*君の あなたの 微笑に サービスエリアで私達は朝食を取るために車を降りた。 車を降りてから、先生はさっき言った通りに私に手を差し出してくる。 ――――今日はずっと手を繋いでおこうね。 先生の言葉が蘇り、途端に頬が赤く染まる。 誰かがいる場所で先生と堂々と歩くだけでもドキドキするのに、その上手まで繋いだら心臓が止まっちゃうかも・・・。 そんな若干の不安に苛まれながら、私は躊躇いがちに先生の手に自分の手を重ねる。 と、すぐに絡み合う先生の長くて綺麗な指。 なんか・・・なんか・・・ 「・・・すごく緊張する。」 先生に手を引かれながら、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でそう呟くと、 「俺も・・・緊張する。」 って、振り返りながら先生が笑う。 ・・・・・あまり緊張してるように見えませんが? 「もー。先生は緊張してるように見えません。」 「見えないだけで、実際は緊張してるんですー。もう、心臓バックバク。」 「嘘つきー。」 「千鶴はそうやっていつも俺を嘘つき呼ばわりする。嘘じゃなかったらどうするの?」 「どうもこうも嘘だもん。嘘つきせんせぇー。」 「あ、そう。嘘じゃなかったら、後で千鶴からキスしてもらうからね?」 「いいですよー。だったら、先生も嘘だったらお菓子いっぱい買ってもらうから。」 ぷっ。と少し頬を膨らませて先生を見上げると、先生は急に繋いだ手を離して私の手の向きを変えると彼の胸のあたりにそれを当てる。 ドクッドクッドクッ。と、規則的に聞こえる先生の胸の鼓動。 ・・・・・はやっ!! びっくりして目を丸くしながら再び先生を見ると、ほらね。とでも言うように先生が目を細める。 「好きな子と初めて手を繋ぐんだから、緊張するのは当たり前でしょ?はい、後で約束守ってもらうからね。忘れたら承知しないよ?」 「せっ先生の心臓の弁が活発なんじゃ・・・。」 そんな苦し紛れの言葉は先生の耳には届かなかったらしい。 いや、届いたハズなのに聞こえないフリ。先生はにっこりと笑って再び私の手を繋ぐとそのまま歩き出した。 美味しい朝食も堪能して、売店でお菓子をいっぱい買い込んで私達は再び車に乗り込む。 先生はエンジンをかけてから、さて。と漏らして、片手をハンドルに置いたまま体を私の方へ向けてくる。 「えーっと・・・しゅっぱーつ!!」 「狭山 千鶴さん?何か一つ忘れてませんか?」 「さぁ・・・何の事だかさっぱり?」 「あれ、さっき俺の事嘘つき呼ばわりしたの誰でしたっけ?」 「あら、そんな酷い事言われたんですか?先生、よっぽど日頃の行いが悪いんじゃ・・・。」 「こら、千鶴。さっき約束したでしょ?千鶴からキスするって。」 先生は私の頬を軽く摘みながら、意地悪く笑ってくる。 「だってそれは先生が勝手に言ったんだもん。私は承諾してないー。」 「あ、そういう事を言う?いいですよー。って言ったの誰?嘘だったらお菓子いっぱい買うって言ったの誰だっけかなぁ?」 「んーもぅ、こんな所でキスしたらみんなに見られちゃうから恥ずかしいもん。」 「二度と会う事のない人達ばっかりだと思うけど?」 「でも・・・。」 「千鶴?嘘つき呼ばわりしたくせに、自分が嘘を付くのかな?」 そんな事をいいながら、先生はどんどん私を追い詰めてくる。 なんか、優しい声とは裏腹に今日の先生ちょっと意地悪ちっくだぁ!! 眼鏡外すと人格も変わっちゃうのかしら? どうやっても諦める様子のない先生に・・・・負けた。 私は真っ赤になりながら、先生に頬を寄せて軽くキスをする・・・つもりが、 触れた途端先生の手が私の後頭部に添えられて長いキスへと変わってしまった。 啄ばむような彼からの優しいキスが降り注ぎ、次第に自分の体が熱くなる。 眼鏡をしていない分、いつもより距離が近くに感じるのと、見られてるかもしれないっていう思いも重なって心臓がパンク寸前に高鳴ってしまう。 先生はゆっくりと唇を離すと優しい笑顔を浮かべて、じゃぁ行こうか。って視線を合わせてくる。 レンズ越しではない、直に見られる先生の透き通ったような綺麗な瞳。 その瞳に吸い込まれるように私も見つめ返し、頬を赤く染めたまま小さくコクン。と頷く。 ・・・なんか、今日の先生すごく大胆。 |