*Love Fight






  3 




「「「かんぱ〜い!!!」」」

みんなが一斉にグラスを持ち、カチャカチャっと合わせてから口をつける。

とりあえず一旦落ち着いたところで、それぞれが雑談に入っていく。

私も渡されたグラスにちょこっと口を付けてみる。

・・・・・甘苦い。

おぉぅ。オレンジジュースじゃないぞ、コレ!?これってもしかして――――お酒?

――――・・・でも、嫌いじゃないかも。この味。

「ぶほっ。美菜、何飲んでるんだよ。」

今まで岡本君と話していた長瀬君が、私を見ると飲みかけの物をこぼしそうになりながら呟く。

「・・・何でしょう。」

「これ”カンパリオレンジ”ってお酒だよ?美菜飲めるの?」

「うへっ・・・やっぱり?恵子から渡されたんだけど・・・オレンジジュースにしては苦いかなぁ・・・と。」

「当たり前だろ?あぁもう、ジュース頼んであげるから・・・」

「もうっ長瀬、過保護すぎだってぇ。美菜にも社会勉強させないとダメよ。」

私の隣りに座っている恵子が長瀬君を阻止して私に飲むように促す。

社会勉強って・・・私はそんなにお子様なんでしょうか。

「そうだぞ修吾。美菜ちゃんがお酒飲んだらどうなるか知っておかねぇと他で飲まれた時困るぞぉ。 酔っちゃって絡んだり?抱きついたり??お前がそれでいいならいいけどよぉ。」

「直人、お前ねぇ。ったく、他では絶対に飲ませないっつうの。」

「はいはい。長瀬の美菜に対しての異様な態度は重々承知なんだから。今日はいいでしょ?あんたも 一緒なんだからさぁ。ね、美菜も飲みたいでしょ?」

「あ〜う・・・うん。嫌いじゃない味だから・・・あの、飲んでもいい?」

私は窺うように長瀬君を見上げると、はぁ。とため息をついて、一杯だけだよ。とポンポンと頭を叩く。

もう一度グラスに口を付けると、今度はコクコクっと飲んでみた。

どわぁ。何か喉が熱い気がするぅ・・・コレがお酒の味なんだぁ。

お腹のあたりまで熱い感じがしてきて体全体が、ぽわっとなってくる。

酔っちゃうのかな・・・私。

「美菜ちゃ〜ん、酔っちゃったらお兄さんに抱きついていいからねぇ。」

「わわわっ、柊君何言ってるんですか。だだ大丈夫です。」

「直人、余計な事を言うんじゃねぇっての。」

「じゃぁ、お姉さんならいいのねぇ。美菜、私に抱きつきなさい。」

「何だよ俺も混ぜろって。美菜ちゃん、岡本兄さんの所でもいいよぉ。」

うわぁぁっ。みんな何を言ってるのよぉ。何で私の周りはみんなこんなんなのぉ?!

むぅっ――――こういう時は・・・

「あっあの。私、お手洗いに行ってきます。」

この手に限る!!今回は山奥じゃないから迷子になんてならないもんね。

恵子からトイレはあっちの奥の曲がった所の細い道に入った突き当たりにあるから、と教えてもらい、 私は復唱しながら立ち上がると、2・3歩足を進めた。

あっあれ?・・・真っ直ぐ歩いてるつもりなのに・・・勝手に体が倒れて行くよ?

「ひゃぁっ!?」

かろうじて傍にあった柱に掴まると、そのままズルズルっと床に座り込んでしまった。

「うわっ!美菜どうしたんだよ。」

急に座り込んだ私に驚いて、長瀬君がすばやく寄ってきてくれる。

後ろでも恵子達が、大丈夫?とか、もう酔っちゃったぁ?と声をかけてくれるんだけど、 なんか・・・みなさん面白がってません?微か〜に、かわい〜とかって笑う声も聞こえる 気がするんですが・・・・・。

