は嫉妬が入ってたかもだけど・・・大体な、お前が引き寄せる男ってロクでもねぇヤツばっかだったぞ?ったく、もうちょっとマシなヤローを惚れさせろよ。」

ずっと昔と変わらずユキちゃんは私の事を見守ってくれてたんだ。

そう思うと心が、きゅん。と、温かくなってくる。

でも、ロクでもない人達って・・・どういう人達だったんだろう?

そんな変な人達ばかりに好きになってもらっちゃってたのかな?

「じゃぁ、ユキちゃんもロクでもない人なの?」

「あぁ・・・まぁ一番ロクでもねぇかもな。」

「えっ・・じゃぁやめた方がいい?」

「お前ね、本人を前にしてそういう疑問符を投げてくんじゃねぇよ。嘘に決まってんだろ!俺ほどいい男はいないと思うけど?」

「自分で言っちゃうの?」

「言い切る。だから今後やめるなんて一度でも言ってみろ、そん時は・・・。」

「・・・・・その時は?」

この先を聞くのが怖いと思うのは・・・私だけ?

私が『恐怖』の表情を浮かべていると、ユキちゃんはそれを見てニヤリと口角を上げた。

「お前を嫌っつう程鳴かす。俺から離れられなくなるまで。」

「えっえっ!ヤダ・・・泣かされちゃうの?怖いよ・・・。」

「泣かすんじゃなくて鳴かすんだよ、バーカ。」

「ナカス?」

「ま、その内お前にも分かるよ。多分すぐにな。」

ユキちゃんは意味ありげな言葉で区切ると、再び私の唇を塞いできた。






時折、ちゅっ。と音を立てながら浴びせられるキス。

再び自分の身体が火照り始めているのに気づく。

なんだろう・・・すごく身体が熱くなってきた。

「葵・・・舌出してみろよ。」

「・・・へ?」

私は突然のユキちゃんの言葉の意味が分からずに、不思議に思いながらペロっと小さく舌を出す。

すると、ユキちゃんはそのまま掬い取るように自分の舌を私の舌に絡めてきた。

「・・・んっ?!」

ビクッ。と私の身体が振るえ、思わず手がユキちゃんの胸元を掴む。

それでもユキちゃんからの刺激は止まらず、そのまま奥深くに這入りこんで蠢く。

あっ・・・なに、これ。これもキス・・・なの?

ユキちゃんの舌が自分の舌に絡み合う度、自分の身体が震えるのが分かる。

怖くて震えるんじゃない・・・もっと別の・・・心地よい震え。

「んっ・・・ぁっ。」

思わず自分の口から漏れた声に驚く。

何、今の?自分の声じゃないみたいだったよ?

「クス。色っぽい声出すじゃん。」

ユキちゃんの唇が離れ、そのまま耳元で囁かれてペロッ。と耳朶を舐め上げられる。

「ぁっ・・やっ・・・。」

ぞわぞわっとした痺れと共に、肌が急激に粟立つ。

「俺の事、誘ってんの?」

「えっやっ・・ちがっ・・・うっん!!」

再び耳元で囁かれてから、ユキちゃんの唇が私の鎖骨からウナジ辺りまでつーっと這う。

それにも私の身体は反応をみせて、自分の声じゃない声が鼻から抜ける。

どうしちゃったの?私・・・なんか変だよ。

「誘ってるようにしか思えねぇんだけど?その声にその顔。」

「やぁっ・・そんな事ないもん・・・ユキちゃんが変な事する・・から。」

「変な事ってどんな事だよ。俺、まだ何もしてねぇぞ?」

「だって・・・耳・・耳に。」

「へぇ。葵は耳が感じるんだ・・・なぁ、葵。他は何処が感じる?」

なんかユキちゃん・・・すごく意地悪な気がする。

すごくこの状況を楽しんでいるようなユキちゃんの声。

「そんな・・そんな事言われても分からないもん。」

「ふ〜ん。じゃあ俺が調べてやるよ、お前の感じる場所。」

「あっ・・でも、そんな急に・・。」

「さっき言ったろ。触れたら間違いなく襲うって・・・忘れてねえよな?」

「言ったけど・・・でも。」

「もう遅い。触れちまったから葵を襲う。文句ある?」

ある。と言ってもきっと無駄・・・だよね。

それよりも、もっとユキちゃんに触れて欲しい。触れていたいっていう気持ちの方が大きい事に自分でも気づいてしまったから。

だから私は、ううん。と首を横に振る。






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