Love Fight < **Kagura's House**

Love Fight


...05

昼食を終えて、午後からは写生の時間。

班毎に別れて好きな場所を決め、それぞれに風景を写しとる。

ここの宿舎は山の中腹にあるから、周りは自然がいっぱいで絶好の写生ポイントが至るところに存在する。

私たちの班は悩んだ挙句、許可されている限界ギリギリまで奥に進んで、他の生徒がいない静かな場所に決定した。

私はただみんなに従ってついてきただけだけど、結構山奥に来たと思う。

だけど、普段自然に触れる機会が少ないせいか、この澄んだ空気と幻想的な雰囲気がとても新鮮だった。

こうした静かな場所で目を閉じて深呼吸をしてみると、不思議と頭の中がクリアになるし、何だかリラックスできて気持ちがいい。

私は、う〜ん。と大きく伸びをして、新鮮な空気を思いっきり体内に吸い込んだ。

「たまにはいいよなぁ、こういう所でまったりするのもさ」

「直人、何言ってんのよ。 寝転んでないで、ちゃんと写生をしなさいよ!」

「へいへい……って、お前も寝転んでるじゃねえかっ!!」

「え〜。 だって、気持ちいいんだもん」

「なんじゃ、それっ」

嫌でも聞こえてくる柊君と恵子のそんなやり取りに、少し離れた場所にも関わらず思わずフッと笑いを零してしまう。

本当に仲がいいなぁ、あの2人。

似たもの同士って言うのかな…行動や言動が凄く似ているんだよね。

2人を見ていると凄く自然で、羨ましいなぁ。といつも思う。

私も恵子と柊君のように、長瀬君と自然に話せるようになったらいいなぁ…なんて、彼らと自分を重ね合わせて見たりして。

付き合う事は絶対に無理だろうけど、いつかそうなれる日が来るといいな…

ちょっと視線を飛ばして少し離れた場所に座る長瀬君の姿をチラリと盗み見てみると、彼は真剣な眼差しで一人黙々と筆を走らせている。

離れた場所からでもわかる端整な横顔。 バランスのとれた体型。 彼から発せられる美のオーラ。

この山奥の神秘的な雰囲気の中に彼の姿が溶け込んで、まるで長瀬君のいるその場所だけが別世界のように浮いて見える。

その姿は思わず指先でキャンバスを作って切り取りたくなるほど美しかった。

はぁ…やっぱりカッコイイなぁ。と、ため息が一つ口から零れる。

その彼から先ほど直接つけてもらった、彼と同じ匂いの香水。

手首を鼻に近づけてそっと嗅いでみると、ふわっと優しい彼の香りが鼻先をくすぐった。

へへっ…長瀬君と同じ匂いだ。

なんて、ちょっぴり浮かれ気分になっていると、突然恵子の声が耳に割って入ってきた。

「美菜?何、ニヤけてんのよ…怖いって」

「げっ!べっ、別にニヤけてないもん! 急にこっち見ないでよぉ」

しまった…見られてた。

と、慌てたときには遅かった。

恵子は、はっは〜ん。と何かに気づいたように、ニヤリとした笑みを浮かべて私を見る。

彼女のその嫌らしい笑みを見ながら、私は若干顔を引き攣らせた。

あ〜、嫌だ。 なんだかとっても嫌な予感がするわん。

「美菜ぁ、な〜に考えていたのかなぁ? お姉さんに教えなさい」

「いや…だから、別になにも?」

「そんな事はないでしょう? なんでニヤけていたのかな?なににニヤけちゃったのかなぁ?ん?ん??」

さぁ、言ってごらんなさい。と、恵子がニンマリと不気味に笑う。

だぁ〜、もうっ。わかってるくせに、恵子の意地悪ぅ!!

