*君の あなたの 微笑に 次の日、私は少し気分が重いまま塾へと向かった。 はぁぁ。先生と付き合って3ヶ月も経つのに、どうして進展しないのかしら。進展どころか後退してる気さえしてくるよ。 大き目のため息を付くと、隣りに座っていた優実がため息混じりに話しかけてくる。 「ちょいと、ちぃ?さっきから何回ため息付くのよ。こっちまで憂鬱な気分になってくるじゃない。何、先生と喧嘩でもしたの?」 「えぇ?そういう訳じゃないんだけどさぁ・・・。」 「じゃあ何さぁ?」 少し『ワクワクッ!』といった表情を浮かべた優実が私の視線に合わせてくる。 ほんっとに、もぅ。他人の話が好きなんだからぁ。 私は一つため息を付くと、先生と付き合って3ヶ月も経つのに、手を出されてない事。あまり触れてもらえない事。キスも軽いものしかしてくれない事などを打ち明けた。 絶対こんな話を聞いたら、経験豊富な優実の事だから『やっだぁ、あんた達まだだったのぉ?先生ったら晩生ねぇ』なんて笑いながら言うに決まってる。 そんな事を考えながら、優実の反応に構えていると案の定彼女の口から笑い声が漏れてくる。 「クスクス。うっそ、信じられない。3ヶ月も経ってんのにまだなの?うっわぁ、すっごぉ。早乙女先生頑張るわねぇ。よぉっぽど、ちぃの事が大事なのねぇ。ちぃ、愛されてるじゃん?」 少し予想外の答えに、私の首が傾く。 「どうして手を出さないのが愛されてるって事になるのよ?好きだったら一つになりたいって思うのが普通なんじゃないの?」 「そりゃそうだけど、好きだからってヤりゃいいってモンじゃないでしょ?早乙女先生の事だから、ちぃが卒業するまでは・・・何て事思って耐えてるんじゃない?いつだって手を出せば抱けるけどそれをしないって事は、先生がちぃを大事に思ってるからだと思うよ。」 「そうかなぁ?先生は、やっぱり私の事は6つも下だから子供に見えるんじゃないかって思うんだよね。だから手も出して来ないんじゃないかって。」 「子供に見えてるんなら、危険を冒してまで生徒と付き合うなんて事しないと思うけど?」 そうかなぁ?、と呟く私に、ニヤリと口元を上げながら、優実が少し体を前かがみにして私の顔を覗いてくる。 ・・・・・何よ。 「まぁ、でも何も手を出されないのも寂しいわよねぇ?」 「・・・・・何で笑ってんのよ。」 「いんやぁ。ちぃもそんな事考えるようになったんだぁ、って思ってさ。軽いキスだけじゃ物足りない〜ってか?」 「うっうるさいって。私がそんな事考えちゃおかしいかっ!!」 「クスクス。おかしかないけどさっ。ま、先生が襲ってくれないんだったら、ちぃから襲っちゃえば?」 つんつん、とわき腹をつつかれて思わず身が捩れる。 「んっ。ちょっと、優実。わき腹弱いんだからやめてよ。それに私から襲えって・・・襲えるわけがないでしょ?やり方もわかんないのに!!」 「や〜ん、ちぃったら色っぽい声出しちゃって。その声聞いたら早乙女先生もたまんないわね。やり方なんてわかんなくても、なるようになるから心配しなさんな。とりあえず襲っちゃえばいいのよ。」 なるようになるって・・・そんな無茶苦茶な。なるようにならなかったらどうすんのよ。 「優実・・・もうちょっといいアドバイスないの?」 「ない。」 ・・・・・あっそ。 にべもなく言い放たれた言葉に、がくん。と机に突っ伏せる。 ――――、襲っちゃえばいいのよ。 さっきから優実の言った言葉が頭から離れない。 私から襲ったら、先生はその気になってくれるの?嫌われたりしない? 大体襲えって、いつ襲えばいいのよ。機会がないっつうの。 うわっ・・・・・襲う襲うって。私ったら何考えてんのよ、もぅ!! 一人頬を赤く染めていると、横からまた優実がチャチャを入れてくる。 「ちぃ〜。授業も聞かないで何考えてたのよ。顔真っ赤だよ?」 「嘘っ?!顔真っ赤?・・・べっ別に何も考えちゃいないわよ。」 「そうかい?」 「なっなによぉ。その意味ありげな笑いはさぁ。」 「べっつにぃ。ま、ちぃが早く大人の女になるのを楽しみにしてるわん♪」 「だ〜か〜ら〜。先生がその気になんないんだって。」 「ちぃが襲えば嫌でもその気になるって。もうすぐ早乙女先生の誕生日なんでしょ?だったら『私がプレゼント〜♪』って言って先生に抱きついちゃえばいいじゃない。」 ・・・・・私がプレゼントって。 そうか、その手があったか。 単純すぎる気がしないでもないけど・・・ちょっとやってみようかな。 ちょうど先生、プレゼントいらないって言ってたし。 私は、よしっ。と気合を入れると優実に向かって呟く。 「じゃぁそれで頑張ってみる。」 「ちぃ、じゃぁじゃないでしょ?”じゃぁ”じゃ。」 「ん〜・・めいっぱい頑張る!!」 「その言い方もどうかと思うわ。」 だから、どう言ったら納得すんのよ!! |