*君の あなたの 微笑に




「そんなの待てない・・・だって寂しいんだもん。一緒にいる時間が多くなればなるほど、先生は私に触れてくれなくなっちゃうんだもん。そんなの嫌だよ・・・もっと先生に触れて欲しい。そう思っちゃいけないの?先生と一つになりたいって・・・思っちゃダメなの?」

「千鶴・・・寂しい思いをさせてしまったのならごめんね。だけど、千鶴に触れれば触れる程君が欲しくなるから・・・だからなるべく触れないようにしてたんだ。卒業するまでは、って決めてたから。もう少し、千鶴が卒業するまでのもう少しの間だけ我慢しよう?ね、そうしたらいくらでも時間はあるんだから。」

「でもっ!先生が、25歳になる日は今日しかないんだよ?先生が・・・早乙女 恭一さんが生まれた日に、私も一緒に一つ大人になりたいの。我侭な子だって思ってくれても構わない。だから・・・だから・・・。」

その後の言葉は涙が溢れ出してきて、出てこなかった。

その場に蹲って泣き崩れる私の身体を先生は優しく抱きしめてくれる。

「ごめん・・・千鶴。ごめんね。女の子にこんな事させるなんて、俺サイテーだね。でも、千鶴が卒業してせめて自分の教え子じゃなくなってからって・・・そうずっと思ってて。それぐらいのケジメはつけなきゃって・・・でも。」

先生は少し身体を離して、私の顎に手を当てて自分の方に向かせると、ゆっくりと唇を重ねてくる。

・・・・・先生?

――――長い長い先生からの優しいキス。

次第にキスが深くなりお互いの舌が絡み合い、口内を行き交う。

キスだけで頭の中が真っ白になってきて、身体の芯が熱くなってくるのが分かる。

先生は唇を離すと、視線を合わせてきて優しく微笑んでから、再び私の身体を強く抱きしめた。

その微笑がすごく色っぽくて艶っぽくて・・・耳元で囁かれる少し掠れた彼の声が私の脳を刺激する。

「もう・・・我慢も限界・・・みたい。」

「・・・・・先生。」

「千鶴・・・抱いてもいい?」

「・・・・せんせ・・・。」



***** ***** ***** ***** *****




先生は私の身体を抱き上げて隣りの寝室へ運ぶと、ベッドに下ろして、ちょっと待っててね。と呟いてから、チーをケージに入れてリビングへ移動させて、大きめのタオルを手に戻ってきた。

「千鶴・・・初めてだよね?一応、念のため。」

そう言ってタオルを私の腰辺りに広げる。

・・・・・念のためって?

一瞬そんな疑問が浮かびあがったけれど、すぐにそれはかき消された。

再び重なる2人の唇。

先程とは少し違って、貪るようなキスをされる。

こんなキス・・・知らないよ?すごい、どうしよう。これだけで意識が飛びそうになる。

先生は私の身体をベッドに押し倒しながら、キスを続ける。

「んっ・・・ぁ。」

キスの合間に私の声が漏れ始め、身体の中心部分が熱くなる。

何か変・・・体がすごく熱いよ。

先生は一度唇を離すと、かけていた眼鏡を外してベッドの脇にある小さなテーブルに置く。

「先生の眼鏡外したところ、初めて見た。」

「クスクス。そうだったっけ?」

「うん、初めて。先生、コンタクトにすればいいのに。すっごくかっこいいよ?」

「ん〜・・コンタクトは合わないんだ。それに、眼鏡外した時の顔は千鶴だけに見てもらえればいいから。」

先生はそう言って微笑むと、ちゅっ。と軽く唇を重ねる。

「千鶴・・・怖くない?」

「ん。大丈夫。先生だから怖くない。・・・先生?」

「ん?」

「我侭を聞いてくれてありがとう。すごく好き、大好き・・・先生。」

「俺も大好きだよ・・・それに、ごめんね。寂しい思いをさせて。」

先生は優しく髪を撫でながらそう囁く。

「ううん。先生、困らせちゃったね。」

「千鶴。一ついいかな?」

「なぁに、先生?」

「その、『先生』って言うの・・・今だけは名前で呼んでもらってもいい?先生って言われるとすごく、後ろめたい気分になってくるから。」

少しバツが悪そうに呟く先生に、クスクス。と笑いながら、

「じゃぁ・・・恭一さん?」

と、首を傾げると、先生も笑う。

「クスクス。うん、そう呼んで。」

そう囁いてから、先生は再び私の唇に自分の唇を重ねてきた。




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