長瀬君が近くにいるのに、そういう風にからかわないでよぉっ。

顔を紅く染めながらどうやってこの場を切り抜けようかと頭を張り巡らせていると、もう一人厄介な人物が首を突っ込んできた。

「何々。美菜ちゃんがニヤけてるって? なに、なんでニヤけちゃってんの?お兄さんも知りた〜い♪」

いや…知らなくていいですから。

嫌な予感が的中した。 このままだとヤバい…この似た者カップルの餌食にされる〜〜〜っ。

恵子一人でも太刀打ち出来ないのに、その上柊君まで加わってしまってはもう私の成す術は一つしかない。

私はグッと覚悟を決めて、すっくと立ち上がった。

そう…とりあえず、逃げる!

「あぁっと! 私、お手洗いに行ってくるっ!!」

「あ、逃げる気ね?」

「ちっ、違うよ?ホントに、ホントに…」

うひょひょっ。やっぱり、バレてる…

「怪しいなぁ…。 でも、美菜…宿舎まで一人で戻る気?結構な距離を歩いて来たわよ?」

「う…確か、この近くにトイレがあった気がしますが…」

写生場所を決める為にこの近くをウロウロしていた時、こんな所にトイレがあるって思った記憶がある。

そんなに離れた場所じゃなかった気がするから、私一人でも行って帰って来られると思うんだけど。

「確かにこの先を登って下ったあたりに登山者用のトイレがあったけれど、美菜って方向音痴じゃない。ついて行ってあげようか?」

「お! お兄さんも一緒についていってあげるよ?」

「ややっ、それは大丈夫!!それぐらい一人で行けるよぉ…」

二人一緒についてこられては意味がなくなってしまうじゃない。

単にお二人から逃れたいだけですから…たとえトイレに辿り着けなくても良いのですよ。

行った道をそのまま戻ればここに帰れるわけだし。 ほんの数分、彼らの話題が別に移るまでの時間稼ぎなのだから。

「そう? じゃあ、この先を登って下ったところだからね?歩いた道を忘れちゃダメよ? 間違ってもっと山奥に進んだら、熊とか出るかもしれないんだから…気をつけなきゃダメだよ!」

「あははっ!熊って…ここには熊なんていないでしょう? うん、登って下ったところね? 大丈夫、忘れないように覚えておくから」

「わからなくなったらすぐに私の携帯に電話しなよ? 変に動いちゃダメだからね?」

「わかってるよ、心配性だなぁ。 もう、子供じゃないんだから大丈夫だって。すぐ近くなんだから。じゃあ、行ってくるね!」

ホント、昔から変わらないなぁ。 恵子ってば私のお母さんみたい。

昔と変わらない恵子の姿にクスクスと笑いながら、大丈夫だと豪語した私。

極度な方向音痴さを一番自分が理解していなかったようだ。


*** *** ***



さて……ここは一体どこなんでしょう?

ぐるりと辺りを見回してみても、そこにあるのは、木・木・木・木!!!

右を見て左を見れば、もう自分がどこから来たのかわからない。

どこを見ても同じにしか見えない景色に、何となく焦りと不安を抱き始めた。


恵子が心配していた割には、案外すんなりトイレに辿り着けてしまった私。

これなら簡単に帰れるなぁと、せっかくだからとそこの清潔に保たれているトイレを使わせてもらい、来た道を帰っているつもりだった。

登って下ってきたから、そのまま登って下れば簡単に帰れるはずだったのに…

登って下って、また登って……気づいたときにはまた下っていた。

あれ?私、何回登って下ったっけ?

ん?…時間的にはもう着いていなきゃおかしいよね?

むむむっ…恵子たちの姿も見えないし、他の生徒たちの声も聞こえないぞ?

そもそも来る時にはこんな荒れ地は歩いていないし、自分の背丈ほどの木々なんて生い茂っていなかったはず。

もしかして、ヤバイかも?

そう思った時には既に遅し。 完全に道に迷っていました。 って、いうか…その前に気づけ?

