*Secret Face






10




次の日、新一は寝不足で頭が重たいまま教室に入った。

それと同じくして、担任が朝礼の為に教室に入ってくる。

「お〜い、みんな座れ。出席を取ります。さっき連絡あって今日は小暮は風邪で休みな。」

(・・・・・あいつが風邪?・・・もしかして、昨日の雨で・・・・・)

そう思うと、新一の胸は何故かざわめいた。

担任は出席を取り、連絡事項を述べて教室を出て行った。

それを見計らったかのように、新一の彼女が教室に姿を現す。

「ね〜、シン。昨日のメール見てくれた?それでさ、今日一緒に行ってほしいんだけど。」

耳を塞ぎたくなるような、甘ったるい声で新一の腕に絡みついてくる。

「あ〜もう、触んじゃねぇよ。お前行きたきゃ一人で行けばいいだろうが。俺は行かないから。・・・・・あっ、なぁ今日は俺、フケるから腹痛とか適当に言っといてよ。」

しつこく食い下がる彼女を無視し、新一は前の席の生徒に呟く。

「あ?もう帰んの?別にいいけどよ。頭が腹痛って言っといてやるよ。ぷぷっ。」

(・・・・・・・。)

新一は身震いをしながら、とりあえずサンキューと答え、鞄を手にする。

「え?何、シン帰るの?じゃあ、私も帰る〜〜。ちょっと待っててよ。」

「付いてくんじゃね〜よ。」

何やら叫んでいる彼女を背に、新一は足早に教室を出た。

自分が何故、そんな行動に出たかわからなかった。

ただあいつの事が無性に気になってしかたがなかったから・・・。



昨日初めて訪れた姫子のアパート。

新一はそのドアの前に立っていた。

(・・・・・はぁ、会ってどうしようってんだよ、俺は。・・・一体何しに来たんだ?)

インターホンを押す手に迷いが出る。指を差し出しては引っ込めてを繰り返していた。

何度目かで意を決してインターフォンを押す。

ピンポ〜ンと軽快な音が鳴って、しばらく経ってからガチャっと言う音が鳴る。

《はい・・・どちらさまですか?》

普段の声と比べ、少し低めの弱い声が返ってくる。

「あ・・・・と、俺。・・・藤原だけど。」

《・・・・・!?はい??・・藤原君?・・・え?何、どうしたの??え、ちょっ・・・ガチャン》

何か言おうと口を開く前に、切られてしまった。新一が立ち尽くしていると、ガチャっとドアが開いた。

「え・・・ほんまに藤原君やん。どうしたん?こんな時間に。まだ1限目の時間・・・。」

そう言って驚いた顔を覗かせる姫子は、熱があるのか少し頬が赤い。

眼鏡をはめていない彼女はコンタクトもしていないのか、眉間にいっぱいシワをよせていた。

「・・・お前、すげ〜形相。あ、・・・いや、風邪引いたって聞いたから。もしかして昨日の雨のせいかな、って思って。それに先にシャワー使っちまってその間に引いたんだったら俺のせいでもあるわけだし・・・・・」

「すげ〜形相って、失礼だなぁ。突然ピンポンが鳴ったから慌てて眼鏡探したんだけど、見つからなかったから、裸眼で出てきたの!!も〜、びっくりしたよ〜。そんなの気にしてくれなくてよかったのに。風邪は引くときはひくんだからさ。その為に授業サボったの?」

ここで話してるのもなんだから、と姫子は新一を部屋に招き入れる。

「学校はいつもサボってっからいいんだよ。それより熱は?」

「熱・・・は、さっき薬飲んだからもうじき効いてくると思うんだけど?」

「何か食った?」

「え〜と、・・・・・何も食ってません。」

「は?なんも食ってね〜の?」

「あ・・・はぁ。熱もあったし、めんどくさくって。・・・えへ。」

姫子はかわいらしく、ちょこっと肩をあげて首を傾げる。

(えへ・・・じゃね〜よ。)



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