*Love Fight 「亜理沙がさ、この2つのどちらかにしたいらしいんだけど決まらないんだって。俺はこっちのタイトな方がいいと思うんだけど・・・あーでもふわっとしたのも見たいし、なぁ、どっちがいいと思う?」 「そうなのそうなの。省吾のオススメのタイトなのもいいんだけど、やっぱりふわっとしたのも着たいでしょ?もー、迷っちゃって。ねぇ、2人はどっちがいいと思う?」 省吾さんと亜理沙さんにそう詰め寄られ、私たちはお互いに顔を見合わせてクス。と笑う。 なんか似てるね、この2人。 「俺は・・・そうだな。タイトなヤツかなぁ?」 「お、やっぱり修吾もそう思うか?そうだよな、このスッとしたラインがいいと思うんだよ。」 「そう?そうかなぁ・・・やっぱりこのタイトな方がいいかな。美菜ちゃんはどう思う?」 「私は、こっちのふわっとしたヤツがいいです。やっぱり、ウエディングドレスって言ったらふわっとしたヤツに憧れちゃう。」 「だよね、だよね。そうなんだよ。ふわっとしたヤツの方が華やかだしなぁ。お姫様って感じがするもんな。」 「やっぱり?そうよね、私もこういうドレス憧れだったの。やっぱりウエディングドレスって言ったらこうよねぇ?」 ・・・・・。 ・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・決まらない。 「やーん、もぅどうしよう。お色直し増やしちゃったらみんなと一緒にいられる時間が少なくなっちゃうし。省吾、どうしよう?」 「そんな事言ったってお前。亜理沙が着たい方を着ればいいじゃないか。」 「やだ、決められないもの。省吾が決めて。あなたの決めた方にするわ。」 「俺?俺は・・無理!!・・・・・修吾、お前決めてくれ。俺には決められない。」 「はっ?!何で、俺が決めなきゃならないんだよ。美菜、美菜が決めなよ。どっちが亜理沙さんに似合うと思う?」 げっ!!なっなんで、私にふるんですか? 「そっそんなぁ。そんな重大な事、私は決められないよー。あっ亜理沙さんはどっちが着たいですか?」 「ん〜、どっちも着たいんだけど・・・そうだ、もう一回試着してみる。ね、美菜ちゃんも一緒に着てくれない?同時に見てみたいの。ちょうど背丈も一緒だから・・・ね、お願い。」 「えぇぇぇ!!わっ私がですか?そっそんな。無理ですよぉ。私、亜理沙さんみたいに細くないし、似合いませんってぇ。」 「ううん、そんな事ないわよ。美菜ちゃんも色が白いし、アップにすれば雰囲気は似てると思うの。だからね、お願い。」 可愛らしく亜理沙さんにお願いをされて、困った顔で修吾君を見上げる。 「美菜、着てあげたら?」 その一言で決まってしまった・・・私が、ウエディングドレスを着るの?! 「わぁ、やっぱり美菜ちゃんも似合うー。お化粧も少ししたから、大人っぽく見えるわよ?すっごく綺麗。」 亜理沙さんと同じ控え室に入り、彼女と同じようなスタイルにセットしてもらうと、亜理沙さんが手を叩きながら微笑む。 「・・・・・ほんとですか?」 「うんうん、すっごく可愛い。うん、美菜ちゃんはこっちのふわっとしたのが似合うね。あ、ほら。愛しのダーリンに見せてあげなきゃ。」 亜理沙さんはそう言って微笑むと、私と手を繋いで控え室を出る。 なぁぁぁ!すっごく恥ずかしいし照れくさい!! 亜理沙さんはタイトな方のドレスを身に纏い、私はふわっとした方のドレスを纏う。 真っ赤な顔で俯きながら亜理沙さんに連れられて表に出ると、省吾さんが、おー。と感嘆の声を漏らす。 ドキドキしながら修吾君の方をチラッと伺い見ると、彼は驚いたような表情を見せる。 