「おかしいなぁ…来た道を戻っていたはずなんだけど」

そうぼやきながら、変に動いちゃダメという恵子の言葉通りに立ち止まった私。

この時はまだ心に余裕があったと思う。

恵子に電話すれば何とかなるだろうと思っていたから。

だけど、スカートのポケットから取り出した携帯を開いた途端、事態は一変してしまった。

「え…嘘ぉ。 ここ、圏外っ?!」

画面の隅っこに表示された「圏外」という小さな文字。

アンテナを立ててみても、あらゆる方向に携帯をかざしてみても変わらなかったその二文字。

なんで?なんでっ!?この非常事態にどうして圏外なのよぉっ!!

途端に焦りと不安が押し寄せてくる。

心臓がバクバクと痛いほどに高鳴りだす。

それまで何ともなかった辺りの景色が、突如として不気味なものに変化する。

どっ、どっ、どうしよう!! 私はどうやって帰ったらいいの?!

やっぱり恵子について来てもらえばよかったと後悔しても遅いわけで、これから自分はどうすればいいのだろうと泣きたい衝動に駆られた。

携帯で連絡が取れない今、恵子たちが探しに来てくれるのをここで待つほうがいいのか

それとも闇雲にでも歩き回っていたほうがいいのか…

あれから随分と時間が経ってしまったから、きっと恵子たちもおかしいと思ってくれているに違いない。

動いちゃダメだという恵子の言葉に従って、このままここにいたほうがやっぱりいいんだろうなと思いつつ、こんな自分の身の丈ほどの草木が繁茂する場所で視界を遮られて待つのは嫌だと、せめてもう少し視界が開けた場所まで移動しようと一歩足を踏み出したときだった。

ガサガサガサ…

と、数メートル先の草木が部分的に揺れ動いた気がした。

「えっ、なにっ?!」

その音に思わずビクッと体が震えて、息をのんで一歩退いてしまう。


――――間違ってもっと山奥に進んだら、熊とか出るかもしれないんだから…気をつけなきゃダメだよ!


不意に恵子の言葉を思い出した。

いや、まさかね?

こんな所に熊なんているわけがないんだと思い返したとき、先ほどよりも近い場所からまた、ガサガサガサ…。と、音が聞こえてくる。

「だっ……誰かいるの?」

と、勇気を振り絞って小さく問いかけてみても返事はなく、耳を澄ましても何も聞こえない。

全く知らない場所で視界が遮られると、こうも不安になるものなんだろうか。

私の頭の中には、誰かが助けに来てくれたのかもしれないという期待よりも、何かが襲ってくるのかも!という恐怖が先に立ってしまった。

熊かもしれない…熊が出ちゃったのかもしれないっ!

私、知らない間にすんごく山奥まで来ちゃったのかもしれないっ!! どうしよう、恵子ぉっ。

自分の体から血の気が引いて、顔が青ざめていくのがわかる。

自然と自分の足が二歩、三歩とそれから遠ざかろうと後退しはじめる。

そろりと体の向きを変えて、なるべく音を立てないように二歩、三歩……止まって耳を欹てて、今度は少し足早に歩いてみた。

自分の足元からパキ、パキッと枝が折れる音が連続して鳴る。

ヤバイッ!と、思わず立ち止まって心臓をドキドキさせながら耳を欹てると、ガサガサガサ…。と、何かがこちらに向かって動き出した。

ひええぇぇっ!!こっちに向かって来るぅっ!!!やっぱり熊が出ちゃったんだぁあっ

そう思い込んでしまった私はもう、逃げる事しか頭の中にはなくて、後ろを振り返ることなく草木を掻き分けがむしゃらに走って逃げた。

ガサガサガサ…。 ガサガサガサ…。と、二つの音が静かに響く。

途中、何かを叫んでいるような声が背後から聞こえた気がしたけれど、私の耳には「ぐおぉぉっ!!」という獣の雄叫びにしか聞こえなくて、更に恐怖心を煽られる。

確実に私は追われている。 しかも、相手のほうがスピードが速い。

ドクドクドクッと嫌な速度で心臓が暴れる。 恐怖のあまり自分の目に涙まで溜まってくる。

徐々に縮まる相手との距離。 もうすぐそこまで迫ってきていた。

私にしてはよく走れたほうだと思う。

しかし所詮はドジな女。 どんな場面でもそれは裏切らないらしい。

もう、相手の気配が感じられるところまで迫られたとき、突然自分の足元が何かに躓き素っ頓狂な声と共に思いっきり転んでしまった。

「へにゃぁっ!!」

ドサッと音を立てて体が地面に倒れこむ。 何者かに足元まで追いつかれたのがわかった。

あぁ、もうダメだ…熊に食べられちゃうよぉ〜〜〜っ!!

