*Love Fight 今日は本当にありがとう。このお礼は後日必ずするからね。と、言葉を残して省吾さんと亜理沙さんは一緒になってホテルを後にした。 結婚式にも私を招待してくれるとの事で、すごく嬉しくなってくる。 ・・・・・いいのかな。私なんかが結婚式に呼んでもらっても。 でも、結婚式かぁ。いいなぁ・・・きっと亜理沙さん今日よりもずっとずっと綺麗なんだろうな。 先ほどの亜理沙さんのドレス姿を思い出して、一人、ほぅ。とため息を漏らす。 「どうしたの?ため息なんかついちゃって・・・疲れた?」 「あ、ううん。そうじゃなくて、結婚式の時は亜理沙さん、もの凄く綺麗なんだろうなぁ。って思ったらため息が出ちゃって。」 「今日の美菜のドレス姿もすごく綺麗だったから、俺たちが結婚する頃にはもっともっと綺麗になってるね、きっと。」 「やっもぅ・・・そっそんな私の事はいいですってぇ。」 真っ赤に頬を染めて俯くと、クスクス。と笑いながら修吾君が優しく頭を撫でてくれる。 「どうして?本当に綺麗だったよ、美菜。すぐにでも結婚式を挙げたくなっちゃったもん。」 「やだぁ、もう。本当に恥ずかしいから、そういう事言わないでください!それに、修吾君はまだ17歳だから結婚できないもん。」 「あ、よく気付いたね。クスクス。さっきまでは自分の事だって勘違いしてたクセにぃ。」 修吾君は頭を撫でていた手を頬に移動させると、うにうに。と軽く抓る。 ・・・・・ぬぅ。 「だっ・・だってだって、あれは修吾君が突然『ドレス選びに行こう。』だなんて言うから、頭がパニックになっちゃったんだもん。」 「クスクス。ごめんごめん。昨日の夜、突然兄貴から電話あってさ。美菜も一緒にって言われて、なんか自分の結婚式みたいで嬉しくなって、美菜と一緒にドレスを選ぶって思ったら・・・ちょっと浮かれてたのかもしれないね。」 「・・・・・修吾君が?」 ・・・いつも冷静沈着な修吾君が?浮かれるだなんて、そんな・・・嘘ぉ。 「おかしい?」 「だって、いつも冷静で物事をしっかりと見てるからそんな修吾君が浮かれるだなんて・・・なんか不思議。」 「んー。俺、美菜の事になるとダメみたい。気持ちが先へ先へって行っちゃって・・・。」 「・・嘘ぉ。」 「ホントホント。あ!そうだ。ここのホテルのチャペル見て帰る?兄貴達そこで式挙げるらしいし、俺達も将来ここで挙げるかもしれないしね。下見に。」 「あ、うん!見たい見たい!!」 私は微笑みながら差し出された手に、自分の手を重ねると満面の笑みを漏らす。 修吾君、本当に私達の将来を考えてくれてるんだ。・・・そう思うとすごく嬉しくなってくる。 「・・・・・わぁ。」 彼と一緒にやってきたチャペル。 今は誰も挙式をあげてないらしく、薄暗くシーンと静まり返っている。 それでも神聖な雰囲気が漂っていて、思わず私の口から声が洩れた。 修吾くんも、へー。と言いながら同じように辺りを見渡す。 「・・・結構広いな。」 「うん、凄くいい雰囲気ー。あ!パイプオルガンも置いてあるよ?すごいねぇ、ここで省吾さん達式を挙げるんだぁ。」 「俺達もね?」 「おっお金貯めなきゃだね・・・。」 何を現実的な事を言ってるんだ、と自分でツッコミながらそれでも自分の姿を思い描き、自然と頬が赤く染まる。 こんな素敵な場所で修吾君と一緒に式を挙げられたら・・・。 「・・・美菜?」 キョロキョロと辺りを見渡しながらちょうど祭壇の前辺りまで歩を進めたところで、不意に後ろから修吾君が呼びかける。 「なぁに、修吾君。」 「・・・・・僕は一生あなたを幸せにします。」 「・・・・・へ?」 静かな場所に彼の声が響く。 なに、急に・・・突然どうしちゃったの? 私が呆然とそこに立ち尽くしていると、修吾君が優しく微笑みながらゆっくりと私に歩み寄ってくる。 「僕は心からあなたを愛しています。ずっとずっとあなたの傍で、あなたを愛し続けます。」 「え・・あの・・修吾君?」 「辛くなった時、悲しくなった時、一番に僕の顔を思い出して欲しい。どこにいてもすぐに駆けつけてあなたの力になるから。ずっとあなたの傍にいて、ずっとあなたを護り続けて行きたいから・・・だから、あなたもずっとずっと僕の傍で笑って僕を支えていてくれませんか?」 「やっぁ・・・なにぃ・・。」 「・・・・・って、ちょっとキザだよね。もうちょっと本番は歯の浮かないような台詞を考えなきゃっ・・・わっ!美菜?!」 私は突然修吾君の胸に飛びつくと、ぎゅっと背中に腕をまわして彼の胸に額を当てる。 「ふぇっ・・修吾君・・。」 「クスクス。み〜な?どうしたの?」 修吾君は優しく私の体を抱きしめて、そっと頭を撫でてくれる。 私の瞳からとめどなく溢れ出す涙・・・やだぁ、もう急に。どうしてこんな場所でそんな綺麗な顔をして嬉しくなっちゃうような事言うの? 「うれっ・・しい。」 「ほら、泣かないで?まだ泣くには早いよ。」 「だってだってぇ・・・修吾君が突然そんな事言うんだもん・・・ずるいよぉ。」 「この場所だから、ちょっと言ってみたくなったの。でも、本当にそう思ってるよ?美菜・・・愛してる。」 「っ?!あいしっ・・っふっ・・えぇ〜んっ!!修吾くっん・・・。」 優しく囁きかけるように聞こえた『愛してる』って言葉。 『大好き』よりも数倍威力があるその言葉。 私の胸が、きゅん。となって温かいものが心の中に広がっていく。 「ほらほら、こんなに涙流して・・・泣き止まないとキスしちゃうよ?」 「とっ止まらないもん〜〜〜。修吾君がそんな事言うからだよぉ?ぅあ〜んっ!!」 「クスクス。んー、止まらないか。じゃぁ、キスしちゃう。」 修吾君はそう言って私の目から溢れ出す涙を両手の親指で拭ってから、優しく微笑んで唇を重ねてくる。 ――――愛してるよ、美菜。 唇を重ねる直前に、再び囁かれた彼からの言葉。 「ふぇっ。」 私の涙腺は完全に破壊されたらしい。 彼に拭ってもらった涙は後から後から私の瞳から零れ落ちていた。 |