*Love Fight










「まぁったく、美菜ったら。どこをどう歩いたらあんな簡単な道のりを、迷う事が出来るの かしら?やっぱり私がついていくべきだったわ。」

恵子は手桶にお湯を張ると、ザバァッと身体の泡を洗い流した。

・・・・・5回目。

そう、恵子は私が道に迷って長瀬君に連れて帰ってきてもらってからお風呂に入る今までに 同じセリフを4回も口にしてる。

そして今、5回目が恵子の口からため息まじりに吐き出されたのだ。

「でも一歩前進ね。」

「え?何が??」

「ふふっ。私達のところに着く手前で離したみたいだけど、それまで長瀬と手繋いでたでしょ?」

「えっ!!な、な何で恵子知ってるのぉ!?」

「ふふふっ。私は何でもお見通しなのさ!!て、たまたま遠目に見えただけで確信はなかった んだけど?」

カマかけられた・・・・。

私も身体に付いている石鹸を流すと、ちゃぽんと湯船に浸かった。

はぁ・・・でもいいお湯ぅ。疲れが取れるね。

ん〜!!でも今日はいろいろあったなぁ。長瀬君に肩貸してもらえたり、手繋いでもらえたり。

ふふっ。自然に顔がニヤけちゃう。

っっは!!あぁぁぁ・・・でも、長瀬君につけてもらった香水がぁ。匂い消えちゃったよぉ。

「美菜、あんたさっきから浮いたり沈んだり、何やってんの?」

「へ?あっ、ううん。何でもないよぉ。」

「変な子ね。あ〜でも気持ちいい!!大きいお風呂って最高!!」

「うんうん。ほんと気持ちいいよね。こう、泳ぎたくなっちゃう。」

「ガキ。」

「うぁっ!!そぉんなハッキリ言わなくってもぉ。・・・ぶぅ。」

「うふふ。ほんと美菜ってかわいい!言う事もやる事も子供っぽいのに、つくところは しっかりついてて悩殺バディなんだからぁ。だから抱き心地いいのね。もぅお姉さん困っちゃう。」

そんな事言われても、私が困っちゃう。

私は恵子みたいにスラッとしたスレンダーな体になりたいんだけどなぁ。

スタイルいいから何着ても似合うんだもん・・・あ、それは恵子だから余計に思うのか。

「さぁて、夜はこれからよ!!めいっぱい楽しまなくっちゃね。」

そう言って恵子は私に向かってウインクをする。

恵子・・・また何か企んでる?



そう、何を隠そうココは長瀬君達の部屋なのだ!!

またまた連れてこられてしまった・・・・・はぁ。

お風呂あがって、部屋に戻ってきてから点呼が終わると(女子は早い時間に点呼なの)待ってましたとばかりに私を連れ出してこの部屋にやってきたのです。

ま、彼氏の柊君に会いたいって事なんだろうけど。もう、恵子も健気なんだから。

でも、私ってばこんな時間から行くなんて思ってなかったから思いっきりパジャマなんですけど・・・。

恵子はいいよ?Tシャツに膝丈のハーフパンツで普通の格好っていえば普通だし。

最初っから行くつもりって言ってくれてたら、私もそういう格好にしたのに・・・ちょっと恥ずかしい。

部屋に入ったら男の子達から、おぉ〜!!とかって言われちゃって私は全身真っ赤になったと思う。

しかも、しかも!!部屋には布団が敷き詰められてて・・・だぁぁぁ。

いけないっ美菜!変な想像をしちゃっ!!・・・変な想像ってなんだぁぁぁ!!!

自分の頭の中と格闘していると、美菜、座りなよ〜って恵子に言われたから恵子の隣りに座ったら、 反対側には、なな何と長瀬君がぁぁ・・・あ、Tシャツにトレーナーのズボン姿もカッコイイ。

・・・って何見とれちゃってるのよ、私ったら。

制服姿しか知らないから、制服以外の服装を見たら何か変な感じ。

何だかみんな大人の男の人に見えてくる。柊君もいつもより増してカッコよく見えちゃう。

あぁ、ダメだ。こんな所にいたら私の思考回路ショートしてしまう。もともとしてますが・・・。

「美菜ちゃ〜ん、大丈夫?顔赤いけど、俺らの寝巻き姿見て照れちゃった?」

「わわわっ、大丈夫です!!」

何であなたはそんなに鋭いんですかね。はぁ、お願い・・・私の存在は無視して話を振らないで。

「とりあえずトランプでもするかぁ。何するかな。」

「ババ抜き!!」

「恵子お前ねぇ・・・ポーカーとかじゃないと金かけられないだろぉ?」

「え〜、いいじゃん。ババ抜きしたいんだもん。」

「まぁしかたねぇか。美菜ちゃんもいる事だし、ババ抜きで・・・。」

そんな訳で、私達4人と同じ部屋の男の子3人を混ぜてババ抜き大会が始まりました。

横は長瀬君だから当然トランプを抜く時は長瀬君からな訳で、抜く度に目が合うとニコって 微笑まれて・・・その笑顔に翻弄され、回ってきましたババ様!!

・・・うぅ。ババを引いた途端、ぶーっと噴出されてしまった。あの笑顔はわざとか・・・。

「あ!!美菜、ババ引いたでしょ。あんた顔に出るから好きよ〜。」

って言って、見事にババ様は私の手元から抜かれる事はなく・・・くそぉ、負けた。

「はい、美菜ちゃん負けねぇ。んじゃお約束のバツゲーム行こうかぁ!!」

おぉ!!とかってみんな盛り上がってるけど、何々?バツゲームって、何やらされるのぉ!!

私が不安でオロオロしていると、突然ドアが開いて男の子が飛び込んで来た。

「おいっ!!もうすぐ見回りくんぞ。電気消すから、みんな寝たフリしろ!!」

へっ?へっ!?寝たフリって。私はどうすれば?あっあれ?恵子は・・・・・い、いねぇよ。

あたふたとしてたら、ぐいって誰かに腕を掴まれて布団の中に引きずりこまれちゃった。

「一回来ても、もっかい来るかもしれないからしばらく布団から出るなよ!!」

そんな声が聞こえて、部屋は暗闇と化した。



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