*君の あなたの 微笑に




私も何とか夕食を食べ終えて、お皿などを片付けてから先生と一緒にリビングのソファに並んで座る。

「先生、本当にごめんね。お腹痛くなったらどうしよう。」

「クスクス。そんな心配しなくても大丈夫だって。千鶴の愛情がいっぱい入ってたもん。」

「ん〜・・愛情はいっぱい入れたけど・・・香辛料入れるの忘れたみたい。」

「これから練習すれば上手になるよ。」

「そうかなぁ?」

「うん、俺もそうやって料理出来るようになったからね。」

「え?先生も最初はマズかったの?」

「すっごく。味噌汁に出汁入れ忘れたりとか、お好み焼きに卵入れ忘れて粉っぽかったりとか。色々あるよ?だから、千鶴も気にしないで。これから徐々に上手くなっていけばいいからね。」

先生は私をなだめるように髪を撫でると、優しく微笑んでくる。

先生がそう言うなら・・・これから頑張って練習しようっと。

先生に微笑み返して、頑張るね。って言ったら、うん。頑張って。って笑ってくれた。

「あ、そうだ。先生、ケーキ買ってきたの食べる?」

先生の家に来る前に、ケーキ屋さんに寄って買って来た小さなバースデーケーキがあったのを思い出して、彼を見上げる。

「ん〜。まだお腹いっぱいだから、もうちょっと後でいいかな。千鶴はもう食べたい?」

「ううん。先生がまだなら、もうちょっと後でいい。」

「じゃぁ、もうちょっと後で食べようね。一緒に紅茶も入れてあげるから。」

「うん!あのね、勝手にチョコレートケーキにしちゃったんだけど、よかった?」

「クスクス。うん、いいよ。千鶴はチョコ好きだもんね。」

「うん、だ〜い好き。あ、チーも食べるかな?」

足元に擦り寄って来たチーを撫でながら、そう呟く。

「舐める程度だったらいいかもしれないけど、あまりあげない方がチーの為にもいいかもね。」

「そっかぁ。残念だね、チー。ケーキは食べちゃダメだって。」

「ニャー。」

チーの体を撫でていると、何かに興味をそそられたのか急に玄関の方へとチーは走って行ってしまった。

「何だろ。何かあったのかなぁ?」

「ん?急に走り出したりするからね、きっと物音とかに反応したんじゃないかな?いつもそうだから。」

「そうなんだ。」

そう呟いて、身体をソファの背に預けてから一息ついて、ふとある事を思い出す。

――――『私がプレゼント〜♪』って言って先生に抱きついちゃえばいいじゃない。

先日優実が言ってた言葉。

夕食も食べ終えてまったりしているこの時間。

・・・・・どうしよう、今言ってみようかな。門限までにはまだ時間あるし。

そう考えると途端に逸り出す自分の鼓動。

「・・・・・千鶴?」

突然黙り込んだ私の様子を見て、先生が不思議そうな顔で覗き込んでくる。

私はその声に押されるように立ち上がると、先生の前に立つ。

「あのっ。先生、あのね・・・プレゼント・・・が、あるの。」



***** ***** ***** ***** *****




「――――プレゼントがあるの。」

いっ言ってしまった。

でも、ここから先はどうすればいいの?

突然行動を起こしてしまった自分に戸惑っていると、先生がクスクス。っと笑う。

「千鶴、プレゼントはいいよって言ったでしょ?お小遣いは自分の為に使って・・・。」

「もっ物じゃないの。」

「・・・・・へ?」

・・・・・えっと・・・どうしよう。

私は、えぃっ。と、自分に気合を入れると、着ていたノースリーブのワンピースのファスナーを徐に下げる。

「えっ・・・ちょっ・・・ちっ千鶴?!」

困惑の表情を見せる先生を直視できずに、真っ赤な顔になりながら、ワンピースをストン。と床に落とす。

途端に露になる私の素肌。

私は俯き加減になりながら、先生に歩み寄るとそっと視線を彼に合わせる。

「あの・・・先生の誕生日に・・・私をあげる。」

「ちょっ・・・ちょっと待って千鶴!突然、何するの?!ふっ服・・・服を早く着なさい。」

「いやっ。先生の誕生日に・・・先生と一つになりたいの。先生と一緒に大人になりたい。」

「だっダメだって・・・千鶴。お願いだから服を着て?」

「ど・・・して?私じゃダメなの?・・・私とじゃエッチできない?」

瞳に涙を浮かべながら呟く私に、先生は視線をずらす。

先生・・・どうして視線を逸らすの?

やっぱりこんな事しちゃったから嫌いになっちゃった?

「ダメ・・・じゃないけど・・・ダメなんだって。お願いだから俺を困らせないで。」

「先生・・・困るの?私とじゃ・・・困っちゃうの?」

「いやっ・・ちがっ・・・誤解の無いように言うけど、千鶴とそうなるのは嫌じゃないんだよ?むしろ嬉しいんだけど・・・でも、まだその時じゃないでしょ?」

「その時っていつになったらそうなってもいいの?」

「千鶴がね、高校を卒業したら。高校卒業するまではケジメとして、そうならないように我慢してるから・・・だから、千鶴も分かって?」

待てない・・・そんなの待てないよ、先生。

私は今、先生と一つになりたいの。

――――そう思っちゃいけないの?




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