私はそのまま頭を抱え込み、ギュッと固く目を閉じる。

そして、半泣きの状態で訳のわからない事を必死に叫んだ。

「わ〜っ!ごめんなさいっ!! 熊さん、食べないで!私、死んでますっ。こう見えて死んでるんですっ!!だから、食べても美味しくないからっ!!
どっか他をあたってくださいっ!!!」

「戸田さんっ…俺だって…」

「ひゃぁっ…はっ、話しかけないでくださいっ! 私、クマ語わかりませんからっ!!」

「いや、だから…俺…長瀬だけど」

「そんな、熊さんの名前言われても……って、…へ?」

…ナガセ?…ナガセって、あの長瀬君?!

ガバッと頭を上げて振り返る。

するとそこには両膝に手を当てて肩で息をしている長瀬君の姿があった。

「なっ、長瀬君っ?!」

「も…どうして逃げるの…ずっと名前、呼んでいたのに…」

「嘘…ごっ、ごめんなさい。何か叫ばれている気はしたけれど…てっきり熊だとばっかり…」

「この山には熊なんていないから……はぁ〜。でも、よかった見つかって。帰りが遅いから探しに来たんだ。 携帯は圏外で使い物にならないし、
あっちこっち探し回って、ようやくそれらしい姿を見かけた気がしたから近づいてみたら突然逃げ出すから…びっくりしたよ」

長瀬君は私の腕を優しく掴んでその場に立たせ、大丈夫?と言いながらスカートなどについた汚れを軽く払い落としてくれる。

はぅっ、申し訳ないです…

まさか追ってくるのが長瀬君だなんて思いもしなかったもので。

あの時は恐怖心しかなくて、逃げるのに必死で何も考えられなかったんです。

そっか。熊じゃなくて、長瀬君だったんだ…そうだよね。こんなところに熊なんていないよね?ホント、バカだなぁ…私。

ようやく現状を受け入れられた私は、緊張の糸が解れ一気に安堵感に包まれる。

心底ホッとしたせいか、急激に涙がこみ上げてきて目頭が熱くなった。

「うぅ…でも、怖かったぁ…」

そう、ポツリと零しながら、ポロリと零れた一粒の涙を指先で拭い取る。

また反対の瞳から溢れ出た涙を拭い取ろうとしたその手を、突然長瀬君が掴んでそれを制した。

え……

トクンと胸を高鳴らせ思わず長瀬君の顔を見上げたけれど、彼は私の手を掴んだまま何も言わずに優しく涙を指先で拭ってくれる。

それから暫く私の瞳をじっと見つめ、やがてフッと柔らかい笑みを浮かべた。

「怖い思いをさせてごめんね? でも、本当によかった。戸田さんを見つけられて…必死で探してたからさ」

「長瀬…くん」

「それにしても…『熊さん、食べないで!私、死んでますっ』は、ないよなぁ。危機的状況にも関わらず、熊に向かって喋るなんて聞いたことがないよ。
今、思い出しても…ごめん、笑えてくる」

そう言って目の前の長瀬君は、クスクスとおかしそうに声を立てて笑い出す。

途端に自分の顔が羞恥心で真っ赤に染まっていくのがわかった。

わぁーっ!それはスルーして欲しかった!!