あぁぁ。似合わねー。とか思ってるのかなぁ。むぅぅ、やっぱり着るんじゃなかったかな。 自信なさげに俯きながら歩き、亜理沙さんが私の手を離して省吾さんの元へ行くと自分一人で彼の元へ歩く――――の、ところでドレスの裾を踏んでしまっていつものようにつんのめる。 「うにゃっ?!」 「うぁっと・・・危ない。」 間一髪のところで修吾君に抱きとめてもらい、思わず安堵のため息を漏らす。 はぁぁ、よかった。こんなところで派手に転んだらまたみんなに笑われちゃうよ。 「修吾君、ありがとう。あの・・・に・・あう?」 私がおずおずと彼を見上げながらそう呟くと、微かに自分にまわされた彼の腕に力が入ったような気がした。 「すっごく似合うよ、美菜。なんか・・・本当のお姫様みたい・・・」 ――――だから、抱きしめてキスしたくなっちゃった。 そう耳元で囁かれ、即座に私の頬が真っ赤に染まる。 「しゅっしゅっ・・・しゅっ・・・。」 言葉が出ない・・・そんな、恥ずかしくなるような事を耳元で囁かないでください!! 「クスクス。本当にそう思ったんだから仕方ないでしょ?でも・・・それは後のお楽しみだね。」 そうニッコリと微笑む彼に対し、微妙な笑みが私の顔に浮かび上がる。 『お楽しみ』って言うのが少しひっかかるんですが? 「・・・・・ねぇ省吾。どっちがいいと思う?」 私と亜理沙さんが横に並び、2人を見比べながら省吾さんが眉間にシワを寄せて腕を組む。 「ん〜。甲乙つけ難いな・・・タイトなドレスの亜理沙もいいし、ふわっとしたドレスを着た美菜ちゃんもいい。」 「こら、どこ見比べてるの。」 「おい、変な所見るな。」 修吾君と亜理沙さんの突っ込みに、あははっ。と笑って、省吾さんが、冗談だよ。と呟く。 「マジな話、どっちのドレスもいいと思うけど。やっぱり亜理沙にはタイトな方が似合うかな。どうしてもって言うなら、どっちも写真に残したらいいんじゃないか?式ではタイトな方にしてさ。」 「ん〜。そうね、そうしようかな。美菜ちゃんの見てると、やっぱりふわっとした方も着たいし。うん。そうする。式ではこっちのタイトな方を着て、写真は両方で撮る事にするわ。それでいい?」 「いいよ、じゃあそれで決定だね。はぁぁ、ようやく決まったよ。お疲れさん。」 「ほんとぉ。お疲れさまー。でも、今日は美菜ちゃんとかに付き合ってもらえてよかったぁ。本当にありがとう。」 「あ、いえいえ。私もこんなウエディングドレスまで着せてもらっちゃって・・・ありがとうございました。とても楽しかったです。」 「俺も。美菜のウエディングドレス姿、一足先に見れてよかったよ。」 「・・・へぇ。修吾が俺らの前でそんな事をぬけぬけと言うとはね。変わったな、修吾。よっぽど美菜ちゃんに惚れてるんだ?」 省吾さんが修吾君に向かってそう意地悪く言うと、彼はすぐさまいつもの無表情に戻すとぶすっと言葉を吐く。 「うるせぇ。」 「クスクス。早くお前も一人前の男になって、美菜ちゃんを幸せにしてあげなよ?」 「兄貴に言われなくても、そうするっつうの。この後、亜理沙さんの実家に行く予定なんだろ?だったら早く行けよ。」 「あははっ。はいはい、そうしますよ?修吾も早く美菜ちゃんと二人きりになりたいもんな。亜理沙、美菜ちゃん。帰る用意しようか?」 そう省吾さんに促されて、私達は控え室へと戻る。 なんか、歳の離れてる省吾さんがいるせいかな。いつも大人に見える修吾君が、今日はちょっぴり子供っぽく見えた。 意外な修吾君の一面が見れたような気がして、ちょっと嬉しかったりする。 |