*Love Gameもう…何度イカされたか分からない。 何度、彼がイッたかも分からない。 シーツには、どちらのものかも分からないほどの濁った液がシミを作って広がっている。 あたしは意識が朦朧とする中、さすがに荒く息をつきながらあたしに体を預けている彼の体に、力なく腕をまわしていた。 もう…無理。 あと一回でもすれば、完全にあたしの意識は絶たれてしまう。 そんな極限状態の中、プライドだけでなんとか繋げている自分の意識。 「はぁ…はぁ……んっ…おねーさん…何回イッた?」 「数えられるわけっ…ないでしょう?あなた…は?」 「さぁ…立て続けとかあったから…少なくても…6回?…すごいや…最高記録…よく耐えられたじゃん、おねーさん」 意地だけでね。 あたしも自分で自分を賞したい気分よ…よく耐えたって。 この上なく気だるい体に、彼は愛しいもののように唇を丹念に這わせる。 「あんっ…まだ…するつもり?」 「クスクス。まさか…ボクもさすがにもう出ないよ…それに、残念だけどもう帰らなくちゃいけない時間だからね」 「んっ…今、何時?」 「今?明け方の5時前だよ」 「そう…今日は日曜なんだから…寝て帰ればいいじゃない…んっ」 胸の蕾を口に含まれ、ちゅっと音を立てて吸い上げられると、敏感に体が反応を示してしまう。 「そうしたいのは山々なんだけどね。ボクは枕が替わると眠れないタチだから」 「ふぅん。お子様みたいな事言うのね?」 「クスクス。だって、ボクはまだ高校生のボーヤだから?」 「ほんっと生意気。あんたみたいなクソガキ、初めて会ったわよ」 「そう?ボクもおねーさんみたいに綺麗な女性(ひと)には初めて会ったよ」 彼はニッコリと可愛らしい笑みを見せて、軽くあたしの体を拭き取ってから、ベッドを離れ帰り支度を始める。 それをボーっとする意識で眺めながら思った事。 余裕綽々に意気揚々と見える彼の態度。 それに対して、魂を抜かれたようにぐったりとベッドに体を横たえているあたしの姿。 あまりにも対照的なこの姿に、何とも言えない悔しさがこみ上げてくる。 年齢差を差し引いても、経験差からあたしの方が絶対有利に動くハズだったこの遊び。 なのに、このザマは何? このまま勝ち逃げなんて許せない。 ……延長線に持ち込んでやる。 「ボクはもう帰るけど、おねーさんはゆっくり休んで帰りなよ?お金、ココに置いておくから…今日は本当に楽しかったよ」 万札をガラステーブルの上に置いて、もう二度と会う事もないだろうけど。と付け加えて部屋を出て行こうとする彼を呼び止める。 「ねぇ…」 「ん?」 「あたしとゲームしない?」 「……え?」 彼はあたしの突然の申し出に、首を傾げて体をこちらに向ける。 「あたしとあなた…どっちが先に相手を堕とせるかって言うゲーム」 「クスクス。なに?一晩限りじゃ満足できなかった?それともボクに惚れちゃったとか」 彼は背中をドアに預けて徐に手をポケットに突っ込むと、意味ありげな笑みを向けてくる。 「聞こえなかった?どっちが堕ちるかっていうゲームだって言ったでしょ?このまま勝ち逃げなんて許さない。今日はベッドの上ではあなたが上だったかもしれない…けれど、この先あたしが上に立つ…全てにおいて」 「あはははっ!ホント…負けん気が強いおねーさんだよね?でも、それも無駄だと思うよ?ボクは誰にも靡かないし、惚れたりしない。最初から結果なんて見えてると思うけど…またおねーさん、悔しくて泣いちゃうよ?」 「あたしだって誰にも心を許す気はないわ。ケド、あなたの心を崩す自信はある。溺れさせてあげる…溺れさせた上で捨てる。どう?」 「趣味悪いね。溺れさせて捨てるなんてさ」 「そう?見物だと思うけど…誰にも靡かなかったあなたがあたしにどんどん溺れていく様を見れるなんて。反対にあなただってそうでしょう?それとも自信がないのかしら?」 「どっちの自信の事を言ってるのかな?」 「両方よ。あたしを堕とす自信と、自分が堕ちないという自信」 「両方共確実に自信あるけどね?そのゲームに乗ってあげてもいいけど、後悔するよ?おねーさんが」 「あら。後悔するのがどっちかなんて、最後までわからないものよ。だからゲームなんじゃない。どうする?乗るの、乗らないの?」 彼は暫く黙ってから、ニヤリと口角を上げると体の向きを変えてドアをあける。 「じゃあ、またね?……唯(ゆい)、さん」 直接返事を返さずに、そう言葉を残してドアの外に姿を消した彼を見送ってから、フッと自分の口から軽く笑い声が漏れる。 本当に生意気なクソガキ。 ――――ボク、イチイチ一晩限りの女性の名前なんて覚えてらんないから。最初から呼ばない主義って言うか、覚えてない しっかり覚えてんじゃない、ひとの名前。 『じゃあ、またね…』ね。乗ってやるよって事だろうけど。 カッコつけた言い方してくれちゃって…ホント、可愛くないガキ。 見てなさいよ、あたしの実力の程を見せてあげる。 最後、あたしに堕ちたあなたを鼻で笑ってあげるわ。 ゲームの勝者はあたしよ?覚悟してなさい……塩谷玲。 |