*君の あなたの 微笑に




高速を飛ばす車の中で流れる曲を口ずさんでいると、先生が隣りで嬉しそうに笑う。

「なーに、先生。あっ!音痴とか思ってる?」

「ううん。千鶴って歌、ウマイんだなぁって思って。」

「そ・・・かな。」

「うん。すごく綺麗な声。」

先生のその言葉が嬉しくて、少し頬を赤らめて俯くと、先生の左手が私の右手に重なる。

ドキンっ!と一つ波打つ鼓動。

更に赤さを増して先生の方へ顔を向けると、先生は前を見たまま笑みを浮かべる。

「今日はずっと手を繋いでおこうね。」

って。その言葉だけで、自分の心臓がドキドキと高鳴る。

だって・・・だって先生と手を繋ぐのなんて初めてなんだもん。

嬉しさと恥ずかしさが混じって、なんだか照れくさくって俯いたら、嫌かな?って先生が呟く。

そんなっ!嫌なハズがないじゃない。嬉しすぎて倒れそうなのに・・・。

私が、ぶんぶん。と大袈裟と言うほど頭を左右に振ると、先生は笑いながら指を絡めてくる。

うわっ。先生の手って大きいんだ・・・わぁー。先生の指、長くて綺麗。

先生の体温を掌に感じながら、その手を眺めていると、彼がきゅっ。と力を入れて握ってきた。

「千鶴の手って、小さいね。」

「あぁー。それって子供ーって言う意味?」

「クスクス。そういう意味じゃなくて。女の子だなーって言う意味。」

「先生の手は大きくって温かくて・・・男の人の手って感じ。すごく安心できちゃう。」

「そう?千鶴の手も温かいよ?ぷにぷにしてて触り心地がいい。」

「なぁぁーーっ!それって太ってるって言う意味ぃ?」

「あはははっ!そういう意味じゃないって。千鶴は細い方だから、もっとご飯食べなきゃ。」

先生は前を見たまま、おかしそうに笑ってそう呟く。

そうかな、細い方なのかな?でも、最近先生と夜ご飯をちゃんと食べるようになってから少し太ってきたんだけど・・・。

「でも、最近太ってきたよ?」

「そうかな?そんな感じには見えないけど。」

「ねぇ、先生は太ってる方が好き?それとも痩せてる方が好き?」

「俺は千鶴が好き。」

そうあっさりと返答を返されて、恥ずかしさのあまり言葉を失う。

「・・・・・ん、もぅ。太ってるか痩せてるかどっち、って聞いてるのにぃ。」

「俺はありのままの千鶴が好きだよ?太ったなら太った時の千鶴が好きだし、痩せたなら痩せた千鶴が好き。だけど、無理してダイエットとかしたりするのは嫌かな。健康が一番。」

「んー。じゃぁ、もうちょっとお菓子とか食べて太っても大丈夫?」

「クスクス。お菓子、我慢してるの?」

「うん。だって最近太ってきたんだもん。だから、ちょっとお菓子減らしてるの。」

「千鶴は甘い物好きだもんね。よく我慢できてるね。」

「だって、太って先生に嫌われちゃったら嫌だもん。」

「そんな事で嫌いにならないって。むしろ幸せそうにお菓子を食べてる千鶴が好きだけど。」

「むぅ・・・そう?」

私が先生を見上げながら首を傾けると、うん。と彼が笑う。

「じゃぁ、お菓子買ってもいい?」

「クスクス。いいよ、ちょうど喉も渇いてきたからサービスエリアに寄ろうか。朝ごはんもそこで済ます?」
「あ、うん。朝ごはん食べてないもんね。わぁー、何食べよう?」

「あははっ。千鶴、幸せそうな顔ー。」

「わっ!よそ見しないでくださいっ!!事故るって!」

チラッとこちらを見て笑う先生に、慌ててそれを制する。

もー、危ないって。




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