*君の あなたの 微笑に




私は駅前で優実と別れると、カバンから携帯を取り出して先生宛にメールを送る。


           8/23 20:05
          =ロングメール=
           恭一先生
           kyou-sa_0825@x.xxxxx.ne.jp
           [件名] お疲れ様です(o^▽^o)
           [本文] 今、塾終わりました。
                先生まだ仕事?
                これから歩いて帰ります〜♪
                千鶴


ピッ。と送信してから、程なくして先生からのメールが届く。


           8/23 20:10
          =ロングメール=
           恭一先生
           kyou-sa_0825@x.xxxxx.ne.jp
           [件名] Re.お疲れ様です(o^▽^o)
           [本文] お疲れ様。知恵熱出てない?(笑)
                ごめんね、まだ学校なんだ。
                もう少しかかりそう・・・。
                気をつけて帰らなきゃダメだよ?
                帰ったらまた連絡するね。
                恭一


先生からのメールを読み終えて、はぁ。とため息が漏れる。

あぁ。まだ学校かぁ・・・今日は会えないかなぁ。寂しいな。

って言うか、知恵熱なんて出てませんから!失礼な!!・・・ってツッコミが遅い?

私は少し笑いながらメールの返信ボタンを押すと、カチカチッ。と文字を打つ。


           8/23 20:13
          =ロングメール=
           恭一先生
           kyou-sa_0825@x.xxxxx.ne.jp
           [件名] Re.Re.お疲れ様です(o^▽^o)
           [本文] 失礼な!そんな事で熱なんて
                出ません〜!!
                それよりも一人で帰ってるから
                襲われちゃうかもだよ〜?(笑)
                千鶴


ピッ。と再び送信ボタンを押すと、今度はすぐに先生からの着信音が鳴る。

「ん?・・・先生?・・・・・もしも〜し?」

『こらっ。何て事送ってくるの?』

「へ?・・・何が?」

開口一番そんな言葉が聞こえてきて、意味が分からずにきょとん、と返事を返す。

『冗談でも襲われちゃうかも、なんて書いてこないの。心配になるでしょ?あ、ほら〜。千鶴が変な事送ってくるから、書類書き間違えた。』

・・・・・それって私のせいかい?

「クスクス。ごめんなさい。心配しなくても大丈夫なのに。結構人通り多いよ?」

『でも、心配になるでしょ?昼間じゃないんだから。今どの辺?』

「今?えっと、公園辺り。もうすぐしたらマンションに着くよ。」

『じゃぁマンションに着くまで話してよう。今日は勉強して熱出なかった?』

「もぅ、先生は心配性だなぁ。それに、いつも勉強しても熱なんて出ません!失礼なっ!!」

『クスクス。そう?英語の勉強して頭の中パンクしてるんじゃないかって思ってね。』

英語の勉強よりも、違う意味で頭の中パンクしそうだったけど・・・。

優実と話していた内容を思い出して、自然と自分の頬が赤くなるのが分かる。

でっ電話でよかった・・・絶対会ってたら、何で顔が赤いの?って言われそう。

「ねぇ、先生は今一人なの?」

「ん〜?そうだよ、職員室に一人。他の先生は見回りに出てるからね。」

「わぁ〜怖っ。じゃぁお化けとか出ちゃうかもよ?」

『ちづる〜。変な事言わないの。俺、結構そういうの弱いんだから・・・うわーーーっ!!』

突然の先生の大きな声に一瞬体がビクンッ。と震えて心臓がバクバクと高鳴り出す。

「せっ先生?!どうしたの??なっ何々?・・・先生!!幽霊出た?!」

『びっくりした?』

・・・・・嘘か、コノヤロウ。

クスクス。と、耳に届く先生の声を聞きながら、軽く目を閉じる。

「ちょっと、先生!!びっくりしたでしょ?もぅ、心臓バクバク言ってるよぉ。」

『クスクス。千鶴が俺を脅かすからそのお返し。』

「もぉ!子供みたいな事しないでください!!」

『大の大人をつかまえて子供呼ばわりするとは失礼だなぁ。』

「先生がびっくりさせるからでしょ?寿命が縮まった気がする・・・。」

『クスクス。大丈夫、千鶴は俺よりも長生きするから。』

・・・・・そういう問題でもない気が。

そうこう話してる内にマンションの前まで辿り着いてしまった。

早いなぁ。もっと話してたかったのに。

「あ、先生。もぅマンションに着いちゃった・・・ざ〜んねん。もう切らなきゃ。先生、まだ仕事だもんね。ごめんなさい、付き合ってもらっちゃって。」

『いいよ、全然。俺も千鶴の声聞きたかったし、帰り道心配だったから。あ、こっちも見回りの先生達が帰ってきたみたい・・・じゃあ、また帰ったら連絡するね。』

「うん、待ってます。仕事頑張ってね、先生。」

『ん、ありがとう。じゃあね。』

「は〜い。」

ピッ。とボタンを押して携帯をカバンに入れると、はぁ。っと軽くため息を付く。

・・・・・声聞いたら会いたくなっちゃうよ。

目と鼻の先に住んでるのに・・・今日は会えないかな。




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