*Love Fight






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私はホールに響くみんなの笑い声に何だか耐えられなくて、こっそりと店の外に足を向けた。

お店に入る時に横に小さな公園があったのを思い出してそこまで重い足取りでたどり着くと、ブランコに 腰掛ける。

はぁぁ。何か・・・苦しいよぉ。長瀬君を好きなだけじゃダメなの?こんな心配をしなくちゃいけないなんて。 それならまだ片思いで騒いでる方が楽だったかもしれない。

人の気持ちに確信なんて持てないもん。今、長瀬君は私の事を好きって言ってくれてるけど今後どうなる かなんて分からないんだし・・・・・あぁ、もうやだやだっ!!

こんなにウジウジ考えるの好きくない!好きじゃないけど、どんどん湧き上がってくる不安な気持ち。 どうしたらいい?どうしたら拭える??・・・ねぇ、長瀬君。

私は、えいっと勢いよくブランコをこごうとして足を浮かせると、何故か片方だけが固定されてその場で 傾いたままぶらんぶらんと揺れる。

「・・・・・はれ??」

「何やってんの、こんな所で。探したでしょ?」

「わっ!わぁっ!!なっ長瀬君!?」

ふと横を見上げるとブランコの鎖をしっかりと持っている長瀬君の姿。

うぇぇっ。何でいるの!?今、長瀬君見ると泣いちゃいそうだから見たくなかったのにぃ。

私は目頭が熱くなってくるのを抑えつつ、彼から目を逸らし俯く。

どうした?って心配そうに呟きながら前にやってきて、ブランコに座る私の膝を挟むようにしゃがみ込む。

「べ・・・別に何もないよ?」

「何もないなら、どうして俺の顔を見ない?」

「それは・・・」

「それは?」

「・・・・・何でもないです。」

美菜?って呟きながら私の顎に手を当てると、自分の方に顔を向けさせる。

だぁぁぁっ。やめてぇ。そんな事したらバレちゃうよ・・・・・・

「っ!?何で泣いてるんだよ。さっき祥子と話してたみたいだけど・・・何かあっ・・。」

「やだぁ。その人の名前呼び捨てで呼ばないでぇ・・・。」

「美菜?」

「ふえっ・・・。」

急激に込み上げてくるせつない思い――――・・止める事ができない。

私は泣き顔を見られたくなくて、長瀬君の首にしがみつくと声を殺して泣いた。

そんな姿に戸惑いながら、彼は私の体に腕をまわして頭を優しく撫でてくれる。

「何か言われた?」

「・・・・・離れてっ・・・っかないで。祥子さんの所に行っちゃ・・・やだぁ。」

「美菜、何言ってるの?何で俺があいつの所に行くんだよ。俺は美菜の傍にいるだろ?」

「奪われっ・・ちゃうもん・・・私っ・・子供だからっ・・・祥子さんにっ・・・うぅっ。」

私の言葉がしゃくりあがってうまく話せない。

抑えようとしても一旦流れ出してしまったものは中々止まってくれなくて。

「ちょっちょっと待てって。話が掴めない。奪われるって?誰が?」

「長瀬っ・・・君。」

「はぁ?俺が?何で俺があいつに奪われんの?」

「だってぇ・・・祥子さんが、私はお子様だから長瀬君とは不釣合いだから自分が奪うって・・・。」

「はぁ・・・訳わかんねぇ。不釣合いだなんて誰が決める?当人同士が好きあってたらそれでいいでしょ? 俺は美菜と不釣合いだなんて思ってもないし、他の誰かに奪われるつもりもないけど?」

長瀬君は私をなだめるように、ポンポンと頭を軽く叩く。

「長瀬君はっ・・私と面白がって付き合ってるって。私とはめずらしいからだって。私は女として見られてなっ・・・」

ぐいっと顔を離されて、目の前に真剣な眼差しの長瀬君が映る。

「美菜。それ以上言うと怒るよ。何であいつの言う事を信じる?俺がいつ面白がった?めずらしい なんて言った?女として見てないって?・・・ざけんなよ。美菜の事を大切に思ってるから、少しずつ でいいから前に進もうって思ってるんだろ。ずっと1年から想い続けてきた俺の気持ちをそんな軽い 言葉で片付けんな。」

「ふえっ。ごめんな・・さい。だって・・・すごく不安なんだもん。祥子さんすっごく綺麗だし・・・ そんな人に迫られたらっ・・・行っちゃうってっ思っ・・ぅっ。」

「バーカ。俺はああいう女は大っ嫌いなの。高校生の癖に化粧して、大人ぶって。興味も出やしない。 ついでに言うと、性格悪いし気が強い所も嫌い。興味があるのは美菜だけ。分かってる?」

「ばかって・・・バカって言うぅ。ふぁ〜んっ!」

「ほんと、美菜の大バカ者。」

「大までつけるぅっ。ひどいよぉっ!ほんとにほんとに不安なんだもん。うぅっ。」

私は長瀬君の目の前にもかかわらず、大泣きをしてしまった。

とめどなく溢れる涙。どうやったって止まってくれない。

そんな姿に困ったような表情を浮かべると、長瀬君は私の鼻をきゅっと摘む。

「ふがっ!!はっはにふるふへすか!?」

「ほらっ。もう泣き止む。かわいい顔が台無しだよ?・・・不安になんてならなくていいから。」

私の鼻から手を離すと、笑ってそう呟く。

「長瀬君・・・。」

俺の気持ちは絶対変わらないから。そう言って私の頬を両手で挟むと涙で濡れた瞼を拭ってから 唇を重ねてきた。

長瀬君の気持ちが伝わってくるような、長く優しいキス。

今までの不安な気持ちが嘘のようにかき消されて、私の心が安心感で満たされる。

「不安は解消された?」

唇を離すと、彼は微笑み私の顔を覗き見る。

「ん・・・少し。」

「少しね。・・・じゃぁ・・・・。」

彼は私の目を見て、「不安にならないようにおまじないをしてあげる。」そう言って 少し意地悪そうな笑みを浮かべた。

・・・・・・何でしょう。その笑みの意味は。

私が首を傾げてると、長瀬君は私の肩を引き寄せたかと思ったら首筋に唇を落とした。

「へっ!?ひゃっ。なっ長瀬君。なな何してるの?」

チクッと小さな刺激が首にしたかと思ったら徐に顔を上げて、おまじない完了。と言ってにこっと笑う。

「なっ何したの?」

「ん?内緒。」

「やっ。なっ何々??教えてぇ。」

「いいの。おまじないだから。これでまた一歩俺のモノに近づいたね。」

そう言って嬉しそうに笑ってくれるけど・・・何?何が起こったの?私の首筋に。

分からないよぉ。教えてよっ長瀬君!!

困惑している私の手を引き、クスクスっと笑いながら長瀬君は、ほら、戻るよ。と言って店に足を向ける。


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