*恋は突然に…








――――俺を買ってよ。

やっぱりうまく呑み込めない。さっきからこの子は何を言ってるの?

ずっと私を見てたとか、忘れられないとか・・・忘れさせてやるから買えだとか――――。

「・・・ごめん。言ってる意味がイマイチよく分からない。」

「クスクス。そうだよね、突然やってきて告られて買ってよって言われても意味わかんないよね。」

まったくもってその通りです。私は昨日、彼氏にフラれただけでも頭が混乱してるって言うのに。

突然やってきて、追い討ちをかけるように何でそんな混乱するような事を言うの?

私は頭を整理するかのように呟く。

「・・・て、事は何?私は秀を利用して彼氏を忘れろって事?」

「ん〜、まぁ要約すればそういう事。でも最終的には俺の方に向かせる自信はあるけど?」

「すっごい自信。どっからくんのよ、その自信。」

「俺が想ってきた5年間から来る自信。今まで智香さんの幸せを考えて彼氏に遠慮してたけど、別れた

んだから遠慮することなくなったから。本気モードでいく。」

秀が熱い眼差しで私を見つめる。

ちょ、ちょっと待ってよ。突然の展開に私の胸が大きく高鳴る。

「と、突然そんな事言われても困るんだけど・・・昨日の今日でまだフラれた事にも理解できてないし。」

「だから取り合えず俺を買えばいいんだよ。契約って事で。8日以内ならクーリングオフで返品可能

だし?今日は智香さんの誕生日だから特別ご奉仕。」

「契約とか返品とかって、商品じゃないんだから・・・しかも何で私の誕生日知っんっ!!」

発するのと同時ぐらいに私の口は彼の唇によって塞がれてしまった。



柔らかくて気持ちのいい唇だった。

何度も何度も角度を変えてついばむように浴びせられるキス。

少し開いたところから、彼の舌が割り込んできて私の口内を弄ぶ。

脳髄が次第に白い霧の中に吸い込まれていく。

なんなの、この感覚。キスされているだけなのに、こんなの今まで感じた事ない。

私の体からふっ、と力が抜けて倒れそうになるのを彼が抱きかかえる。

「好きなヒトの誕生日を覚えとくのは基本だろ。」

「だからって・・・突然キスするなんて、卑怯じゃない。」

「俺、キス上手いでしょ?これは誕生日用のオプション。ま、卑怯は今に始まった事じゃ

じゃないからね。傷心の智香さんにつけこもうとここまで押しかけて来たんだから。でも、

俺は本気なんだ。ずっとこうして触れたかったし・・・抱きたいと思ってきた。」

「しゅ・・う?」

「だから今は俺を利用してくれても構わない。智香さんが彼氏を忘れられるなら。」

秀は私の体を抱き上げると、隣の寝室へ運びベッドに下ろした。

「やっ!ちょ、ちょっと秀何考えてるの?」

「忘れさせてあげる。彼氏の事・・・俺しか考えられないように。」

「でもでもっ、そんな!!」

「男の傷は男でって言うでしょ?試してみてよ、俺との相性。商品の品定めって事で。嫌なら

思いっきり抵抗してくれて構わないから。」

そう言って再び彼は唇を寄せてきた。

先程のように、うっとりするような甘い口づけ。次第に何も考えられなくなってくる。

抵抗すれば出来たと思う。だけど・・・何だろう?突然フラれて、傷ついて。誰かに寄りかかり

たかったのかもしれない。秀が言うように、彼を利用して忘れるのもいいかもしれない。なんて

そんな考えがよぎったのも嘘じゃない。だから抵抗できなかった――――このまま流されてみようか。

私は彼の背中にそっと手をまわした。



それを合図かのように彼は唇を塞ぎながら、器用に私の服を脱がしていく。

「ん・・・ぁっ。」

時折キスの合間に私の声が漏れ始め、体の芯が熱くなっていくのがわかる。

時々ついばみながら、彼の舌が顎から首筋へと順に私の体を這っていく。

丁寧に、私の敏感に反応する部分を探るかのように。

「・・・すげぇ綺麗な体。こんなに綺麗な肌、俺初めて。」

「や・・・もぉ恥ずかしいから見ないでよ。」

身に着けていたすべての物を取り払われてベッドに横たわる私を秀はマジマジと見つめる。

恥ずかしさから頬を赤く染めて、体を隠すように私は腕をまわした。

智香さんすげぇかわいい、と耳元で囁きながら腕をほどき首筋から鎖骨を伝って舌を

這わし胸の蕾までくるときゅっと吸い上げ、ころころと舌で弄ぶ。

「はっ・・・ん・・・。年下のくせに・・・かわいいとか言わないの。」

「なんで?年なんて関係ないじゃん。かわいいもんはかわいいの。」

クスっと笑うと再び私の体を今度は腹部を伝って下の方に彼の舌が這っていく。

まだ私の一番敏感な中心部分に触れられていないのに、徐々に潤っていくのがわかる。

「ん・・ぁ。や・・・ん。」

「嫌?嫌な筈ないよね、俺まだ触ってないのに敏感に反応してるよ?ここ。」

秀はそう言いながら内腿を伝って中心のギリギリのラインを攻めてくる。

「あ・・・んっ。もう変な事・・・言わないでよ・・・ひぁっ!!」

呟いた途端、彼の舌が私の蜜を絡めるように中心部分を舐めあげた。

びくっと体が反応し、私の上体が仰け反る。

その反応を楽しむかのように、秀は音を立てて舐め上げ更に私を追い詰めていく。

「あっぁん・・・あ・・・っん!!」

次第に脳髄が白い霧に包まれる感覚に襲われ、私はシーツをぎゅっと握り締めた。

上り詰めつつあるのが分かったのか、秀は更に敏感になった花芽をしゃぶるように舌を

這わせ、吸い付いてくる。

「っや!!あっ・・・ダメ・・・んんっ!!あぁぁぁっ!!!」

急に頭が真っ白になって、私の足がガクガクと震えた。

「イク時もかわいいね、智香さん。」

「・・・は・・・ぁ・・・もぉ、ずるい。・・・私だけ。」

まだスーツを着たままな秀の姿を見て、私は軽く睨んだ。

今のはほんの挨拶がわり、と笑って頬にキスをすると秀は徐にスーツを脱ぎ始めた。



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