*Love Game





繋がったまま、まだ微かに震えの残る中を堪能するように、彼はゆるゆると出入りを繰り返す。

荒く吐き出されるあたしの息。

それを落ち着かせるように彼は身体を折ってあたしに覆い被さってくると、髪をゆっくりと撫ではじめる。


「どう?気持ちよかったでしょ」

「……………」


あたしはそれには返事を返さずに、ぷいっと顔を横に背ける。

なんか…あたしの方がガキみたいじゃない。


「クスクス。返事がないって事は気持ちよかったわけだ。素直じゃないね?おねーさんも。あ〜んなに可愛く喘いでいたのにね?…でも、ボクも初めて意識を持ってかれそうになったよ。なんとか持ちこたえたけどね?」


の、割には余裕綽々な彼の態度。

体から汗は滲み出ているものの、息は然程あがっていない。

この状況すらも悔しくてたまらない。

いつもはそこがあたしの位置なのに……



「あなた…何人の女と寝たの?」

「さぁ…数えてないなぁ。おねーさんと同じくらいじゃない?気になる?」

「別に…聞いただけ」

「でも、おねーさん程綺麗な女性もいなかったし、こんなに相性が合う人もいなかったよ」

「へぇ…情けでもかけてくれてるわけ?それとも慰めでもしてくれてるのかしら」

「あははっ…まさか。そんなに悔しい?…イカされた事が」

「悔しいに決まってるでしょ?今まで先にイカされた事なんてなかったし、ましてや意識が半分飛びそうになっただなんて…あり得ない」


ゆるゆるとした律動も、果てたばかりのあたしには充分な刺激になってるわけで。

また微かな痺れが体を襲い始めてる事に嫌気が差してくる。


「そういうとこ、意地を張るところじゃないと思うけどなぁ。気持ちよければ正直に気持ちいいって言えばいいんじゃない?その為にセックスしてるわけなんだし」

「あたしは先にイカされた事が嫌だって言ってるの!」

「我侭だなぁ。素直に認めたら?セックスの上ではボクの方が上の立場だって」

「あなた、何様?」

「ん?俺様とでも言えば気が済む?どうあがいても、おねーさんが先にイっちゃった事には変わりないからね?今日は諦めなよ、主導権はボクにあるって」


絶対認めない…認めたくない!!

男に主導権を握られて操られるのなんて絶対イヤ。


ふと、自分の母親の姿が脳裏を過り、それを振り払うかのように頭を軽く振る。

あたしはあんな惨めな姿になんてなりたくない。


男なんてみんな我侭で自分勝手で…傲慢な生き物。

いざとなったら家庭をも簡単に捨てちゃうような卑怯な生き物。

生涯を愛すると神に誓ったクセに簡単に破ってしまうような卑劣な生き物。

そしてそれに翻弄されるバカな女。

愛なんて信じるから、男になんて操られるから…

だから、あたしが…



「おねーさん…泣いてるの?」

「へ…」


感傷に浸りすぎて、知らない間に自分の瞳から一筋の涙が零れ落ちていたのに気付かなかった。

あたしは慌てて手の甲でその雫を拭い取り、泣いてないわよ。と、小さく吐き捨てる。



「ふぅん。あまりにも悔しくて泣いちゃったのかと思ったけど」


それも一理ある。でも…


「そんな事で泣くようなガキじゃないわよ、あたしは!」


と、少しの虚勢を張ってみた。


「おねーさんてさ、過去に男に酷い目にあわされたりとかしたの?」

「別に…あなたには関係のない事だし、あたしがそんな目に会うハズがないでしょう?それとも何…あたしに興味が湧いてきたとか?」

「まさか。ボクは誰にも興味なんて持たないよ。ただ聞いてみただけ」

「ふぅん。あなたって誰にも恋したことないんだ?」

「そういうおねーさんこそあるわけ?」


テンポよく弱い部分を攻められ始めたあたしは、また息が上がりはじめる。


「あるっ…と、思う?」

「ない…ね」

「あなたが誰かに溺れるなんて事があればっ…さぞかし見物でしょうね?」

「そのままそっくりっ…おねーさんに返してあげるよ」



彼はあたしの首元に顔を埋めて体を抱きしめてくると、律動のギアを上げてくる。


なんか…似てる気がする。この子とあたし…

何が?って聞かれたら困るんだけど、なんとなくそう感じた。



「ねえ…このまま中でイってもいい?」

「あたしがっ…危険日だったらどうするつもりよっ」

「危険日って分かってたらっ…ナマでなんか這入らないないよ。ボクだって一応そういう事には気をつけてるからっね…おねーさんがピル飲んでて安全圏だって言うのは…事前に調査済みっ…だからっ」


彼の方も限界が近くなってきたのか、先ほどよりも色っぽく吐き出される息が耳に熱くかかる。


事前に調査済みって…

「誰にっ…聞いたのよっ」

「ん?他のおねーさんっ…おねーさん達ってそういう話好きだよね?お酒が入ると特にさ。ボクがおねーさんを狙ってるって言ったら嬉しそうに色々教えてくれたよっ…」

「色々って…なによっ…あっ…んっ…あぁあんっ」

「内緒っ…ね、出していい?そろそろ…ボクもイキたいっ…んだけどっ」


最大限に加速をはじめる律動に、切なそうな彼の声が耳に届く。

あたしは自分の首元に埋まる彼の頭をぎゅっと抱え込み、快感の波に攫われないように彼の髪をグッと掴む。


今度は先にイカないっ…から。


「いいわっ…出してっ…その代わり…先にイキなさいよねっ…」

「クスクス。この期に及んでもまだそんな事言うっ…中の方がずっと正直なのにねっ…もう奥を一突きもすればまたイっちゃうよ?そうそう…ボクの平均って大体3回なんだよねっ…3回、ボクがおねーさんの中にぶっ放す間に、おねーさんは何回ボクにイカされるかっ…数えといてあげようかっ…」

「生意気っ…大体っ…3回って少ないんじゃないのっ?…高校生で力が有り余ってるクセに…3回しか出来ないなんてっ…あなたも大した事ないわよねっ…んぁあぁっ」

「あははっ。ボクが3回しか出来ないっ…んじゃ、なくて。3回しか相手の女性(ひと)が持たないのっ…おねーさんはそれ以上させてくれてっ…ボクを満足させてくれるのかな?」

「誰にっ…向かって言ってる?」

「そういう負けん気の強いところっ…好きだなぁ。おねーさんに最終的に意識があれば、その言葉っ…聞いてあげるよっ…くぁっ…」

「いっ…あぁぁぁんっ!!」


激しい律動を繰り返され、最後大きく奥を突かれて、彼が欲望を解き放つと同時にあたしも気持ちとは裏腹に彼と共に果ててしまった。




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