*Love Fight 昼食を終えて、午後からは班別に分かれて写生の時間。 宿舎は森の中にあるから、周りは自然がいっぱい。 普段自然に触れる事が少ないせいか、何だか空気が澄んでる気がして深呼吸したくなっちゃう。 私達の班は(って、4人だけど)森の奥に進んで他の生徒がいない静かな場所に決定した。 結構山奥だよね、ここって。 「たまにはいいよなぁ。こういう所でまったりするのもさ。」 「直人、何言ってんのよ。寝転んでないでちゃんと写生しなさいよ。」 「へいへい・・・・・ってお前も寝転んでるじゃねぇか!!」 「え〜。だって気持ちいいんだもん。」 そんな2人のやりとりを見ながら、仲いいなぁ〜。なんて思ったりして。 私はニコッと笑うとまた筆を進める。 ほんと、この2人って似たもの同士っていうか・・・行動や言動が似てる。 2人を見てるとすっごく自然で、うらやましいなぁ。なんて思っちゃう。 私も恵子みたいに、自然に長瀬君と話せるようになったらいいな。 ちらっと長瀬君を見ると、真剣な眼差しで筆を走らせている。 はぁぁ・・・やっぱりカッコいい。 自分の手首を鼻に近づけると、さっきつけてもらった香水の香り。 長瀬君と同じ匂い・・・・・むふふっ。 「・・・・・美菜?何ニヤけてんのよ、怖いって。」 「っげ!!・・・突然こっち見ないでよぉ。」 「な〜に考えてたのかなぁ?お姉さんに教えなさい。」 「何、何?お兄さんも聞きたぁい。」 だからっ!!2人でニヤニヤしながら寄って来ないでぇ。あなた達似てるんですってば。 もぉ、やりにくいなぁ。 このままだと、またこのカップルに苛められるぅ。 そうだ!!ここはひとつ・・・・・おトイレに行こう。うん、そうしよう。 「ああっっと、私お手洗いに行って来る!!」 「あっ、逃げる気ね。でも、トイレの場所わかるの?ちょっと先に登山者用に作られたトイレ があったけど、美菜方向音痴じゃない。一人で行ける?」 「うっ。だ、大丈夫です!!それぐらい行けるよぉ。」 「そう?じゃあ、気をつけてね。何かあったら携帯に電話するのよ。」 「うん。じゃあ行ってくるね。」 ほんと、恵子って私のお母さんみたい。 ・・・・・で。 ここはどこなんでしょう? トイレには無事辿りつけて、来た道と同じ方向に帰ってる筈なんですが。 むぅ・・・恵子達が見当たらない。 結構歩いたぞ。もう、そろそろ着いてもいいんだけどなぁ。 さっきから同じ景色をぐるぐる回ってるような、そうでないような? もしかして私、道に迷いましたか?方向音痴、始動開始かっ!? さて、困ったぞ・・・どうしよう。あ、そうだ!携帯!! 私は携帯をポケットから取り出すと、画面を開く。 ・・・・・嘘でしょう? 『圏外』 何でこんな非常時に圏外なんですかぁ!? ど、ど、どうしよう。私どうやって帰ったらいいの? あぁ。やっぱり恵子についてきてもらったらよかったぁ・・・ぐすん、後悔。 あれから結構時間経ってるよね。 うぅ・・・泣きたくなってきちゃった。 私はその場に蹲ると、膝に額を当てた。 突然ガサガサガサッと、何者かがこっちに向かってやってくる気配。 ひえぇぇぇっ、もしかして熊!?ここ山奥だし? だったら、だったらどうしよう!!・・・そ、そうだ、死んだフリ!! 私は何者かが姿を見せると同時に、その場に倒れこんだ。 その、熊であるかもしれない何者かは私の前で立ち止まると、肩をポンッと叩く。 「わっっわ!熊さん、私死んでます!!どっか行ってください!!」 小さな私の脳ではこの状況は限界です!!パニック状態で訳のわからない事を口走る。 「っぷ。戸田さん?」 っぷ?戸田さん?・・・・・あれ、人間・・・・って、えっ!! 「な、長瀬君!?」 私はがばっと起き上がると、おかしそうに目を細めている長瀬君を見上げた。 「帰りがあまりに遅いから探しに来たんだ。もぉ、あちこち探し回ったよ。よかった見つかって」 「ごっごめんなさい!!来た道に戻ってるつもりだったんだけど・・・。」 長瀬君の額には汗がにじんでいる。うわぁ・・・結構探し回ってくれたのかな。 「あっじっとして。こんな所に寝転がるから葉っぱが髪の毛とかにいっぱいついてるよ。」 「えっ?あ、ははいっ!!」 長瀬君は、微笑みながら私の髪や肩に付いている葉っぱを振り払ってくれた。 わわっ。こんな至近距離で長瀬君と向かい合っちゃってるよぉ。 柊君と並んでると分からなかったけど、長瀬君てすごく背が高いんだ。 私の頭がちょうど彼の肩ぐらいの位置。 また、新たな発見しちゃった!! 「しっかし、『熊さん、私死んでます』はないよなぁ。ここは熊なんていないよ?しかも たとえ熊と遭遇したとしても、死んだフリなんてしたらそれこそ食べられちゃうよ。」 「えっ!!そうなの??・・・てっきり私。あぁ、お恥ずかしい。」 「くすくすっ。ほんと戸田さんておもしろいね。じゃ、あいつらも心配してるから戻ろう。」 「あ、うん。」 私は恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら、歩きだそうとしたら長瀬君がそっと私の手を繋ぐ。 えっ!っへ!?なな何でぇ。私長瀬君と手ぇ繋いでるぅぅぅ!!! また、迷子にならないように。ってニコッて笑うとそのまま歩き出しちゃった。 こんな展開ってアリですか? 長瀬君の手っておっきいんだぁ。 こうして見ると、私の手って子供みたいだな。 ね、繋いだ部分がとても熱く感じるのは私だけ? このままずっと手を繋いだままで、どこまでも歩けたらいいのにな。 なんか・・・今、私とっても幸せかもぉ!! 自分の事を心配してくれている人物が他2名いることも忘れ、感慨にふけるおバカな女が ここに一人。 |