*Love Fight






♡  3  ♡




「おっお母さん。きょっ今日、恵子の家に泊まりに行ってくる・・・ね。」

学校から帰って早々、夕飯の支度をしている母親に向かって小さく呟く。

あぁ。私ってばどうして堂々と言えないのかしら・・・これじゃぁモロバレ?

「・・・・・・下手くそ。」

「はっはい?」

「本当にこの子ってば嘘付くの下手くそだわね。まあそれだけ素直な子に育ってくれたって事 かしら・・・どうせね、長瀬君とお泊りしに行くんでしょ?」

「げっ!!」

思いっきしバレてますやんっ!!

じと目で私を見る母親に、真っ赤になりながら、うぅ。と唸っていると頬をうに。っと摘まれる。

「・・・・・いひゃい。」

「どうして正直に言わないかしらね、この子は。閻魔様に舌引っこ抜かれるわよ。」

「・・・・・ほめんひゃい。」

「長瀬君とお泊りかしら?」

「・・・ひゃい。」

母親は、まったく。と呟くと最後にぐっ。と指先に力を入れてから手を離す。

・・・・・いてぇよ。

私は摘まれた頬を擦りながら、行ってもいい?と窺いをたてる。

「いいわよ〜。長瀬君って子は最近の子にしては珍しく、直接美菜の携帯に電話するんじゃなくって ちゃんと家に電話してくるものね。電話の対応もちゃんとしてるし、しっかりしてそうだもの。 それに写真で見る限りじゃカッコイイものね〜。お母さんの好みの子だわ。」

ちょいとお母さん・・・お話があらぬ方向へ向かっておられませんか?

しかもいつの間に人の部屋に飾ってある写真を見たんだ。

うぬぅ。侮れない。

「ちゃんと今度家に連れて来なさいよ。お父さんも気にしてるんだから。自分よりもカッコイイ 子に娘を取られたって。」

いや、その解釈も大分とずれてる気が・・・。

「うん。修吾君が今日そう言ってたから・・・私に嘘を付かせるのは気が咎めるって言って。 挨拶しに来るって言ってた。今日はバイトだから来れないけど。」

「そうっ!やっぱりしっかりした子だわね。会うのが楽しみだわ〜。お母さん何着て会おうかしら。」

「おっお母さん!?」

「クスクス。だけどね、美菜。お泊りはいいけれど、自分をちゃんと護れなきゃだめよ?何かあった 時に泣かなきゃいけないのは女の方なんだから。」

「何かって?」

「間違って子供が出来たらって事でしょ?お泊りって事はそういう事もあるかもしれない訳なんだ から。ちゃんとしなさいよ、って事。分かった?」

「わっわわっ!!分かってますってば!!!」

私が真っ赤になって叫んでいると、どんどんと大きな足音を立てながら台所へとやってくる人の 気配。

うげっ。帰ってきやがった。

「たっだいま〜。お、何だよ美菜。真っ赤な顔してよぉ。」

一つ年下で私とは違う私立の高校に通っている弟の幸太郎が学校から帰って来た。

幸太郎は私の事を『お姉ちゃん』と呼ばずに『美菜』と呼び捨てで呼ぶ。

背も態度も私より大きくて生意気極まりない。

どうもコヤツは、私の事を姉だとは思っていないようで。

ふんだ。どうせね、ドジな私は姉の威厳なんてもの持ってませんよ〜だ。

「幸太郎、お帰り。美菜ってばね、今日彼氏とお泊りなんだってぇ。」

「ちょっちょちょちょっと!!お母さん!!!」

「うっげぇ!美菜と付き合ってくれるような奇特なヤツもいるんだ。めっずらし〜。」

「あのね・・・・・。」

どういう意味だそれは!!

クスクスっ。とおかしそうに笑う幸太郎を睨みながら、床に置いていた自分のカバンを肩にかける。

「それがねぇ、すっごいカッコイイ子なのよ〜。しかもしっかりしてるし。美菜には勿体無い。」

「マジで?あぁ。しっかりしてる分、美菜みたいにドジなヤツを見ると放っておけねぇんだろうな。 でもカッコイイんなら他の女が放っておかないだろうに・・・何で美菜を選んだんだろうね?」

「ね〜?お母さんもそう思っちゃう。」

あ・・・あんたら2人して。なんちゅう家族なんだ!!

私は、ふんっ。と身体を翻すと自分の部屋へと足を向ける。

階段を上がりかけた所で、後からついて出てきた幸太郎が、あ、そうだ。と思い出したように 私に話しかけてくる。

「美菜。今日お泊りならさぁ、彼氏とエッチするんだろ?ゴムやろっか?」

「・・・ごっゴム?!」

階段に足をかけた所で思わず踏み外して転げそうになるのを幸太郎が後ろから支える。

「っぶねぇな。ちゃんと下見て上がれよ。だからドジって言われんだぞ。」

「うぅ・・・・・面目ない。」

・・・って、何で弟に説教されなきゃなんないのよっ。

で、何?今ゴムとか言いましたか?・・・それって・・・。

「コンドーム。避妊具だよ。何、お前知らないの?」

「しっ知ってるわよっ!何であんたがそんなもの持ってんのっ!!」

「子供できたらマズイだろぉが。男として持ってんのは当たり前だろ?それにお前と違ってね、 俺はモテんの。だから必要不可欠なわけ。」

あ、そうですか。モテる事は否定しないわよ。実際何度も女の子からの電話を取り次いだ事だって ある訳だし・・・。

だからって姉に対して、ゴムやろうか?って言うかい?普通。

「いっいらないです〜っだ。」

「って、言うか・・・お前エッチできんの?」

「うぅぅうるちゃいっ!!そんなの幸太郎に関係ないでしょぉ〜。」

「クスクス。想像できねぇ・・・美菜のエッチしてる姿。」

「・・・・・想像してくれるな。」

真っ赤になって答える私の頭をポンポン。と軽く叩くとニヤリと笑う。

「まぁ、美菜も大人の女になったっつう訳か・・・全然変わんねぇけど。今度、美菜の男に 会わせろよ。俺が品定めしてやるから。」

そう言って顔を覗きこんでくる幸太郎に、どっちが年上なんだか分からなくなってくる。

・・・・・姉という威厳が・・・。

「そっそんな事してくれなくっても結構ですぅ。修吾君は他の男の子よりもずっとずっといい 男だもん。」

「へいへい。どうもご馳走様。で・・・ゴムいるんだっけ?」

「だからいらないってばぁぁ〜〜!!」

「ま。いる時はいつでも言えよ?あ、それと・・・。」

「まだ何か?」

ぶぅ。と頬を膨らましている私に対して、ぶははっ。と笑いながら、エッチの事で分かんなかった ら俺に聞いて。と言葉を残し自分の部屋へと入って行った。

「なっ!!」

なんでそんな事を弟に聞かにゃならんのだぁぁぁっ!!!



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