「あの・・・真っ直ぐ歩いてるつもりなのに、体が勝手に倒れていっちゃうんだもん。」

「美菜、もしかして酔った?」

「へ?・・・これって酔ってるの?何かふわふわした感じはするけど・・・・・。」

「はぁ。それって酔ってるって言うの。やっぱり飲ませるんじゃなかった。もう飲んじゃダメだよ?」

「だってまだ半分くらいしか飲んでなっ・・・・・。」

美菜!と長瀬君は少し睨みながら私を抱き起こしてくれる。

うっ・・・まるでお父さんみたいだ。と思いながら私は、はい。と俯いた。

「ほら、トイレ行くよ?」

「もっもぅ一人で大丈夫だよぉ。」

「な訳ないだろ?今も転びそうになった癖に。」

「むぅ。それは突然クラッとなっちゃっただけで・・・もう一人で行けるよ?」

「ダメ。ほら行くよ。」

私は長瀬君に引きずられる形でトイレに向かう事となった。

恵子が岡本君に、「ほらね、長瀬って美菜が相手となると態度がコロっと変わるでしょ?」とかって 笑いながら話してるのを遠耳に聞きながら。



***** ***** ***** ***** *****




トイレには特に行きたいって訳でもなかったけど、とりあえず個室に入るだけ入ってみた。

だって、あの場から逃げる為の作戦なんだもん。

ほんとみんなから一斉に言い寄ってこられるのって困るよ。どう対処していいんだか。

その態度が面白くってみんなやってくるんだろうけど・・・はぁ。疲れます。

ん〜でもこのお店はトイレもお洒落なんだねぇ。トイレまでの道のりも両脇に花とかがお洒落に飾られてて ちょっとした小道って感じになってたし。

おわっ!全身が映る鏡が便座の前面に!!

こりゃ、恥ずかしくて前見てできないね・・・どこ見てすれば?

私はその鏡に近寄って自分の顔を映してみる。

ありゃぁ。頬っぺたがほんのり赤い・・・やっぱりちょっと酔っちゃったのかな?

私ってむちゃむちゃお酒弱いんじゃ。グラスの半分くらいしか飲んでないんだよ?

でも、長瀬君て彼氏っていうよりお父さんって感じ。恵子にも過保護すぎって言われてるし。

恵子は恵子でお母さんって感じだし、柊君はお兄さん?・・・何なんだこの構成。

はっ!!こんな事考えてる場合では。外で長瀬君が待っててくれるんだった。もう出よう。

私が急いで外に出ると、長瀬君は自販機の横の部分を背にもたれて待っていてくれた。

お待たせしました。と駆け寄った所でクイっと腕を掴まれるとそのまま引き寄せられて、今度は私が 自販機にもたれる形になる。

「ひゃっ!なっ長瀬君?!」

彼は私の顔の両側に手をつくとニヤっと意地悪く笑う。

うっ・・・こういう顔をする時の長瀬君はいつも何か良からぬ事を考えてる時なんだ。

何ですかぁ。私何も悪い事してないよぉ?

「お仕置き。」

どわっ来たっ!!

「えっ!?なっなんで??私・・・何もしてないよ?」

「お酒飲んだでしょ?」

「だって長瀬君が飲んでいいって言ったもん。」

「あれは美菜が飲みたいって言ったからだろ?それに、酔っ払った姿をみんなに見られた。」

「うわぁっ・・・それは不可抗力だぁ。」

「問答無用。」

スパッと言い切られると、ゆっくりと顔が近づいてくる。

わわわっ。待って待ってぇ!だって誰か来たらどうするのぉっ!!

「なっ長瀬君!誰か来たら困るよぉ。」

「俺は構わないよ?・・・その前に抑えられないし。」

「・・・っ!!」

いつものように優しく重なる唇。付き合ってから何度となくキスしたけど、やっぱり慣れなくて ドキドキしちゃうよ。しかも誰かが来ちゃうかもしれないという緊張感から、いつもより増して 息苦しくて・・・。それなのに、いつもより長いキス――――。

突然長瀬君の顔の角度が変わったかと思ったら私の唇を何かがなぞる感覚。

・・・・・・なっ何だ何だっ!?何が起こってるの!?

私があたふたとしていると次の瞬間長瀬君の手が私の後頭部を触ったかと思ったらそのまま上を向けさせ られて、僅かに開いた所から何かが入ってきた。

私の舌先に何度となくあたってくる感触――――次第に頭がぼぉっとなってくる。

もしかしてっ!・・・もしかしてっ!!これって所謂その・・・

でででぃーぷきすぅってやつですかぁ!?

どわぁっ。いきなりすぎるぅっっ。


←back  top  next→