*Love Fight 『俺が美菜のモノになった記念にね。』 「どわっ!うわっ!!そそそんなっ・・・・はっきりと。」 そう耳元で囁くと、途端に顔を真っ赤にして俺を見上げる美菜。 「ん?間違ってないでしょ?美菜は俺のモノに・・・俺は美菜のモノになったんだから。」 「うわぁっ・・・・。」 俺の言葉に目を白黒させながら戸惑う美菜の鼻先に自分の鼻を付けると、こそっと囁く。 「だからね、名前呼んで。」 「あの・・・そのっ・・・。」 「・・・・・呼ばないと、お仕置きする事にした。」 「やっ!わぁっ!!そっそんなぁ強制だぁ。」 「そ、強制・・・こうでもしなきゃ、いつまで経っても呼びそうにないもん。」 「おぅっ。」 ――――図星。そんな言葉が浮かんできそうな美菜の顔。 我ながらいい考えが浮かんだもんだ。 そんな意地の悪い自分に苦笑が漏れる。 今にも唇が付きそうな程近づいているお互いの顔。俺は視線を外さずに美菜を見つめる。 「ほらっ。早く呼ばないとキスしちゃうよ?」 「わわわっ!待って待って・・・あのっ呼びます!!・・・あっと・・・しっ修吾・・君。」 「クスクス。はい、よくできました。」 俺はそう言って微笑むと、美菜の柔らかい唇に自分の唇を重ねた。 ずるい!って聞こえてきそうな美菜の唇――――だけどね、頬を紅く染めて俺を上目遣いで 見上げる顔を見せる方がずるくない? そんな顔で見られたら、絶対止められる訳ないんだから。 俺は唇を離すと、一つ伏線を張っておく事にした。 ・・・・・後々の為にもね。 「それから、今後『長瀬君』って呼んだらそれもお仕置きね。」 「へっ・・・やぁっ・・・嫌だぁ。」 そんな非難めいた言葉が聞こえたけど気にしない。 だって彼女に呼ばれた自分の名前がとても心地よかったんだから。 俺は込み上げてくる笑みを堪えながら、美菜の手を引くとお土産コーナーへと向かった。 数々のぬいぐるみやグッズを前に美菜の顔から満面の笑みが漏れる。 やっぱり女の子だよね。こういうの好きそうだもんな、美菜。 「わぁっ。コレかわいい!・・・あっ!コレもかわいいぃぃ!!」 俺の手を離れた美菜は嬉しそうにあちらこちらと移動しながら、気に入った物を手に取っては 眺めてそれを棚に戻す。 「美菜、どれが欲しい?欲しいもの一つ買ってあげるよ。」 「そんなぁ・・・いいよぉ。悪いもん。」 「そんな遠慮しないでよ。俺が買ってあげたいんだからさ。」 「ん〜・・ありがとう。でもぉ・・・。」 「あっ。コレは?」 俺は傍らにあったぬいぐるみを取って美菜の前に差し出す。 「・・・・・・何でハリセンボン。」 「クスクス。おっと、美菜だと思って取っちゃった。」 「ぶぅっ。酷いよ、ながっ・・・うわっとと・・しっ修吾君。」 「ん〜?今、長瀬君って言いかけたかなぁ?」 「・・・・・・・えっと、あっち見てこようかな。」 「こらっ。逃げるな。」 そそくさと違う場所へと移動を始める美菜を捕まえて、ぽんっ。と頭を軽く叩くと、えへへ。と 可愛らしく笑う。 ま、今回はその笑顔に免じて見逃してやろうかな。 そんな事を思っていると、ふと美菜の視線が止まる。 「あ〜・・コレかわいい。」 彼女が見つめる視線の先――――携帯ストラップ? プラスチック製の細長い棒のような物で、色も豊富に取り揃えられている。 その中で美菜は淡いブルーの物を手に取った。 「これが欲しいの?」 「え?あ・・・うん。可愛くない?・・・しっ修吾君もお揃いのにしよう?」 ・・・・・これなら、別にここで買わなくても。 そうは思っても、最後に聞こえた「お揃いのにしよう?」って言葉に反応してしまった。 お揃いか・・・・・悪くないかも。 「じゃぁ、コレで決定でいい?」 俺は同じ色の物を2つ手に取ると、美菜に向かって微笑む。 「あっ!しっ修吾君のは、私が買ってあげたい。」 「へ?それじゃぁ、あまり意味がない気が・・・・・。」 「ん〜。ダメ?」 「いや、ダメじゃないけど・・・・・。」 俺の分を美菜が買って美菜の分を俺が買って・・・結局自分で買ってるのと同じじゃないか? そう思った所で、俺の分であるストラップを嬉しそうに握り締めてレジに向かう美菜を見ると、 別にそれでもいいか。と思えてくる。 俺も美菜の分であるストラップを持ってレジを済ますと、近くのベンチに腰を下ろしお互いの 買った物を交換し早速携帯に取り付けてみる。 「わぁっ!かわいいぃ、ね?・・・ありがとう、修吾君。」 「クスクス、いえいえ。うん、かわいい。俺も、ありがとう。」 携帯を高く掲げて嬉しそうに微笑む美菜の横顔を見て、思わず笑みが漏れる。 意味が無いようでも、この笑顔が見れるなら・・・そこにちゃんと意味が出てくるよね。 「じゃぁ、そろそろ帰ろうか。」 俺は美菜とお揃いのストラップが付いた携帯をポケットにしまうと、立ち上がった。 「わぁっ。待って待って、修吾君!!」 「ほら。早くしないと置いてっちゃうよ?」 結局の所、最後は俺の方が美菜に負けてる気がする。 あの笑顔を見せられれば何も言えなくなってしまうのだから・・・・・。 俺は自分の名前を呼びながら、駆け寄ってくる美菜に微笑んで見せると、そっと手を差し出した。 + + Fin + +
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