*君の あなたの 微笑に 次の日は、嘘のように雲ひとつないドライブ日和。 日頃の自分の行いがいいんだ。なんて、自画自賛してみたり。 私は逸る気持ちを抑えながら、約束の時間よりも少し早く先生の家へ向かう。 今日はちょっとだけなら遅くなってもいい。という両親からのお許しも出て、尚更私の気分も高まる。 ピンポーン。と、軽快な音を鳴らせてチャイムを押すと、程なくしてガチャッ。と鍵の開く音がして先生が顔を出す。 「おはよう、千鶴。寝坊するかと思ったけど、ちゃんと起きられたね。」 「先生・・・。」 いつもスーツかトレーナー姿しか見てなかっただけに、私服に眼鏡をかけてない先生を見て私の動きが止まる。 その様子に、先生は困ったように頭をかきながら苦笑を漏らす。 「・・・・・おかしい?」 ・・・・・カッコイイ。 「先生、別人みたい・・・すごくカッコイイ。」 「そ・・かな。」 私の言葉に少し、ほっとしたような表情を見せてから、先生は照れたように笑う。 だって、本当にカッコイイと思うもん。 こんな先生の姿を見たら、優実だってちょっとは先生の事見直すと思うよ? いつも『中の上くらい。』と、先生を評価する優実に見せてやりたい。などと、先生を見ながら思った。 でも、これは私だけの『特権』だから。やっぱり誰にも見せてあげない。 そんな事も頭に浮かぶ。 「わぁ!これ?先生が買った車・・・マーチだ。かわいいっ。」 「うん。千鶴ならそう言って気に入るかなぁって思ってこれにしたんだ。ボディはシルバーにしたけどね。」 そう言って嬉しそうに笑う先生を見て、自分の顔からも同じような笑みが漏れる。 いつだって私の事を考えながらしてくれる先生。 すごく大事にされてるなぁ。って思えちゃう。 そんな感慨に浸っていると、ほら、千鶴乗って。と、先生に促されて私は助手席へ乗り込む。 うわっ!助手席だって・・・すごい。なんか、特別って感じがしてとっても気分がよくなってくる。 心なしか新車のような感じがする車内を見渡していると、先生が運転席に座っておかしそうに笑う。 「クスクス。どうしたの?キョロキョロして。」 「だって、中古車って言ってたからもっと古いのかと思ってたけど、新車みたいなんだもん。」 「うん。だってこれ、試乗車として数回乗っただけのモノだからね。新車とあまり変わらないんだよ?こういうの新古車って言うの。」 「そうなんだぁ。だから、新しい臭いがするんだね。わぁ!なんか・・・すごく嬉しい。」 満面の笑みを浮かべて先生を見ると、彼も満足したような表情を浮かべる。 「クスクス。よかった、気に入ってもらえて。じゃぁ、出発しよっか。」 「先生、本当に運転大丈夫?」 「あ、信用してないの?これでも免許取る時はストレートで受かったんだけど?」 「ほんとにぃ?」 少しふざけた声で先生の顔を覗き込むと、きゅっ。と鼻を摘まれる。 「こらっ。そういう事言うと、乗せてあげないよ?」 「やっ・・・意地悪ー。そういう事言う?」 「んー?信用してないのは誰かなぁ?」 「もー。冗談だもん。信用してるよ?」 「そう?じゃぁ許してあげる。と、いう事で出発しまーす。」 先生はニッコリ笑って私の鼻から手を離すと、エンジンをかけて車を動かし出す。 「わっ!待って、待って。シートベルト!・・・よし、OK。安全運転でお願いしまーっす!!」 出発進行!と、はしゃぎながら手を叩くと、先生も、おっけぃ。と少し大きめの声を出す。 ・・・すごく嬉しくてすごく楽しい。 先生と初めて出かけるドライブに、私の気分もこの青空のように晴れ渡る。 |