*Love Fight






♡  4  ♡




――――・・うあぁぁぁ。遂に来てしまった彼の部屋。

・・・って、すっごい綺麗に掃除されておられる。私の部屋とは大違いだわ。

長瀬君より先に部屋に入った私は恐る恐る中に進み、辺りを見回す――――なんか、こそ泥になった気分。

自分の行動に苦笑を漏らしながら、ふとパソコンデスクの上の写真立てに目が止まる。

「あ・・・これ。」

この前遊園地に行った時に初めて2人だけで撮った写真。嬉しくって私も写真立てに入れて飾って ある・・・長瀬君も飾ってくれてるんだぁ。

そう思うと自然と顔から笑みが漏れてくる。

「――――どうしたの?ニヤニヤした顔しちゃって。」

ジュースを手に持った長瀬君が、ガラステーブルに置きながら呟く。

「あ・・あの、この写真長瀬君も飾ってくれてるんだって思って・・・。」

「うん。俺のお気に入りの写真・・・って言っても数が少ないからね。これからもっと一緒に 写真撮ろうね。」

「うんうん!撮りたい!!」

満面の笑みで答える私に、クス。っと笑いながら、美菜おいで。とベッドを背に床に座りながら 手を差し出す。

途端に真っ赤になる顔で長瀬君に近づき手を取ると、引き寄せられて私の体が長瀬君の足の間に 納まる。

「ね、携帯で撮ろっか。待ち受けにしたいし・・・。」

「えっ・・・あ・・うん。あっ!私の携帯でも撮りたい!!」

「ん。じゃ、変わりばんこね。」

「うん!!」

長瀬君は携帯を開きカメラモードに切り替えると、私達の目の前に合わせる。小さなディスプレイ から映し出される2人の顔。

どわぁぁっ。かっ顔が引っ付いてる!!くっついてる!!近すぎるぅ!!!

ドキドキしてる癖にちゃっかり笑顔を作ってる私・・・・・。

はい、ポーズ。と声がして「ティラリ〜ン」というシャッター音が聞こえる。

「クスクス。美菜、顔真っ赤。」

「うわっ!ほんとだ。やだぁっ。もっもう一回撮りなおそう?」

「だ〜め。この美菜かわいいからこれにする。」

「えぇ〜!やだやだぁ。顔真っ赤だもん!!」

「いいの。ほらっ今度は美菜の分でしょ?」

「ぶぅっ。」

何だか腑に落ちないまま、自分の携帯を取り出すと同じようにカメラモードに切り替えて腕を伸ばす。

「じゃぁ、いきま〜す。はい、チー・・・ずっぇ!!」

カシャッ。と言う音と共に私の顔が更に真っ赤に変化する。

だってだって・・・・・。

クスクス笑う長瀬君を尻目に真っ赤な顔のまま今撮られたであろう画面を確認する。

うぎゃぁぁ!バッチシ、くっきり映ってるぅ!!!

「美菜の待ちうけ画面は、これね。」

と、画面を見て固まってる私から携帯を取るとカチカチっと操作をして待ち受けに登録してしまった。

・・・あのですね、私はみんなの前で携帯をかける時どうすればいいんですかぁ!!

こんな・・チュウしてる待ちうけなんてぇ!!!



***** ***** ***** ***** *****




暫く長瀬君の足の間でテレビを見ていると、そろそろお風呂に入っておいで。と長瀬君が呟く。

ふと時計を見ると時刻はもう10時を指している。

「あっ・・うん。私が先にいただいちゃってもいいの?」

「うん、どうぞ。さっきお湯をはっておいたから。」

「じゃっじゃぁ・・・お先にいただきます。」

私は立ち上がり、持ってきた荷物の中から下着の入った袋などを取り出す――――あれ?

おかしいな、ちゃんと入れた筈なのに・・・・・パジャマがない!?

あ!そうだっ。洗いあがったやつを入れようと思って後回しにしたから忘れたんだ!!

・・・・・何たる不覚。

私はもじもじと俯きながら長瀬君の方を見て呟く。

「あ・・・あのぉ・・・パジャマをですね・・・貸していただけないでしょうか。」

「忘れたの?」

「・・・・・の、ようです。」

「う〜ん、パジャマねぇ。あったかなぁ?・・・俺Tシャツとジャージで寝てるからなぁ。」

「あの、何でもいいです・・・。」

あぁ。何で私ってこんな抜けてるのかしら。自分が自分で情けないわよ。

ゴソゴソと引き出しの中を探ってた長瀬君が大きめのTシャツと短パンを取り出すと、これでいい? と差し出してきた。

で・・でかっ!!Tシャツだけでいけそうだよ。

「それ、俺が中学ん時に履いてた短パン。小さめだから大丈夫かな。Tシャツは今も着てるから 美菜には少し大きいかもしれないね。」

「うっうん。これで十分です・・・ありがとう。」

「クスッ。美菜のパジャマ姿も楽しみにしてたんだけど?」

「どわっ!なっ長瀬君、なな何て事を言うの!?」

「ま、合宿の時に見てるからいいか。」

クスクス笑いながら私の手を引くと、階段を降り洗面所へと案内をしてくれる。

「シャンプーとかリンスはこれね。ボディーソープはそっち。体洗うタオルはこれでいいかな?」

「あっうん。これで十分です。」

「お湯がぬるかったら、そこのボタンで追い炊きしてくれたらいいからね。」

「りょっ了解しましたです。」

バスタオルはここに置いておくね。と微笑み、一旦洗面所を出ようとしてから再び私の方に向き直る。

「・・・・・?長瀬君・・・どうしたの・・ぁっ!!」

――――突然塞がれた唇。私の目が驚いて丸くなる。

私の唇を彼の舌が這い、少し開くとそこから中に入ってくる。

途端に真っ白になる私の頭の中。

彼の舌と絡み合う度、体の芯が熱くなっていく気がする。

長瀬君はゆっくりと唇を離すと、美菜とキスしたくなった。って微笑んでからドアの外へ姿を消した。

取り残された私――――しばらく動く事も考える事もできなくって、その場に立ち尽くす。



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