*Love Game





……心底悔しい。



玲の言う通り車を脇の山道に走らせているあたし。

何もかもが玲の思うように動かされてる感がしてならない。

大体、こんな展開になるだなんて予定外だった。

ただあたしは玲の事を何も知らなかったからちょっとでも……




ちょっとでも………なに?




山道の途中にある空き地のような場所に車を停めると、待ってましたと言わんばかりに玲があたしの腰を強く自分の方に引いて体を座席部分に倒す。

あたしの脚の間に玲の体が納まり、そのせいで開いた分スカートが上にあがり、下着が露になる。

玲は暫くその丸見えになった下着の上から秘部を刺激してから、それが蜜で湿ってくるとあたしの体からそれを引き抜いて直に秘部に触れてくる。

こんな強引な形で、玲の意のままになっているのが気に食わなくて、身を捩って抵抗してみても彼から送られてくる刺激に次第に身体があたしの言う事を聞いてくれなくなってきた。



どうして?この身体はあたしのモノなのに…どうして言う事を聞いてくれないのよ!



あたしの身体はまるで玲からの刺激を待ち望んでいたかのように、一つ一つの刺激に敏感に反応を示す。

抵抗が収まり、自分が与える刺激に反応を示すようになったあたしを、まるで手中にでも収めてやったかのように勝ち誇ったヤツの顔。

そのたまらなく小憎たらしい顔を視界に映すのが嫌で、ぷいっと横を向くと、クスクス。と小さく笑いながら、いつの間にか露になっていたあたしの上半身に身体を折って唇を這わしてくる。



「唯の車、ベンチシートでよかったね?片側のシートを倒して狭苦しくヤラなくても済むもんね。でも、意外だなぁ。唯がこういう車に乗ってるだなんて。雰囲気からすると、真っ赤なスポーツカーでも乗り回してそうなのにね?」

「んっ…あたしだってそうしたいけど…仕方ないでしょ?自分ところの会社のヤツだからっ…安く手に入るのよっ…」



そこまで言ってはたと気付く。

あたしってばバカじゃないの?

自分の情報を自ら相手に教えてるだなんて…


それを聞いた玲は、すかさず口元をイヤらしくあげて反応を見せる。



「へぇ。唯って車関係の仕事してるんだ?」

「……………」

「唯ってさ、結構ヌケてるよね?そういう所、可愛いよ」

「なっ?!ひっ人をバカにしてっ!!あんたも一つぐらい情報教えなさいよ…フェアじゃないじゃない、こんなの」

「そうかな。大体、軽々しく自分の手の内を見せてるようじゃGameにならないんじゃないの?知りたかったら自分で調べれば?ボクみたいにさ」



くっ…くっそぅ!!

思いっきりバカにされてる、このあたしが。

信じられない、このあたしが高校生にバカにされるだなんて!!



あたしが唇を噛み締めて睨みつけると、さもおかしそうに笑い声を立てながら玲は笑う。


「あははっ!すっごい悔しいって顔に書いてるよ?ん〜ちょっとかわいそうになってきたから、少しだけ情報をあげようかな…」



………今度は哀れまれた。



「塩谷玲…は、知ってるよね?身長は179cm、体重68キロ。で、11月生まれのさそり座のAB型…覚えといてね?」

「………だけ?」

「ん?あ、そうそう。クラスは3−Aだよ?」

「いや、だから…」

「何、不服?」



当たり前でしょう。

それを知ったからってあたしになんの得があるっての?

誕生日を一緒に祝えってか?

服でも買ってご機嫌取れってか??


