*Love Fight






10




「おい、恵子ぉ。花火の許可取ったから、やりに行こうぜ。」

夕食を終えて、就寝時間までの自由行動が始まると柊君達が部屋に呼びに来た。

「やったぁ。許可出たんだ。行く行く!!ほらっ美菜も行くよ。」

「あっうん。」

花火かぁ。私花火、好きなんだぁ。あ、でも大きな音のする花火は嫌いっていうか怖い。

バンッって鳴ると思わず耳を塞いでしまうの。これは昔からで今も治らない。

宿舎の外に出ると、他の生徒達もあちらこちらに散らばって楽しそうに花火をしている。

みんな考える事は同じなのね。

私は苦笑しながら、恵子に手を引かれて柊君達の後をついていった。

彼らの手には大量の花火。あれ、全部持ってきたの?・・・あれだけでカバン一杯になりそう。

空き地の一角に場所を決めると、大量の花火を地面にバサッと広げる。

すごい量。できるのかな、今日だけで。

「おっしゃぁ!!じゃ、始めるべ。」

柊君の掛け声と共に、それぞれ花火を手にするとロウソクから火をつける。

パチパチッシューッ!!と軽快な音がなり、綺麗な光が放物線を描いて広がっていく。

「うわぁっ!!きれいぃ!!!」

私は花火を見ながら、ゆらゆら揺らしてみたりして次々に花火に火をつけていく。

楽しい!!そういえば、花火なんて久しぶりだなぁ。

「うけけっ!!恵子っほれほれっ。」

「きゃっ、ちょっと直人。やめてよっ危ないでしょ!!ふんっそう来るなら逆襲だぁ!!」

恵子は花火を両手に持って、火をつけるとそれを柊君に向けながら追いかけて行く。

柊君もあはははっ、て笑いながら空き地の遠い所まで走って逃げてく。

はぁ、絵になるよね。あの2人って。

・・・・・・で、どこまで走って行くの。遠くて姿が見えなくなったよ?

私は暗闇の中遠くに行って小さくなっていく光を見ながら、違う花火に火をつける。

「俺、花火って久しぶり。たまにやるのも楽しいよね。」

「うん。私も久しぶりなんだぁ。すっごく楽しいよね。」

長瀬君と2人して花火を揺らしながら、笑いあう。

あれ?私、何だか長瀬君と普通に話せてる?・・・あぁ暗闇で表情がよく見えないからかな。

それとも、久しぶりの花火で少し興奮してるからかな。ま、どっちでもいいかぁ。



「・・・戸田さん、布団で寝てた時のことって覚えてないよね?」

急に長瀬君がそんな事を口にしたから、何の事を言ってるのかさっぱりわからない。

「・・・・・はい?」

「ん。俺が君の部屋へ行った時のこと。俺が部屋に行った時、戸田さん『長瀬君が来てくれた から大丈夫。』って言ってくれたんだけど。」

「えぇぇぇぇ!!あれって・・・夢じゃ・・・。」

花火のお陰で忘れかけていた幸福な夢が頭の中を駆け巡る。

なな何ですとぉぉ。あれは、夢じゃなかったの!?どっどこまで??

「クスクスっ。やっぱり?半分寝ぼけてたもんね。」

「えっ!!でも何もなかったよね?食堂でそう言ってたもんね。」

私の鼓動が次第に高鳴って行くのがわかる。

そんな様子に気づいてか、長瀬君はクスクス笑いながら新たに花火に火をつけた。

プシューッと音を立てて綺麗な光が飛び出す。

「ん?そう思う?戸田さんが覚えてないなら・・・少し悲しいけど。」

「もしかして・・・添い寝とか・・・・・?。」

「うん。した。」

「・・・・・私、告白したとか・・・・・。」

「2回目だったよね、好きだって言ってくれたの。あ、2回目は大好きかな。」

「はいっ!?2回目って・・・1回目のっやや、やっぱりあの時起きてっ!!」

一日目の夜に長瀬君達の部屋に遊びに行った時、見回りから隠れる為に長瀬君と同じ 布団で身を潜めてた時に寝てると思って言った告白。やっぱり起きてたのぉ?

「震えてる戸田さんを抱きしめてたら、俺理性吹っ飛びそうだったから寝たふりしてた んだけど・・・。いきなり告りだすから、びっくりしたよ。」

寝たフリ?・・・理性ぶっ飛び?・・・私がぶっ飛びです。

もう、何がなにやら理解不能です。

「初めて好きだって聞いたときに返事するつもりだったんだ。でも、すっげぇ嬉しくて すぐに返事できなくて抱きしめる事しかできなかった。」

「へ?」

あ・・・あの時の《もうすこし抱きしめさせて》・・・その後すぐに恵子に呼ばれて出た

んだっけ?あぁ、恵子ぉ。

「俺も1年の時から気になってたんだ。何かこう、放っとけなくて護ってあげたくて。でも、 俺、女の子ってどう接すればいいのかわかんなくてさ。うじうじしてる間に委員が終わっち まって、半分諦めかけてたんだけど2年で同じクラスになってからは目が離せなかった。」

「う・・・嘘ぉ。」

「ほんと。好きなんだ、戸田さ・・・美菜の事。1年の頃からずっと。」

私は長瀬君の口から好きだ、とういう言葉と自分の名前が発せられた事が信じられなくて、 頭がぼぉっとしちゃって何も答えられない。

「美菜?」

「夢・・・みたいで。だって絶対長瀬君にはこんな私じゃ無理だって思ってて。長瀬君が私の 事を好きだって言ってくれてるのも、名前を呼んでくれるのも全部夢みたいなんだもん。」

「夢じゃないよ。・・・好きだよ、美菜。俺が護ってあげる。」

「長瀬君・・・わたし、私も長瀬君の事・・・好きです。」

長瀬君は私の肩を抱き寄せると、夢で見た時と同じように優しくキスをしてくれた。

私の好きな長瀬君の香水の香りと、唇に柔らかい感触が伝わる。

覚えてるこの唇の感触。もしかしてキスも夢じゃなかった?

真っ暗でよかったぁ。私の全身が熱く火照って・・・きっと真っ赤だろうな。

私は幸せの絶頂感に浸っていた。

大好きな彼と両思いになれたこと、その彼にキスをされている事。

そして、同じように1年のときから私の事を見ていてくれている事に。

暗闇の中から2つの目がニヤリと笑い、盗み見されているとも知らずに。



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