*Love Fight






♡  2  ♡




「うわぁ!かわいぃ〜。コレ、ハリセンボン?うふふっ。ぷくぷくぅ。」

「誰かさんそっくり。」

「・・・・・・・・・誰かさんって誰でしょうか。」

じとぉ。っとした目で見てくる美菜に思わず笑いがこみ上げてくる。

「クスクス。分かってんなら聞かないように。」

「やっ!私はこんな顔じゃありません〜・・・ぶぅっ。」

「うわっ!そっくり!!どっちがどっちか見分けがつかない。」

「・・・・・・・・。」

俺の顔を見ながら、ぷくっ。と頬を膨らませて睨んで見せる美菜の頬を軽くつねりながらクスクス。 と笑う。

ほんと、全然見飽きないね。コレは。

俺が笑いながら、ポンポンと頭を軽く叩くと更に顔を赤らめながら美菜の頬が膨らむ。

たまんない、可愛すぎて。

「ほらほら、そんな顔ばっかりしてるとほんとにハリセンボンになっちゃうよ?」

「もぅ。長瀬君ひどぉ〜い!!なりません〜。」

「あぁ〜。俺の彼女がハリセンボンになっちゃうよ。」

「だっだから・・・なりませんってぇ!!どっどこが似てる?」

きっと、コレ言ったら顔真っ赤になって言葉に詰まるんだろうな。

そう思いながら、美菜の耳元で囁いてみる。

『可愛いくっていつまでも見飽きないところ。』

「なっ!!」

思った通りの反応に思わず満足の笑みがこぼれる。

こうやって、からかって相手の反応を見て楽しんでるのって小学生レベルだよな。

いや、俺の場合はからかってるんじゃなくて本当の事を言ってるまでなんだけど・・・だけど、 俺の発する言葉に一つ一つ思い通りの反応を示してくれるのはやっぱりいい。

だから、ついつい弄りたくなってしまうのだけれど。

こういう辺り俺って意地悪?・・・いや、それは美菜だからと言う事で。

俺は真っ赤になって言葉に詰まる美菜の頭を軽く撫でると、次の場所へと移動した。



***** ***** ***** ***** *****




お次は・・・熱帯魚コーナーか。

って、誰もいないじゃん。熱帯魚ってそんな人気ないのか?

確かに位置的に入り組んだところに配置されてるから、素通りしてもおかしくはないのだけれど。

「あれ・・・誰もいないねぇ。」

美菜も少し驚いたように呟くと、色とりどりの魚が蠢く水槽に近寄り、わぁっ、綺麗。と顔を 近づける。

俺はきらきらした目で水槽を眺める美菜を後ろから抱きしめ、肩に顎を乗せる。

できればいつだって腕の中に閉じ込めておきたいんだから、誰もいないとなると自然とこうしたく なる訳で。

「わっ!なっ長瀬君!!」

「ん?何?」

「とっ突然・・・びっくりする・・・。」

「クスクス。誰もいないからいいんじゃない?」

真っ赤になって俯く美菜に笑ってみせると、彼女も、うん。と恥ずかしそうに呟きながら俺の手に 自分の手を添えてくる。

あぁ・・・何かずっとこうしてたい気分。

「これ、何ていう名前なのかなぁ?」

「ん〜?コレは・・・えっと『カクレクマノミ』だって。あれじゃない?あの、ディズニーの映画 のモデルになったやつ。」

「あぁ!えっと、何だっけ?私見てないから覚えてないや。」

可愛らしく首を傾げる美菜に、クスクス。と笑いながら「ニモじゃなかった?」と答えると、 おぉ!っと声を漏らして再び水槽に顔を寄せる。

「可愛い名前だよね。クスクス。ニモ〜〜っこっちおいでぇ。」

水槽に掌を当てながら、魚に向かってそう呟く美菜。

かわいい名前ね・・・・・そこでふとある事を思う。

そういえば俺、美菜から名前って呼ばれた事ないよな。

いつも俺を呼ぶ時は「長瀬君」という苗字。やっぱりこう『恋人』という形になった以上、 下の名前で呼んでもらいたくなる訳だけれど。

「そういえばさ、美菜はいつになったら俺の名前を呼んでくれるのかな?」

「へ?名前って・・・いつも呼んでるよ?」

「それは苗字でしょ?俺自身の名前。」

「うへっ!なっ名前ですか?」

「えらい反応・・・まさか俺の名前を覚えてない訳じゃないよね。忘れてたらお仕置きだけど?」

意地悪く美菜に頬を寄せながら囁くと、そんなぁ、と頬を染めて俯く彼女を見るのはやっぱり 悪くない。

こういう反応を楽しんでる辺り、やっぱり俺は意地悪な方なのかもしれないな。

恥ずかしがって頬を染めるのを分かっててやるんだから・・・・・。

「まさか、マジで忘れた?」

「そっそんな訳ないじゃない!あの・・・ちゃんと覚えてます。」

「じゃぁ言ってみてよ。」

「あぅ・・・しゅう・・・ご・・君?」

何故語尾が疑問符なのか、ツッコミたい所だけれど。それはまぁ・・・流すとしよう。

「もうそろそろ名前で呼んでほしいんだけどなぁ。」

「えぇぇぇ!!どっどうしちゃったの、急に?いっいきなりそんな事を言われてもですね・・・。」

「どうして?俺の名前を呼ぶの恥ずかしい?」

「あ〜〜うぅ〜・・うん。だってぇ・・ずっと長瀬君って呼んでたんだもん。」

「じゃぁ、昨日の記念として今日から俺のこと名前で呼んでよ。」

「・・・・・記念?」

不思議そうに語尾があがる美菜に、うん、そう記念。と呟いて抱きしめた腕に力を込める。

こういう記念日とかって、女の子の方が敏感だったりするんじゃないのか?

まぁ。そういう所が美菜らしい所ではあるんだけど。

昨日の記念って言ったら、ねぇ?あれでしょう。



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