「不服かぁ…仕方ないなぁ。じゃあ、特別サービスでボクの携帯番号教えてあげるよ。寂しくなったらいつでもかけてきて?」



そう言って一旦あたしの体から離れると、ポケットから携帯を取り出してボタンを弄くる。

そして暫くしてからあたしの携帯の着信音が車内に響いた。



「……って、ちょっと!なんであたしの携帯番号知ってるのよ!!」

「あぁ。身体の相性が合う女性(ひと)なんてそうそうお目にかかれないからね?相手が見つからなかった時にサセてもらおうかと思って友達に聞いてもらったんだよ、昨日ね。それに、ボクも唯を堕とす為に頑張らなきゃいけないわけだし?」



また…先手を打たれた。



いつもいつも先回りして、あたしの神経を逆撫でしてくる。

こんな、チマチマと玲の動向を追ってたらあたしの神経が持たない。

なにか…何か手っ取り早く玲を揺るがす方法は…




そこで不本意ながらも、ある案が頭に浮かぶ。

今まで避けてたから一度もした事がなかったケド…この期に及んでは仕方ない。

あたしは腕を伸ばして玲の首の後ろへまわすと自分へと引き寄せて、妖艶な笑みを浮かべる。



「ふぅん。あたしを堕とす為に頑張ってくれるわけだ?…でも、携帯まで調べるだなんて玲もあたしに会いたいとか思ってたんじゃないの?」

「クスクス。まさか…さっきも言ったじゃない。ヤりたい時に呼び出そうと思って教えてもらったって。それに、前にも言ったよね?ボクは誰にも靡かないし、惚れたりしないって」

「そう…ざーんねん。あたしはあなたに会いたかったけど?ねぇ…会いに来てあげたんだから、キスして?この前は一度もキスしてくれなかったじゃない」



「…………え?」



思いもよらない行動だったのだろうか…玲があたしの言葉を受けて暫く口を噤んで押し黙る。


あら、意外にも効果大だったかしら?

玲のそんな様子に内心ほくそえみながらも、表情では潤んだ瞳でせがむようにしてみせる。



我ながら…役者になれるかも。



すると暫く黙っていた彼は、一度軽く目を瞑ってからスッと口の端を上げていやらしい笑みを浮かべてくる。


「へーぇ。作戦変更ってところ?それでボクが動揺するとでも思ったのかな?でも、おあいにく様…ボクはそういうのしない主義だから。それに、唯だってそういうのしない主義でしょ?あの日は一度もしてこなかったもんね」

「……………」



クソッ…やっぱり読まれてたか。



「クスクス。でも、ふ〜ん…奥の手を出すほど必死なんだ?唯は」

「なっ?!」

「してあげてもいいよ?キス。ボクのファーストキス、唯にあげようか?」



カチャカチャっと音を立ててベルトを外しながら、玲はあたしとの顔の距離を縮めてくると、そうとてつもなく色っぽい表情を覗かせる。

あたしはその表情を目の当たりにして、何故か頬が熱くなるのを感じながら視線をずらして、彼を視界から出す。



「別に…いらないわよ……やっ、あぁぁんっ!」



あたしが呟いたと同時に、何の前触れもなしに急に玲が中に這入ってくる。

その急な刺激にあたしの顎が上がり、口から甘い声が漏れる。

玲は律動を送りながら、首筋や鎖骨に唇を這わせて時折あたしの唇の際までそれを這わすとペロッと舌で舐めてくる。



「降参って言うならっ…キスしてあげるよ、唯っ…」

「誰がっ…降参なんかっ…あぁんっ…キスっ…なんて、していらないわよっ!」

「クスクス。そう?残念だなぁっ…ボクもファーストキスを体験できるかも?って思ったんだけどっ…はぁっ…相変わらず締まりがいいね、唯の中ってさ。ホント…唯ってボクと似てるよっ…だから身体の相性がいいのかな?」

「んぁっ…生意気っな事、言ってんじゃないわよ!あんたとなんて似てない!!」



そうよ、似てちゃ困るわよ。こんな性格の悪いガキとなんてっ。

だけど玲に言われたように、あたしは誰と寝てもキスだけは頑なに拒んでた。

だって、キスなんかして情が移ったら鬱陶しいだけだから…

そう思ってるのならば、何故あたしは玲にキスなんてしようと思ったの?

玲が言うようにそこまで必死になってヤツを堕とそうと?

……何のために?

悔しかったから?プライドを傷つけられたから??

今までこんなにも誰かに対して何かの感情が持ち上がる事なんてなかったのに…

どうしてこんなにも玲に対してだけは固執するのよ…



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