*Love Fight 本当はこのまま俺の家に連れて帰りたい所だけど…。 先週泊まりに来たからなぁ。 一つため息を付いて、美菜の実家に向かう。 玄関のチャイムを押して暫くしてから、美菜の母親がひょこっと顔を出す。 「あらー、修吾君。いらっしゃい…何、美菜寝てるの?」 「すいません。僕がついていながら…ちょっとお酒を飲んでしまって。」 って、俺が飲ませたわけじゃないけど。 「もー、この子ったら戸田家には珍しくお酒が弱い子なのよねぇ。それに、どうせこの子が勝手に飲んだんでしょ。」 「……え。」 「それぐらいお母さんにだって分かるわよー。修吾君たら私達が一緒の時でも美菜にお酒は飲ませないようにしてるでしょ?」 「バレてました?」 「だって、お母さんは修吾君のファンだもの〜♪美菜じゃなくてお母さんの彼氏だったらよかったのにって思うぐらい。だから何だってお見通しよ?」 ……微妙に返答に困る。 俺が、はははっ。と笑っていると、そうそう。と美菜の母親が言葉を続ける。 「修吾君が来てくれてちょうどよかったわー。ねぇ、今日うちに泊まってってくれない?」 「………へ?」 「突然で悪いんだけど。あのね、さっきうちの母が…美菜にとったらおばあちゃんね。その母が足の指を骨折したって連絡が入ったのよ。大した事じゃないって母は言い張るんだけど、やっぱり心配でしょ?だからね、今から車で行ってこようと思って。だけど今日に限ってお父さんも出張でいないし、幸太郎は修学旅行でいないしで、美菜一人でどうしようかって思ってたのよ。修吾君が一緒にいてくれるなら心強いし、ね。お願いできないかしら?」 「僕は全然かまいませんけど…これから行かれるんですか?」 「車で1時間ほどの距離だから結構すぐよ?母一人で心配だから、今日は向こうで泊まってこようと思ってるの。で、様子見て明日に帰るかどうするか決める形で。」 だからお願いしてもいい?と言われて、いいですよ。と答えると、母親は急いで出かける準備をして、慌しく、後は頼むわねぇ。と言葉を残して出て行ってしまった。 結構俺って信頼されてる? 暫くの間、玄関で呆然と立ち尽くし、背中に美菜がいることを思い出して、そのまま彼女の部屋に向かう。 ベッドに下ろすと、う〜ん。と、美菜が薄っすらと目を開く。 「あれ、ここは?」 「ん?美菜の部屋だよ。」 「帰ってきたの?」 「うん、美菜が寝ちゃったからね。そうそう、おばさん美菜のおばあちゃんのところに行ったよ。足の指骨折しちゃったから、心配だから今日はそっちに泊まってくるって。」 「えー。じゃぁ今日は私一人?」 「寂しい?」 「うん、寂しいし怖い。」 「じゃぁ一緒に寝てあげようか?」 「いいの?」 「うん、いいよ。って言うか、美菜のお母さんに頼まれたからね。美菜一人で心配だから泊まって行ってって。」 「もぅ。お母さんは心配性なんだからぁ。」 「寂しいし怖いって言ってたのは誰だっけ?」 「…………ぬぅ。」 俺は美菜の頬を軽く撫でながら、クスクスと笑う。 「もう酔いは醒めた?」 「んー…醒めたような…でもね、まだちょっと頭がふわっとなるよ?」 「美菜は後からお仕置きね。」 「なっ!?どっどうしてぇ?」 「俺の知らないところでお酒を飲んで、あんな可愛く酔っ払った姿を見られたから。」 「だぁってそれは知らなかったんだもん…それに修吾君を待ってるって言ってたのに、先に行って待っててって言ったのは修吾君だもん…だから、今日は私がお仕置きをする!」 「………へ?」 初めて美菜にキスマークをつけられた時もそうだけど、たまに予想だにしない事を美菜は言ってくる。 今回もその突拍子もない言葉に、自分の首が傾く。 「うぅー。だからぁ…その…今日は私が修吾君をお仕置きしちゃうの。」 「美菜がお仕置きって……」 美菜からの言葉を改めて脳で理解すると、自然に笑いがこみ上げてくる。 「やっ…どうして笑うんですかぁ。」 「いや、だって。」 もし、俺が美菜に対してしてる「お仕置き」を彼女も俺にしてこようと思ってるなら、それは俺にとっては……ねぇ? だけどちょっと面白いから、美菜の話しに乗ってみようかな。 なんて、俺の口元に少し意地悪い笑みが浮かぶ。 「じゃぁしてよ、お仕置き。どうしちゃう?」 「むぅ。どうするって…具体的に考えてなかった。」 「あ、そう?じゃぁ俺からお仕置きしちゃおうかなぁ。」 「だっダメダメダメ!私がするんだもん、えとえと…いつも修吾君はチューだから…私は修吾君を襲う!!」 ……そう来たか。 「へぇ。美菜が俺を襲ってくれちゃうんだ。」 「あれ…うわっ!じゃ、じゃなくて!!襲うじゃなくてぇ…」 自分の発した言葉に目を白黒させて慌てる様子の美菜に堪らず噴出してしまいそうになる。 可愛すぎ。 あー、でもある意味お仕置きかも。 美菜から襲われた日には…俺、理性を保っていられるかどうか自信がない。 美菜を壊さないようにと葛藤する事がお仕置きかな? なんて。そんな事を思いながら、ベッドの上にいる美菜の体を抱きしめてそのまま倒れこみ、自分の体の上に彼女の上体を乗せる。 「どう襲ってくれるの?」 「やっあの…そうじゃなくてですねぇ…そのぉ。」 どうやら美菜の体から完全にアルコールは引いたらしい。 今まで通りの美菜の姿に微笑みながら、指の背で頬を撫でる。 「美菜が襲わないなら、俺が襲っちゃうよ?」 「むぅ…それはダメぇ。」 「じゃぁして?美菜から。」 暫く真っ赤な顔で俯いていた美菜は、覚悟を決めたのか小さくボソッと呟いてくる。 「修吾君は…手を出しちゃダメだからね?」 |