*Love Fight ・・・・・恥ずかしい。 ・・・恥ずかしすぎる。 ホテルのラウンジで省吾さんの彼女を紹介されて、4人でテーブルを囲んで席に着く。 「・・・クスクス。そっか、それでさっき『結婚なんて早すぎるってぇ。』って言ったんだ。」 3人に一斉に笑われて、私一人真っ赤に頬を染め上げる。 そう、私の勘違い・・・もとい早とちり。 今日私が修吾君と一緒にこのホテルにやってきた本当の目的。 それは、1ヶ月後に結婚する省吾さんの彼女である遠山 亜理沙(とうやま ありさ)さんのウエディングドレスを選ぶ事。 それならそうとちゃんと前もって説明してくれたらいいのにぃ!! 修吾君が『ウエディングドレス選ぼう。』なんて微妙な言い方をするもんだから、てっきり私・・・。 あぁ、もう。穴があったら入りたい・・・いや、この際自分で掘っちゃう。 だから誰か上から蓋をしてください。 「やだぁ、もぉ。修吾君があんな言い方するからだよ?ぬぅ、恥ずかしいよぉ。」 「クスクス。別にいいじゃない。いずれはそうなるんだから、ね?予行練習だと思えば。」 「・・・修吾君。」 修吾君は優しく微笑むと、私の頭をヨシヨシ。と慰めるように撫でる。 「おいおいー。俺らよりらぶらぶになるなよ、なぁ?亜理沙。」 「クスクス。でも、すごく2人の雰囲気がいいから、羨ましくなっちゃう。」 「あ、そういう事言うのか、亜理沙。俺の愛情が足りませんかね?」 「もー、そういう意味で言ったんじゃないって。あなたからの愛情は沢山いただいてます。」 そう2人見つめ合って微笑み合う・・・・・ご馳走さまです。 省吾さんだって何だかんだいいながら、らぶらぶを見せ付けてくれちゃってるじゃないですか。 あぁ、でも本当に綺麗な人だなぁ。 私は省吾さんの隣に座る、華奢で繊細な存在に暫し見とれる。 トン。と押したら折れてしまいそうな程華奢な体。向こうが透けて見えそうな白い肌。 鼻筋がスッと通ってて、パッチリくっきりの二重瞼。穏やかに話すお上品な唇。長くて綺麗な髪は毛先に少しゆるくパーマがかかっていて、にこやかに微笑むその笑顔はすごく柔らかで。 どれをとっても『お嬢様』を髣髴させるその容姿。 そんな彼女に見とれない人はいないと思う。 亜理沙さんはこのホテルの近くにある大病院の医院長の一人娘なんだって。 でね、そこの大病院で働いているお医者様の省吾さん。 大学から一緒だったらしく2人はお互いに一目惚れ、3年の交際を経て来月めでたく結婚、となったそうなの。 まさしく美男美女。こんなに綺麗なカップルがいてもいいのだろうか。と思えるくらい、本当にお似合いのカップル。 2人を見てて、凄く羨ましくなってくる。 「美菜?どうしたの、ぼー。っとしちゃって。」 「えっ?あ、ううん。亜理沙さんてすごく綺麗だなぁーって思っちゃって。省吾さんと凄くお似合いですね。」 「ほんとー?すごく嬉しい。ありがとう、美菜ちゃん。」 そう言って嬉しそうにはにかむ亜理沙さん。 わぁ、可愛らしく笑うんだなぁ。私も将来亜理沙さんみたいな女性になりたいな・・・無理だろうけど。 そんな事を思いながら、テーブルに置かれた紅茶を手に取り口元へ運ぶ。 『・・・美菜の方が綺麗だよ。』 耳元から修吾君のそんな囁き声が届いて、思わず、ぶほぶほっ。とむせる。 「んぐっ・・しゅっ修吾君っ!なな何言ってるんですかっ!!」 