*Love Fight 「美菜、もう涙は止まった?」 「・・・・・ん。」 あれからホテルを出て、そのまま修吾君の家にやってきた私。 やっと涙は収まったけど、思い出すと・・・ぐずっ。 ダメだ。やっぱり泣きそうになる。嬉しすぎて。 私は後ろからまわされた彼の腕に手を添えて、きゅっ。と自分に引き寄せる。 修吾君もまわした腕に力を入れて、私の肩に顎を乗せると耳元にそっと囁いてくる。 「美菜・・・今日お泊りして帰る?ちょうど金曜だし、明日は休みだから。」 「え?」 「・・・今日は帰したくない。」 「修吾君。」 その言葉に一瞬胸がドキンッ。と高鳴る。 私も・・・今日は帰りたくないかも。 私がコクン。と小さく頷くと、修吾君は部屋にある電話に手を伸ばしてどこかにかけはじめる。 「・・・あ、もしもし。長瀬と申します。あ、はい。あの今、美菜さんと一緒にいるんですけど、今日うちに泊まって行ってもらってもいいでしょうか?えぇ、はい。それはもちろんです。本当ですか?ありがとうございます。あの、美菜さんに代わりましょうか?・・・クスクス。あ、そうですか。あはは。ありがとうございます。はい、では失礼致します。」 ピッ。と電話を切って元に戻すと、ほっとため息を付く。 「え・・・うちにかけたの?」 「うん、お母さんが出た。やっぱり嘘を付いて泊まらせるのって嫌だからね。怒られるかと思ったけど、泊まってもいいよって。でも、ちゃんとしなさいよ?って言われたけど。」 言いながら、クスクス。と笑う修吾君。 いや、だから。毎回思うけど、ちゃんとしなさいよ。の意味が分かりませんてぇ。 「もー、お母さんったら何言ってるんだか。で、私に代わらなくてもよかったの?」 「クスクス。うん、お母さん俺の声が聞けたからそれでいいってさ。美菜がいなくてもうちに泊まりに来てくれたらいいからね、とも言われた。」 ・・・・・。 なっなんちゅー母親なんだっ!!娘よりも娘の彼氏かっ!!! 呆れて言葉も出てきませんよ、お母さん? 「・・・ん、でもよかったぁ。今日お泊りして帰れるんだ。よっぽど修吾君、うちの親に気に入られてるんだね。」 「あはは。そうかな?だったら嬉しいけど。美菜・・・明日まで一緒にいられるね。」 修吾君は再び私の体を抱きしめながら呟く。 「うん、明日まで一緒。」 「結婚したら・・・ずっと一緒にいられるのにね。」 「修吾君。」 「んー、でも美菜の全てを護れるような男になるには、もうちょっと時間がかかるかな。」 修吾君、十分今でも護ってもらえてる気がするよ? そう修吾君に向かって呟くと、まだまだだよ。って彼は笑った。 今日は修吾君のご両親は仕事で遅いらしく、私が夜ご飯を作って済ませた。 私の作った物を喜んで美味しそうに食べてくれる姿を見ると、本当に幸せになってくる。 いつか、毎日こういう日が迎えられるのかな? なんて思ってみたりして。 私が後片付けをしてる間に、彼がお風呂に入り、出てきた所で入れ替わりに私がお風呂をいただいて。 用意されたパジャマを見て暫し固まる。 ・・・・・なんで、上だけ? 「――――ごめんね、探したんだけどちょうどいいのが洗濯に行ってたから。」 って、修吾君が部屋のベッドを背にもたれて座りながら申し訳なさそうに呟く。 「でもでも、これってぇ・・・。」 少し大きめの長袖Tシャツではあるけれど、ちょっと・・・・・いやらしくない? 私は頬を微かに赤らめながら裾を伸ばしてモジモジとする。 「クスクス。美菜・・・なんか、格好がやらしー。」 「なっ!?やっやぁ。修吾君が用意してくれたんだよ?変な事言わないでください!!」 「あはは。嘘々。美菜、こっちおいで。」 「うぅ。」 修吾君に優しく微笑まれて、真っ赤な顔で俯きながら彼の腕の中に納まる。 彼は私の体に腕をまわしながらきゅっ。と腕に力を入れて小さく囁いてくる。 「・・・ずっと・・」 「え?」 「ずっとこうして美菜を腕の中に閉じ込めておけたらいいのに・・・。」 「・・・修吾君。」 「美菜、これからもずっと俺の隣りで笑っていてね。いつまでも俺の隣りで笑って、俺を支えていてね。」 絡んだ視線がすごく真剣で、それから逸らせなくなる。 ドキドキと鼓動が高鳴って痛いくらい。 「さっ支えるだなんて・・・支えてもらってるのは私の方だよ?いつもいつもドジしちゃう私を助けてもらって。」 「ううん。ちゃんと支えてくれてるよ?美菜のね、笑顔を見るだけで俺は幸せになれる。美菜が隣りにいてくれるだけで、俺の力になるから。まだまだ俺は子供で護るだなんて言っててもそれはほんのひと握りで・・・だから、本当の意味で俺が美菜を護ってあげられるまで、俺を支えてて欲しいんだ。きっと・・・ううん、絶対美菜を幸せにするから。」 「私で・・・いいの?」 「美菜がいいの。美菜じゃなきゃダメなの。」 「えへへっ。ちょっと頼りない支えだけど・・・うん、ずっと・・ずっとずっと修吾君の隣りで笑っていたい。修吾君が、やだって言っても隣にいちゃうもん。」 照れたようにちょこっと舌を出しながらそう笑うと修吾君も同じように笑って返す。 「俺が嫌だって言うと思うの?」 「んー・・どうでしょう?」 「こら、美菜。そういう事言うとお仕置きしちゃうよ?」 「えっ!えっ?!どっどうしてそうなっちゃうの?やだぁ、お仕置きは。」 「あれ?美菜は俺とキスするの嫌なんだ。」 「やっちがっ・・・。」 なっなんだか雲行きがあやし〜くなってきた気が・・・。 知っててワザと言ってくる『俺とキスするの嫌なんだ。』攻撃。 そんな言い方されたら嫌だって言えないの知ってるくせに。 いや、もちろん本気で嫌って思ってるわけじゃないですけど。 「じゃぁキスしよっか?」 「うー・・そんなはっきりと言われると恥ずかしい。」 「何を今更。」 「だってぇ、恥ずかしいものは恥ずかしいんだもん!!」 そう真っ赤になって頬を膨らませると、美菜可愛い。って囁いてから唇を塞がれてしまった。 何度重ねても、瞬間はいつもドキドキする彼とのキス。 唇に伝わる彼の柔らかい感触を感じながら、次第に私の脳が優しく犯されていく。 |