*恋は突然に… とりあえず・・・私の中では一番お洒落チックな黒のワンピースにショールを合わせて、髪も アップにしてきたんだけど。 一応カクテルドレス系の大人っぽい格好なのよ?肌もそれとな〜く露出してみたり。 ・・・・・いやらしくない程度にね。 だけど、なっ何かコレでいいのかしら。結婚式の2次会みたい?浮いてない?私。 ホテルのロビーで辺りをキョロキョロと見回しながら、ブレスレット調の腕時計に目をやる。 7時半前・・・もうすぐ秀も来るかしら。 でもよくよく考えてみたら7時半って言ったらお店が一番忙しい時間帯じゃない? そんな中、秀だけ終わらせて店を出てこれるのかしら・・・・・いくらシフト制とは言え彼はあの 人気Cafeのオーナーな訳だし。 ――――職権乱用? あぁ、でもでも早く来てぇ・・・一人でいるの心細いよ。 だってホテルの中は超高級と謳われているだけあって、格調が高いっていうの?置いてあるソファや ガラスのテーブルが普通の物とは比べ物にならないくらいのアンティークな加工が施されているし、 何だかホテルの中を行き交う客層の雰囲気も一般の人とは全然違う気がしてくる。 こんな中一人でいるのって、やっぱりねぇ・・居づらいわけよ。 ・・・・・それにしても高そう。って、高級で有名なんだから当たり前なわけだけど。 パンピーな私にはもう二度とお目にかかれないような所よね。 私はため息を付くと、再び辺りを見渡す。 うわっ。あのガラスケースの中に飾ってある壷とかいくらくらいするのかしら? ひゃぁぁ。床も大理石だったりするの、コレ。 あちこち見渡しながら、ふとホテルの案内が置いてあるのに目が止まる。 私はそれを手に取るとパラパラとめくってみる・・・あ、料金表。 何々、通常の部屋で・・・うわっ。スタンダードで、にっ2万円から?! その上が・・・・デラックスになるとうげぇぇ。3万!! んで、スイートルームが・・・・一番安くて・・・・・。 ・・・・・・はっ?!・・・いち・・じゅう・・・・ひゃく・・・・。 ・・・じゅっじゅう・・・うわぁ!けっ桁が違う!! いっ一泊するのにこの値段?!信じらんない。一泊するだけで?・・・。 あぁ・・・もう、頭がクラクラしてきたわ。 見るんじゃなかったと、後悔しつつパンフを元の場所へと戻す。 宿泊するお金でどれだけおいしい物が食べられると思う?・・・。 はぁ・・・・・・・こんな事しか頭に浮かばない私。うぅ、大人として情けない。 「――――・・俺のお姫様、見〜っけ。」 そう背後から声がして、そっと抱きしめられる。 振り向かなくても誰だか分かる・・・だって愛しい彼だもん。 「・・・・・秀。」 「お待たせ。ごめんね、遅くなって・・・もぅ、智香さんすっげぇ綺麗でびっくりした。」 「もうっ。そんな事言って!!・・・持ち上げたって何も出ないわよ?」 「クスクス。いいよ?だって本物の智香さんを抱きしめられただけで充分満足だから。」 そう言って、秀はさりげなく私の頬にキスをする。 ・・・・・まったく。なんでこの子はこんな赤面するような事をサラッと出来ちゃうのかしら。 お陰で私の頬っぺた真っ赤になっちゃったじゃない。もう・・・恥ずかしい。 そんな様子の私にクスクス。と笑いながら、じゃぁ行こう?と腕を腰にまわして歩き始める。 「だけど、すごいわね。雑誌の取材を受けただけでこんな高級ホテルの食事券をもらえちゃう なんて。ラッキーじゃない。」 「クスクス。ん、そだね。」 「・・・・・何よぉ、反応薄いわね。私なんて嬉しくってすっごい浮かれちゃってるのに。」 「智香さんが喜んでくれるなら、俺はそれで充分。」 「ん?何か意味不明・・・・・。」 「そっかな・・・ま、とりあえずお店に行こう?ここの52階なんだ。その店。」 「ごっ52階?!」 きっと、夜景がすっごい綺麗だよ。と秀は微笑むとエレベーターに乗り込む。 そりゃ綺麗でしょうよ・・・52階だなんて。 何か・・・すっごい緊張してきた・・・。 チーンッ。と言う何とも品のある音を奏でながらエレベーターが52階で止まり、私達はお店の 前まで足を進めた。 たどり着いた先は、すっごくお洒落な外観のフランス料理店。 ふっフランス料理ですか・・・うわぁ。私マナーなんて全然分からないわよ?大丈夫なの? 私は心臓をバクバク言わせながら、秀について店の中に足を踏み入れる。 店の奥から、これまた品のある優しい顔つきをされた方が嫌味のない笑顔で出迎えてくれる。 「いらっしゃいませ。」 物腰柔らかく発せられる言葉。それだけで、『高級店』という品が漂ってくるよう。 「先日予約させて頂いた柳瀬ですが。」 「はい。柳瀬様でいらっしゃいますね。お待ちしておりました・・・どうぞ中へ。」 そう言って一つお辞儀をすると手を店の奥にゆっくりと差し向ける。 へ?・・・・・ちょっと待って。今、「先日予約した」って言わなかった? どういう意味よ・・・ここに来たのって今日雑誌社からもらった食事券があったからでしょ? さっきの電話でだってそう言ってたじゃない。 なんか・・・頭が混乱してきた。 パニクる頭を抱える私の腰にそっと手を添えると、行くよ?と言う風に秀が私の顔を覗き見る。 「え・・・あ、うん。」 シドロモドロの私は秀に促されるまま歩く事しか出来なかった。 |