*Love Fight










・・・・・だっ誰?恵子?

布団に引き込まれたのはいいけれど、誰かもわからず後ろから抱きしめられてる格好。

・・・・・この香り。

「え・・・長瀬く・・ん?」

「ん。咄嗟だったから・・・しばらく我慢して。」

えっ・・・えぇぇぇぇ!!!私、長瀬君に抱きしめられてるの!?しかも布団の中で!!!

部屋はシーンと静まり返っていて、背中に長瀬君の鼓動と感触が余計に感じられて・・・。

や、やだ。どうしよう。もっ限界です!!鼻血でます!!!・・・いやいやそうじゃなくて。

これ以上ないってくらい、私の心臓はバクバク鳴っている。

絶対、長瀬君に聞こえちゃってるよぉ。

だって、私の体全部が心臓になっちゃったみたいに脈打ってるんだもん。

しかも暗闇にだんだん目が慣れてくると、いろいろ見えてきちゃって。

長瀬君の声がやけに近いなぁって思ってたら、一緒に頭から布団かぶっちゃってて、

顔の向きを変えると長瀬君の顔が、近い近い近すぎるぅぅ。

あまりにも近すぎてまた向き戻っちゃったわよ。だってだって10cmくらいなんだよ!!

く、暗闇でよかった。明るかったら絶対史上最高に真っ赤な顔してる、私。

『大丈夫?くすっ・・・体震えてる。』

そっそりゃ、体も震えますよ!!だってそんな好きな人に抱きしめられて、こんな近くに 顔があった日
にゃぁ、あなた。誰だって震えます。

『ぅん。だっ大丈夫で・・・す。』

『直人が戸田さん抱きしめたくなるの、わかるよ。』

『・・・・・っへ?』

『すごく・・・抱き心地がいいから』

だからっだから距離が近いんですってば!!そんな囁くように言わないでぇぇ。

私は何も言えず固まったままでいると、突然ドアが開けられた。

「おいっちゃんと寝てるか!?さっき外に人影が見えたが・・・うむ、寝てるようだな。」

えっ遠藤先生!!あなたが心臓に一番悪い。急に入ってこないでよぉ!!

うぅっ寿命が縮まった気がする・・・・・。

ビクッとなった私の体を長瀬君が大丈夫だよ、とでも言うように強く抱き寄せた。

あぁぁぁ・・・お願い、それ以上力を入れないで。口から心臓が出てしまうぅ・・・・。



どれくらい時間が経ったんだろう。

先生が出て行ってからまだ1分も経ってないかもしれない。

でもでも、私にはそれが5分にも10分にも感じられて。

長瀬君の腕の中で、私は呼吸を忘れてしまったかのように苦しかった。

『シャンプーの香りがするパジャマ姿の戸田さんを抱きしめてるのっていいよね。』

『はっはぃっ!?』

な、何を突然おっしゃてるんですか?突然過ぎて私の声が裏返る。

『クスクス。戸田さんてね、結構クラスのヤツから人気があるんだよ?放っておけないって いうか護ってあげたくなるっていうか。こんな状況みんなが知ったら羨ましがられるよ。』

『そっそんな事はないかと・・・。』

恵子も今朝そんな事を言ってたような・・・それは長瀬君もそう思ってくれてたりするのかな?

はっ!!なんと、図々しい事を私は考えちゃってるんでしょう。

長瀬君みたいにスポーツマンで秀才で何でもそつ無くこなす彼には、ドジばっかしている 私みたいなのは重荷だよね。

はぁ・・・他の人にどう思われようと、私は長瀬君に思われていないなら意味がないんです。

そりゃあ、私も一応女ですから『人気がある』って言われたら少し嬉しいけど。

・・・・・いや、大いに嬉しいのですが。ねぇ、長瀬君はどう思う?こんなドジな私の事。

・・・聞いてみたい。

今、暗闇の中布団の中には私と長瀬君の二人きり。頭からすっぽりとかぶってるから 声も外には漏れてないよね?・・・これって、もしかして告白のチャンスですか!?

今なら暗くて顔もよく見えなくて丁度いいかも・・・どうしようぅぅ。

私の心臓が再び高鳴り出す。

勇気を出すのよ、美菜!!今言わなきゃいつ言うっていうの?

『・・・あっあの・・・長瀬君・・・』

『スー・・・スー・・・』

スー・・・スー・・・?

・・・・・・・・ちょぉっと待ったぁ!!寝てるんですか、あなた。この状況で寝るんですか!!

美菜、唖然・・・んな事言ってる場合じゃないって!!

女の子を抱きしめたまま眠れるの?そんなに私って魅力ないのかしら。

何だか拍子抜け・・・。

『長瀬君・・・寝てるの?あのね、私・・・長瀬君の事が・・・好き。一年の時からずっと・・・』

『・・・・・・・・・・』

はぁぁぁぁ。眠ってる人に告白してどうすんの。言ってて、何だか悲しくなってきた。

もう、先生が見回りに来てから随分と時間が経ったから布団から出ても大丈夫かな?

長瀬君も寝ちゃったみたいだし。ずっとこうしていたい気もするけど。・・・出よう。

掛け布団を少し上げて、音を立てないように出ようと体を起こしかけたら、急にぐいっと 引き戻されてしまった。

「・・・っへ!?」

『もう少し、このまま抱きしめさせて。』

囁くような長瀬君の声が聞こえて、ぎゅっと後ろから強く抱きしめられてしまった。

『えっ!!・・・な、長瀬君起きてたの?』

えぇぇぇぇ!!起きてた?って事はさっきの告白聞いてた?

わわわっ。どうしようぅぅ。そんな、寝てると思ったから言えたのにぃ。

もぉ頭の中はパニックです!!心臓バクバクもんです!!!

天変地異です・・・意味わかんないです!!それぐらい私は今パニクってます。

『戸田さん、俺・・・』

・・・・・長瀬君?

『美菜ぁ?もう大丈夫そうよぉ。今のうちに帰ろう。どこ隠れてんのぉ?』

恵子の声に、長瀬君の腕が私から離され、ふっと背中から長瀬君の温もりが消える。

恵子・・・・・あなた最高にタイミング悪いぃ!!!

はぁ・・・長瀬君何言おうとしたのぉぉ?



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