*Love Fight






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「本当に行くの?」

バイトを終えて、店まで行く途中俺と手を繋ぎ、少し後から歩く美菜が不安そうな声を出す。

「ちょっとだけね。大成にしっかり言っておかないと・・・後々鬱陶しいから。美菜は行きたく ない?」

「ん〜・・・どっちかって言うと。だって片桐君もだけど・・・祥子さんもいるんでしょ?」

「あぁ・・・。」

そっか、美菜にとっては祥子もネックか。

あの後から何もしてこないけれど・・・美菜にとってはやっぱり嫌な存在だよね。

「俺の傍にいたら大丈夫だから。大成と話したらすぐに帰ろう?」

「・・・うん。」

俺は美菜の手を強く握り、辿り着いた大成の待つ店の中に入る。

「おぉ!ご両人、やっと来たか!!」

店の奥から岡本が顔を出し、こっちこっちと手招きをする。

招かれるまま店の奥に足を運ぶと、自然と目が行く大成の姿。

タバコをふかしながら、よっ!と何食わぬ顔で俺に向かって手を上げる。

何が、よっ!だ。

一瞬目を細めてヤツを見据えてから空いた席に着こうとしたら、岡本から制止の声がかかる。

「修吾はあっちの席で、美菜ちゃんはこっちの席ね。」

「はっ?何でだよ。」

「大成の提案なんだけどさ、たまにはカップルが離れて座ってもいいんじゃねぇ?って事で。みんな カップルで来てるヤツも離れて座ってるんだよ。ま、一人身のヤツもいるわけだし、あんまり見せつ けられんのもね。だってさ。だから俺も女と離れて座らされてんの。」

・・・・・大成のヤロー。

「・・・俺、帰るわ。」

「んな、寂しいこと言うなよ。来たばっかじゃん。何だよ、そんなに美菜ちゃんと離れるのが嫌 なのか?もぉ、らぶらぶだなぁ。まま、そんな悲しい事言わずにさ。ちょっとだけ遊んで帰れよ。 いちゃいちゃすんのは帰ってから充分堪能すればいいじゃん。」

岡本に促され、俺も美菜もしぶしぶながら席に座る。

離れ際、絶対お酒は飲んじゃだめだよ。と美菜に忠告をして。

にしても・・・・・ちょっと待てよ。この席マズイだろ。

俺の座った隣の席には美菜が嫌がる祥子の姿。真正面の位置に座る、美菜の方に視線を向けると不安な 表情の美菜の隣りには俺を見てほくそえむ大成の姿。

ハメやがったな・・・。

すぐさま立ち上がろうとした所で、邪魔するように岡本が店員と共に酒のグラスを運び込む。

タイミングを失った俺は、暫くこの席に座る事になった。

直にこいつ等もビリヤードとかする為に、席を離れるだろう。

――――そう高を括ったのが間違いだった。



***** ***** ***** ***** *****




「じゃぁ、王様ゲームやろーぜ!!」

大成の一言で、酒もそこそこまわってきた連中により一気に場の雰囲気が盛り上がる。

・・・・・王様ゲームって。何を考えてるんだ、ヤツは。

俺の不安を余所に、大成の用意した番号の書かれた箸を有無無く引かされる。

一度目は岡本が王様となり、ヤツが指定した番号同士が一気飲みで対決するという指令を出す。

飲んでいる最中、さほど大成に構われていないのと、俺の横に座る祥子がちょっかいを出してこないせいか 美菜も楽しそうにゲームの様子を眺めている。

そんな事が繰り返され、何度目かに始まったゲーム。

「「「王様だ〜れだ?」」」

何人かの声が重なり、その中から、俺〜。と嬉しそうな声が聞こえる。

先っぽに赤い印の付いた箸を嬉しそうに振る大成の姿。

俺の不安がより一層濃くなる。

まさか、あいつ・・・美菜をどうにかしようって思ってるんじゃ。

そんな事を考えながら、美菜の方を見ていると横から祥子に、何番だった?と聞かれ、5番。と 素っ気無く答える。

「おぉ。大成、何指令出すんだ〜?」

「クスクス。えっとねぇ・・・じゃぁ3番とぉ、5番がチューするっ!!ってのはどうよ?」

その言葉に周りから、おぉぉ!!と歓喜のどよめきが起き、俺の視線が固まる。

・・・・・そうきたか。

「3番だ〜れだ?」

「あったしぃ〜♪」

嬉しそうな声で、隣りの祥子が箸を振る。

・・・・・は?

「じゃぁ5番は〜?」

その声に何も答えずにいると、祥子が、修吾君〜。と俺の腕を掴む。

冗談じゃない。全く持ってこんな事、ごめんだ。

「・・・やらねぇ。」

ボソッ。と呟き、箸をテーブルに投げる。

「な〜に、シケた事言っちゃってんの?ゲームじゃん。ちゅっ。て軽くやりゃぁいいんだよ。 減るもんじゃないんだしぃ・・・後で美菜に消毒でもしてもらえば?ちゅ〜って熱いやつをさ。」

「おまえっ!」

箸先を口に咥えながら見据えるように俺に視線を向けながら、大成の口元がニヤリと上がる。

大成の隣りでは、先程の笑顔とは一転して悲しそうな表情を見せる美菜の姿。

美菜の見てる前でそんな事――――その前に、美菜以外の唇が触れるなんて事考えられない。

たとえそれがゲームだとしても・・・。

周りの連中も酔いがまわってるせいか、この状況に然程ざわめく様子も無くどこかしら楽しんで いるようにも思える。

――――他人の揉め事、楽しいモノ・・・そんな感じに。

こいつら・・・いい性格してやがる。

「はやくやれってぇ〜。シラケっちまうだろ〜。」

「やらねぇって言ってんだろ。」

「クスクス。いいじゃない、修吾君がやらないなら私からしてあげる〜♪」

横から祥子の声が聞こえてきたかと思ったら、不意に頬に手を当てられ横を向かされる。

と、同時に急激に迫ってくる祥子の顔。

「っっ!!」

反射的に顔を避けると、祥子の唇が俺の頬を掠めて行った。

っぶねぇ・・・。

再び近づいてこようとする祥子の顔を体ごと自分から離そうと肩に手を置き、ぐいっ。と向こう 側へ押しやる。

「や〜ん。いいじゃないちょっとぐらい。ゲームなんだからぁ。」

「言い訳ねぇだろっ。何でお前とそんな事しなきゃなんないんだよ。」

「ゲームじゃない。」

「そんなにしたけりゃ他のヤツとやれば?」

素っ気無く答えると、俺に少し近づき声のトーンを落として囁く。

「私は修吾じゃなきゃ嫌なの。お願い・・・一度だけ。私に恥をかかせないでよ。」

「恥ぐらいかいて、頭冷やせ。俺は美菜としか・・・・・」

そう呟きながら、俺の真正面の位置に座っている筈の美菜の席に視線を向けて言葉が止まる。

・・・・・・美菜?

そこには空になった2つの席。

一つは美菜の席、もう一つは・・・・・!!

「美菜っ!?」

俺は祥子の体を突き放し、立ち上がると美菜の姿を探す為席を離れた。



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