*Love Fight






♡  3  ♡




私達は肩を並べてキッチンに立つと、夕飯の支度をし始めた。

わぁ。何だかこうしてると、新婚さんみたいだ・・・。

そんな事を考えると自然と顔から笑みが漏れる。

「クスクス。美菜、何考えてるの?」

長瀬君が皮の剥けた玉葱を私に手渡しながら微笑む。

「へっ?・・・な何でもない・・・。」

「ふ〜ん、そう?何だかすごく楽しそうだけど?」

ザクッ。と玉葱に包丁を入れる私の横顔を見ながら、そう呟く。

「だっだって、楽しいもん。私の作った料理を長瀬君が食べてくれるから・・・。」

そう言うと、俺はすごく嬉しい。って耳元で囁くと、後ろからきゅっ。て抱きしめてくる。

「きゃっ?!・・危なっ・・いっいてっ!!」

急に抱きついてきた彼にびっくりして、包丁の操作を誤り指を少し切っちゃった。

長瀬君、突然抱きついてくれるのは嬉しいんですが・・・痛いじゃない。

人差し指を見ると薄っすらと血がにじみ出てくる。

「うわっ!ごめん、美菜。血が出てきてる!!」

「大丈夫だよ、これくらい。すぐに止ま・・・ぇ!?」

私が何でもないよという風に手を振ろうとしたら、パクっ。と長瀬君が私の指を銜えて舐める。

うわぁぁぁ。なんか・・・すごくヤラシイぞ?

・・・・・・・・何を考えてるんだ、私は。真っ赤な顔でその様子を眺めていると、彼は徐に 口から指を抜くと

「痛い痛いの飛んでけ〜。」

と、小さく呟く。

「・・・・・・・・・・。」

イタイイタイノトンデイケ・・・?

――――ちょっと待った。私はそこいらの幼稚園児ですか?

「あのぉ・・・長瀬君、私は子供じゃないんだからぁ。」

「クスクス。なんか美菜を見てたらそう言いたくなった。」

「うぅ・・・・・。」

長瀬君はおかしそうに笑いながら、一旦離れると暫くしてからまた戻って来て私の指にバンドエイド を巻く。

「――・・はい。治療完了。」

と言って、ポンポンと頭を軽く叩くとニコッと笑う彼。

「・・・どっどうもありがとう。」

真っ赤な顔で俯く私・・・・・・なんだかなぁ。



***** ***** ***** ***** *****




「うわっ。すっごいウマイ!!」

「ほんとぉ?えへへ、すっごく嬉しい。」

ハンバーグを頬張る長瀬君を見ながら私の顔が笑顔になる。

よかったぁ。美味しいって言ってもらえて。作ったカイがあったよ、うん。

「マジうまい。お!中にチーズが入ってる・・・うちのお袋でもこんなウマイの作れないよ。」

「よかったぁ。ハンバーグはちょっと自信があるんだぁ。」

「うん。自信があるって言うだけあるよ。これなら毎日食べられそう。」

「クスクス。そんなの毎日食べたら栄養が偏っちゃうよ?」

「それもそうだね。」

2人して顔を見合わせると、クスクスッ。と笑い合う。

あぁ。何かいいなぁ、こういう雰囲気・・・・・大好きな彼が私の作った料理を「おいしい。」 と言って食べてくれる。こういう気持ちを幸せって言うんだよね。

綺麗に無くなったお皿の上。それを見て更に満足感が私を覆う。

食べ終わった物をシンクに運び、ふんふん。と鼻歌を歌いながら洗っていると、不意に後ろから 抱きしめられる。

「わっ!なっ長瀬君・・・びっくりしたぁ。」

「美菜の鼻歌初めて聴いた。何か歌ってみてよ。」

長瀬君は抱きしめたまま私の肩に顎を乗せる。

「えっ!えぇぇ。歌ぁ?下手くそだよ・・・私。」

「下手でもいいよ?美菜の歌声が聞きたい。」

「うぅ・・・。」

歌ねぇ・・・恵子とカラオケには良く行くし、歌うのは好きなんだけど・・・長瀬君の前で歌うの? しかもアカペラっすか??

ん〜〜〜・・そうだなぁ。何を歌おうかなぁ。私は一頻り考え込んでから徐に口を開く。

『このまま一緒にいようよ ずっと二人で一緒にいよう
 あたしのパワー全てあげるわ 誰にも負けないパワーをあなたに――――・・・』

私の歌に聞き入るように、長瀬君は肩に乗せている顎の位置を変える。彼の温もりを背中で感じながら 私も歌い続ける。

『あなたといるとね”はじめて”多くて 体の中から”ワクワク”生まれるの
 きっと「出来るよ!」って背中叩かれたら 超能力だって間違いなしね
 このまま一緒にいようよ ずっと二人で一緒にいよう
 あなたが好き 好き 好き 大好き Power全開――――・・・ 』

「・・・aikoの『Power of Love』だったっけ?その歌。」

「うん。私の好きな曲なんだ・・・えへっ。下手くそだったでしょ?」

「ううん。綺麗な声でびっくりした。」

「ありがとう・・・。」

私は少し恥ずかしくって俯いちゃった。考えたらすごい詩よね・・・「好き」を連発してるし。

でもこの詩って今の私の気持ちみたいだ・・・。

「俺も今、そういう気持ち。」

「え・・・?」

私の思った事と長瀬君の言葉が重なって一瞬意味がわからず、首を傾げながら長瀬君の方に顔を向ける。

彼は、「美菜の事大好きだから、ずっと二人で一緒にいようね。」と囁くと私の唇にそっと キスをしてくれた。

――――優しくて長いキス。

ほんと、詩の通り。長瀬君といると初めての事ばっかりで、ドキドキもするけれどワクワクだって する。長瀬君に言われたら超能力だって使えちゃうかも?!・・・な、訳ないか。

だけどね、ずっとずっと長瀬君と一緒にいたい。

――――大好きだからずっとずっと傍にいてね。



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