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*Ｌｏｖｅ Ｆｉｇｈｔ 「美菜。ウエディングドレス、選びに行こう。」 何の前ぶれもなく、そう修吾君に告げられたのは、まだ肌寒さの残る新学期の初登校日の帰り道。 修吾君と高校最後の年も一緒のクラスで迎えられる事に喜んでいたのもつかの間、私は彼からの突然の言葉に暫く自分の中の時間が止まる。 ・・・・・何ですと？ ウっウエディングドレスぅ？？・・・え、はぃっ？どっどうして急に？ 頭が混乱する私の手を引いて、修吾君はどんどん何処かへ向かって歩き続ける。 ウエディングドレスって言う事は＝（イコール）結婚って事・・・だよね？ えっえっ？！ちょっちょと待って。そんな、急に・・・。 だってだって私達まだ高校生なんだよ？結婚だなんて早すぎる！！ 修吾君から『絶対結婚しようね。』とは何度もこれまでに言われてたけど・・・。 正式に決まった訳じゃないし、私の両親にだってまだ言ってない。 高校生活だってまだ後１年残ってる。高校生の学生結婚だなんて・・・ありえないよぉっ！！ 修吾君、あなた一体何を考えているんですか？ 私は頭の整理がつかないまま、あーでもないこーでもない。と、ぶつぶつ独り言を言いながら彼に手を引かれる。 「クスクス。美菜、さっきから何独り言をぶつぶつ言ってるの？」 「にゃっ？・・・だっだってぇ。しゅっ修吾君、ウエディングドレス選びって・・・本気なの？」 「ん？そうだよ。どんなのがあるか楽しみだね。」 そう言って楽しそうに・・いや、嬉しそうに？微笑む修吾君。 本気・・・・・マジっすか？ や〜ん、そんな事突然言われても・・・心の準備と言うものがですね、いるわけでですね・・・。 私が頬を赤く染めて彼の後をついて歩いていると、ここだな。と修吾君が声を漏らして立ち止まる。 「こっここ？」 私達の目の前に聳え立つ、立派でゴージャスなホテル。 私はそのホテルを見上げて、間抜けに口が大きく開く。 こっこんな所で結婚式をあげるの？ そんな・・・無理だよ。私、貯金そんなにないんだよ？ 毎月もらえるお小遣いに、毎年もらえるお年玉をちょこちょこと貯めてはあるけれど・・・こんな凄いホテルで結婚式を挙げれるようなお金なんて持ってない！！ 私はホテルの中に入って行こうとする修吾君の腕を必死で掴む。 「しゅっ修吾君！待って、待ってぇ！！」 「・・・・・美菜？」 「むっ無理だよぉ。こんな所で結婚式挙げれるほど、私お金持ってないよ？それに、私達まだ高校生なんだよ？結婚なんて早すぎるってぇ。」 「・・・・・え？」 ・・・・・・・・・・は？ 私の言葉を受けて、修吾君の首が俄かに傾きつられて私の首も傾く。 何？なにか私、変な事言いましたか？ 「――――やっと来たな修吾。遅いじゃないか。」 私達がホテルの前でお互いに向き合い、首を傾げあってると、ホテルの自動ドアが渋い声と共に開く。 その声に２人共が振り向き、修吾君が先に口を開く。 「・・・遅いって、今日は始業式があるっつたろ？そんな早くに来れるか。」 自動ドアの向こうから現れた男性・・・凛々しい顔立ちにスーツをさらっと綺麗に着こなし、修吾君よりも少し背が高くて、彼をもう少し大人にして渋さをプラスアルファしたようなその人物。 ・・・・・誰ですか？このカッチョいい方は。 私が暫くその男性に見入っていると、彼がこちらに向かってニッコリと微笑んでくる。 うわー。すごい爽やか。笑った顔が凄く綺麗・・・修吾君が大人になったらこんな男性になりそう。 そんな事を思いながら、ぎこちなく彼に微笑み返す。 「こちらの可愛い子が修吾の彼女か？はじめまして、いつも弟がお世話になってます。兄の省吾（しょうご）です。」 おっおっお兄さん？！こっこちらのカッコいい方が修吾君のお兄さん？ 確か修吾君のお兄さんて、歳が離れてて・・・えと、９つ上の２６歳。自立して一人暮らしをしてるって聞いてた、あのお兄さん？このお方が？？ わぁーっ！何て美形な兄弟なんだっ！！ 私は２人を交互に見ながら、あまりの驚きに声が上ずる。 「あっあの。はじめまして・・・私、戸田 美菜と申します。よっよろっ宜しくお願いしますっ！！」 ひゃー。私ったら声が上ずってるよぉ・・・うぅ、恥ずかしい。 「クスクス。美菜、声が大きいって。」 「だっだってぇ。緊張しちゃうんだもん。」 「クスクス。ほんと、可愛い子だね。お袋から話は聞いてたけど、修吾が惚れるのも分かるよ。あぁ、でもあの修吾がねぇ。女とは無縁だと思ってたけど・・・お前もちゃっかりしてんね？」 「うるせーよ。で、彼女は？」 「あぁ、中で待たせてる。美菜ちゃん？ごめんね、今日は。俺、こういうの苦手でさ。一人で待つのも退屈だし、女の子の意見もあった方がいいかと思って無理にお願いしちゃって。」 「・・・・・え？」 何の事を言ってるのか意味が分からずに首を傾げると、修吾言ってないのか？と、省吾さんが彼に向かってそう呟く。 「・・・・・あぁ、そういえば詳しい事何も言ってなかったかも。」 ・・・だから、何のお話？ 私は２人の会話が全く掴めずに、更に首が横に傾く。 「お前らしくないね。ま、詳しい事は中で話そうか。」 省吾さんは再びニッコリと笑ってホテルの中に先に入って行く。 ・・・に、しても。修吾君と省吾さん・・・名前がややこしい。 |