*Love Fight 私達は肩を並べてキッチンに立つと、夕飯の支度をし始めた。 わぁ。何だかこうしてると、新婚さんみたいだ・・・。 そんな事を考えると自然と顔から笑みが漏れる。 「クスクス。美菜、何考えてるの?」 長瀬君が皮の剥けた玉葱を私に手渡しながら微笑む。 「へっ?・・・な何でもない・・・。」 「ふ〜ん、そう?何だかすごく楽しそうだけど?」 ザクッ。と玉葱に包丁を入れる私の横顔を見ながら、そう呟く。 「だっだって、楽しいもん。私の作った料理を長瀬君が食べてくれるから・・・。」 そう言うと、俺はすごく嬉しい。って耳元で囁くと、後ろからきゅっ。て抱きしめてくる。 「きゃっ?!・・危なっ・・いっいてっ!!」 急に抱きついてきた彼にびっくりして、包丁の操作を誤り指を少し切っちゃった。 長瀬君、突然抱きついてくれるのは嬉しいんですが・・・痛いじゃない。 人差し指を見ると薄っすらと血がにじみ出てくる。 「うわっ!ごめん、美菜。血が出てきてる!!」 「大丈夫だよ、これくらい。すぐに止ま・・・ぇ!?」 私が何でもないよという風に手を振ろうとしたら、パクっ。と長瀬君が私の指を銜えて舐める。 うわぁぁぁ。なんか・・・すごくヤラシイぞ? ・・・・・・・・何を考えてるんだ、私は。真っ赤な顔でその様子を眺めていると、彼は徐に 口から指を抜くと 「痛い痛いの飛んでけ〜。」 と、小さく呟く。 「・・・・・・・・・・。」 イタイイタイノトンデイケ・・・? ――――ちょっと待った。私はそこいらの幼稚園児ですか? 「あのぉ・・・長瀬君、私は子供じゃないんだからぁ。」 「クスクス。なんか美菜を見てたらそう言いたくなった。」 「うぅ・・・・・。」 長瀬君はおかしそうに笑いながら、一旦離れると暫くしてからまた戻って来て私の指にバンドエイド を巻く。 「――・・はい。治療完了。」 と言って、ポンポンと頭を軽く叩くとニコッと笑う彼。 「・・・どっどうもありがとう。」 真っ赤な顔で俯く私・・・・・・なんだかなぁ。 「うわっ。すっごいウマイ!!」 「ほんとぉ?えへへ、すっごく嬉しい。」 ハンバーグを頬張る長瀬君を見ながら私の顔が笑顔になる。 よかったぁ。美味しいって言ってもらえて。作ったカイがあったよ、うん。 「マジうまい。お!中にチーズが入ってる・・・うちのお袋でもこんなウマイの作れないよ。」 「よかったぁ。ハンバーグはちょっと自信があるんだぁ。」 「うん。自信があるって言うだけあるよ。これなら毎日食べられそう。」 「クスクス。そんなの毎日食べたら栄養が偏っちゃうよ?」 「それもそうだね。」 2人して顔を見合わせると、クスクスッ。と笑い合う。 あぁ。何かいいなぁ、こういう雰囲気・・・・・大好きな彼が私の作った料理を「おいしい。」 と言って食べてくれる。こういう気持ちを幸せって言うんだよね。 綺麗に無くなったお皿の上。それを見て更に満足感が私を覆う。 食べ終わった物をシンクに運び、ふんふん。と鼻歌を歌いながら洗っていると、不意に後ろから 抱きしめられる。 「わっ!なっ長瀬君・・・びっくりしたぁ。」 「美菜の鼻歌初めて聴いた。何か歌ってみてよ。」 長瀬君は抱きしめたまま私の肩に顎を乗せる。 「えっ!えぇぇ。歌ぁ?下手くそだよ・・・私。」 「下手でもいいよ?美菜の歌声が聞きたい。」 「うぅ・・・。」 歌ねぇ・・・恵子とカラオケには良く行くし、歌うのは好きなんだけど・・・長瀬君の前で歌うの? しかもアカペラっすか?? ん〜〜〜・・そうだなぁ。何を歌おうかなぁ。私は一頻り考え込んでから徐に口を開く。 『このまま一緒にいようよ ずっと二人で一緒にいよう あたしのパワー全てあげるわ 誰にも負けないパワーをあなたに――――・・・』 私の歌に聞き入るように、長瀬君は肩に乗せている顎の位置を変える。彼の温もりを背中で感じながら 私も歌い続ける。 『あなたといるとね”はじめて”多くて 体の中から”ワクワク”生まれるの きっと「出来るよ!」って背中叩かれたら 超能力だって間違いなしね このまま一緒にいようよ ずっと二人で一緒にいよう あなたが好き 好き 好き 大好き Power全開――――・・・ 』 「・・・aikoの『Power of Love』だったっけ?その歌。」 「うん。私の好きな曲なんだ・・・えへっ。下手くそだったでしょ?」 「ううん。綺麗な声でびっくりした。」 「ありがとう・・・。」 私は少し恥ずかしくって俯いちゃった。考えたらすごい詩よね・・・「好き」を連発してるし。 でもこの詩って今の私の気持ちみたいだ・・・。 「俺も今、そういう気持ち。」 「え・・・?」 私の思った事と長瀬君の言葉が重なって一瞬意味がわからず、首を傾げながら長瀬君の方に顔を向ける。 彼は、「美菜の事大好きだから、ずっと二人で一緒にいようね。」と囁くと私の唇にそっと キスをしてくれた。 ――――優しくて長いキス。 ほんと、詩の通り。長瀬君といると初めての事ばっかりで、ドキドキもするけれどワクワクだって する。長瀬君に言われたら超能力だって使えちゃうかも?!・・・な、訳ないか。 だけどね、ずっとずっと長瀬君と一緒にいたい。 ――――大好きだからずっとずっと傍にいてね。 |