*Love Fight






11




「・・・・・お前ら・・・覗きなんていい趣味してんじゃねぇか。」

長瀬君は私から唇を離すと、そう呟いた。

はい?覗き??だっ誰かいるの!?

私が慌ててキョロキョロと辺りを見渡すと、暗闇の中から2つの影が出てくる。

「な〜んだ。バレてた?さっすが修吾。」

「うふふっ。美菜、よかったねぇ。バッチシゴールイン!!」

「柊君に恵子ぉ!?みっみっ見てたのぉ!!!!」

私は半絶叫し、恥ずかしくてたまらなくて長瀬君の胸に顔を伏せる。

そんな様子を見ながら、2人はひゅ〜っとはやし立てる。

ほんとにいい趣味してるよ・・・君たち2人。

「まぁったく、最初っから両思いなんだから早くくっつけってぇの!!」

「ほんとほんと、何度も告白のチャンスあげてんのに全然なんだもん。ま、最終日までに くっついたんだから、良しとしよっか。」

「えっ最初っからって・・・・・知ってたの?」

「知ってたわよ。私は直人から、直人は私からお互いの気持ち聞いて。なのに、どっちからも 行動しようとしないからこの合宿中にくっつけちゃおう!って直人と話をしてたのよ。」

じゃあ、何ですかい?最初っから私は恵子の手の中で踊らされてたのかぁ!?

バスの席替えも突然の部屋訪問も、倒れた時に長瀬君をよこしてくれたのも?

改めてあなた達2人には脱帽です。降参ですよ・・・参りました。

「ま、直人と桂木さんには感謝しとくよ。お陰様で美菜の気持ち確かめられたし。」

「きゃ〜〜っ美菜だってぇ。キスも済んだし、また一歩前進ね!もぉお姉さん感激だわ。」

「ほんとほんと、お兄さんも見ててドキドキしちゃった。」

「ドキドキだけじゃねぇだろ、直人。お前もちゃっかりしてんじゃん。」

「は?何の話だよ、修吾。」

「くすっ、ついてんぞ。口紅。」

そういって長瀬君は意地悪く笑うと柊君に向かって自分の口を指差す。

突然2人の様子がよそよそしくなる。・・・・・ん?という事は。

「ばっか!!何言ってんだよ。」

「そっそうよ。今は私、口紅つけてなっ・・・・ぁ。」

しまった、とでも言うように恵子が口を手で覆う。

柊君もバツが悪そうに頭を掻いて俯いた。

なんだ・・・2人共ちゃっかり暗闇でチューしてたんだ。テレちゃってぇ。

2人の様子がおかしくって、私は長瀬君と顔を見合わせてクスクスっと笑う。

この2人より長瀬君の方が一枚上手なのかな?

あぁ。何か2泊3日、ドキドキの連続だったけど忘れられない合宿になりそう。

絶対無理だと思ってた人が、今私の肩を抱きながら横で笑っている。

こんなに幸せって他にないよねぇ!!万歳合宿、合宿最高!!!

私達は気を取り直すと、残りの花火を消化した。

あんなにあった花火なのに4人でやるとあっと言う間に終わってしまった。

でも、本当に楽しかった。明日で終わり・・・私達の2泊3日の合宿。



***** ***** ***** ***** *****




「お〜い、全員揃ったかぁ?席着いたら出発するぞ。」

担任の遠藤先生が声を張り上げる。

2泊3日の合宿を終え、私達は帰るバスに乗り込む。

来た時と同じように私が長瀬君と、恵子は柊君と座る。

照れる私を無理矢理恵子が追いやったの。もう、恵子ったら・・・嬉しいけど。

バスが走り出すと、すぐに長瀬君は私の肩を抱き寄せた。

「えっ!?わっ長瀬君、何してるの!!」

「また、舟漕いでいたるところに頭ぶつけられると困るからね。俺のお腹の為にも。」

「やっ、ひどぉ〜い。そんなことは・・・」

「ない?」

「ぅ・・・・・あると思います。」

「くすっ。でしょ?じゃあ大人しく肩を借りときなさい。」

「うっ・・・どっどうもアリガトウゴザイマス。」

「クスクス。素直でなにより。」

なんか・・・護ってくれるというより子ども扱いされてる気がする。

話し方が私にだけなんか違いません?

どっちでも嬉しいからいいんだけど。むふふっ・・・・・美菜、キモイって。

あ、そういえば一つ心にひっかかってる事があるんだ。

「あ、あの長瀬君・・・」

「ん?何?」

「えっと・・・私が湯中りして寝込んでた時に部屋に来てくれたでしょ?」

「うん。」

「その時告白して・・・その・・・キスとかした?

私は言ってて恥ずかしくなってしりつぼみな言葉になっていく。

「うん、した。美菜の顔見てたら抑えられなくなって、つい。どうして?それも夢かと思った?」

「あっうっ・・・うん。そっ・・か、夢じゃなかったんだぁ。」

やっぱりあれは夢じゃなかったんだ。

あの香りも唇の柔らかさも・・・うわぁ、合宿中に2回もキスしちゃったよぉ!!

今も香る心地よい彼の香りに包まれながら、私はキスをした時を思い返し一人頬を染める。

「顔赤いよ?何思い出してるのかな?」

ニヤっと長瀬君が意地悪く笑う。

「げっ!!こここっちを見ないでください!!!」

「クスクスッ。ほんと美菜ってかわいいよね。ついつい弄りたくなる。」

そういって笑うと私の髪の毛をそっと撫でた。

そして私の耳に唇を寄せると、長瀬君はコソッと何やら囁くとまたクスっと笑った。

途端に私は耳まで真っ赤になって頭から湯気が出始めた。いや、実際は出てないけども。

わわわっ、長瀬君ってそんな事を言う人だったのぉ!!

だめだぁ・・・血管がぁ・・・久々鼻血でそうです!!!

何だか長瀬君があのラブラブカップルの2人にダブって見えた。

はぁ・・・何かこの先不安になってきたぞ。

護られるというより、苛められる人数が増えた気がする・・・・・。

あぁぁ。私はこの先どうすればいいのですか。

私の嬉しいような不安なような複雑な気持ちを乗せたまま、バスはゆっくりと走り続ける。



《美菜とだったら何度でもキスしたくなるから・・・・・覚悟しといてね。》



                                           Fin



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