「だっ、だって本当に怖かったから…必死だったんですって。 転んじゃって、もう逃げられないって思ったし…」

「そうだよね、泣いちゃうくらい怖かったんだもんね? でも…クマ語って…」

聞いているんだかいないんだか、長瀬君はそう返事をしながら私の髪や肩についてしまった葉っぱや土を取り払ってくれる。

それから“クマ語”が彼のツボに入ってしまったのか、自分で言っておきながら、ぶはっとまた噴き出した。

ちょっと。笑いすぎでないですか…それ。

「もうっ、長瀬君笑いすぎっ! 酷くないですか、それ?本当に怖かったんですよ、私!」

「あははっ!ごめん、ごめん。妙にツボに入っちゃって…笑ってごめんね?」

なんて言いながら尚も笑い続ける長瀬君。

もう、いいですけどね。 貴重な長瀬君の笑った顔をこんな近くで見せてもらえるんですから。

でも……やっぱり笑いすぎだと思いますよ?


「さて、と…直人たちも心配しているから、そろそろ戻ろうか。戸田さん、歩ける?」

しこたま笑って満足したのか、長瀬君がそう言って覗き込むように微笑む。

若干腑に落ちないところがあったけれど、彼の素敵すぎる笑顔を間近に向けられて、私は頬を赤らめながら思わず俯いてしまった。

「あ、う…うん。大丈夫、です…」

「傷が痛むなら背負ってあげるけど」

「わわわっ、そんな!大丈夫ですっ。 一人で歩けますですっ」

「そう? じゃあ、また転ばないように俺が支えになってあげる」

クスクスと小さく笑いながら、長瀬君はそんな言葉と共に私の手を取りそっと握り締めた。

自分の手のひらに、俄かに彼の手の温もりと感触が伝わってくる。

え……。と、一瞬固まった私。

これは一体なんでしょう?と、思考回路まで停止した。

「手を繋いで歩けば、転ぶ心配はなくなるからね。それに、迷子にもならないし?」

若干意地悪めいた笑みを浮かべながら、そう言ってゆっくりと歩き出す長瀬君。

遅ればせながら、ここにきてようやく事態を把握できた。

ちょっ、ちょっ、ちょっと待って?! うそ…嘘っ…嘘でしょぉぉっ!!

長瀬君と…長瀬君と手を繋いでいますけどっ?!

あの、イケメンツートップと言われている長瀬君と私がっ。

え、いいの?いいんですか、これって。 こんな展開アリですかっ??

「ほら、しっかり手を握っていないと、また転んじゃうよ?」

「え…あのっ…で…っ…ぅにゃっ!」

気が動転している私はいつも以上に足元がおぼつかず、言われた矢先に何かに躓いてつんのめってしまう。

だから言ったのに。と、小さく笑いながら、長瀬君は私の手をギュッと強く握り締めた。

きゅんっと、胸を強く締め付けられるような痛みが走る。 思わず繋いでいないほうの手で胸元をギュッと握り締めてしまった。

待って、待って!こんなの、心臓が持ちませんって!!

まるで体全体が心臓になってしまったかのように、バクバクと痛いほどに高鳴る鼓動。

繋いだ部分がとても熱く感じるのは、気のせいじゃないと思う。

1年の頃からずっと思いを寄せている長瀬君。

その彼とたとえこんな形であったとしても、手を繋いでもらえるなんて思いもしなかった。

自分の方向音痴のせいで道に迷ってしまったのに、汗だくになるほど必死に探してくれて、おまけにこうして手を繋いで支えにまでなってくれるなんて…やっぱり長瀬君は思っていた通り優しいお人なんだ。

どうしよう…なんか、今すごく幸せかもしれない。

心臓はドキドキと痛いくらいに高鳴っているけれど

恥ずかしくて真っ直ぐ前を見られないけれど

このままずっと手を繋いだまま、どこまでも歩けたらいいのにな…

なんて。

自分の事を心配してくれている人物が他に2名もいることを忘れ、繋いだ手を見ては一人顔を綻ばせていた私だった。



2009-05-21 加筆修正



張り切って書いていたら、妙に長くなってしまいました(汗)
美菜が道に迷ってしまったシーン、若干膨らませてみました。如何でしょうか(^_^;)