「あれれ、美菜ちゃん顔が真っ赤だよ?修吾、お前何言ったんだ?」 「別に、何も?」 ね?と首を傾げて私を見る修吾君。 私は頭のてっぺんから煙が立つのを感じながら、真っ赤になって俯いちゃった。 そんな事あり得ないけど・・・修吾君に言われるとちょっと、いやカナリ嬉しい。 「――――わぁぁっ!すっごい沢山あるぅ!!」 今日のメインイベント・・・亜理沙さんのウエディングドレス選び。 私達4人は連れ立って衣装が置いてある部屋に向かい、あまりの数の多さに思わず私の口から言葉が洩れる。 「ほんとだー。ね、美菜ちゃんはどれがいいと思う?」 「ん〜と、亜理沙さんは華奢だし色が白いし・・・何でも似合いそう。あ!これなんかどうですか?」 「えー、どれどれ?きゃー。ほんとだぁ、可愛いね。」 「うんうん、可愛いー!!あ、あれは?」 「え、どれどれ?」 きゃっきゃっと浮かれ気分でドレスを選びはじめる女性陣。 それにため息を漏らしながら、苦笑を浮かべる男性陣。 やっぱりお前ら連れてきて正解だったわ。と後ろから省吾さんのぼやく声が聞こえた。 それに可愛らしく頬を少し膨らませて、亜理沙さんが後ろを振り向く。 「やだもぅ。省吾もちゃんと選んでよ。ねー、省吾はどっちがいいと思う?美菜ちゃんはこっちって言ってくれてるんだけど。私もどっちかって言うとこれかなぁ?」 「へえへえ、どれどれ?」 「もー、気のない返事ね。省吾は私のウエディングドレス姿、見たくないんですか?」 「見たいに決まってるだろ?でも、こういうの俺苦手なんだって。」 そうぼやきながらも、省吾さんの顔は始終にこやかで。 「何だかんだ言って、兄貴が一番ノリ気だったり。」 一生懸命亜理沙さんと一緒にドレスを選ぶ省吾さんを見ながら、修吾君がクスクスと笑う。 ほんと、そんな感じ。私も修吾君と一緒になってクスクス。と笑った。 「・・・亜理沙さんに似合いそうなドレス、ドレス。」 そう独り言のように呟きながら、色々ドレスを見て回っていると不意に自分の腰に誰かの腕がまわる。 「ひゃっ?!」 「美菜にはこういうふわっとしたドレスが似合いそうだね。」 「修吾君、びっびっくりしたぁ。ん、もぅ。今は亜理沙さんのドレス選んでるんだよ?」 「いいじゃない?亜理沙さんのは兄貴が一緒になって選んでんだから。美菜は?美菜はどういうドレス着たい?」 そう言いながら、修吾君は後ろから私を抱きしめてくる。 なっ?!しゅっ修吾君、こんなところで抱きしめないでくださいっ!! 真っ赤になって俯くと、こういう場所だから抱きしめてもいいの。って修吾君が耳元で囁いてくる。 ・・・・・そういう事でもない気が。 でも、私だったら・・・数あるドレスの中から一つを選び、そっと指差す。 「こっこういうの、可愛いかなぁ。」 「クスクス。うん、美菜っぽい。似合うだろうな。」 「そ・・・かな。」 「うん・・・早く美菜のウエディングドレス姿、見たいな。」 「・・・修吾君。」 顔だけを彼の方に向けて視線を合わせたところで、お〜い、修吾?と、ドレスの向こう側から省吾さんの呼ぶ声が聞こえてくる。 その声に、はいはい。と返事を返してから、軽く私の頬に唇を寄せてニッコリと微笑む。 「もうちょっとの辛抱だね。」 「・・・・・ん。」 修吾君に手を引かれながら、さっき選んだドレスを着て彼の隣に立つ自分の姿を想像して、一人密かに頬を染める。 |