*Secret Face










そうこう話しているうちに、時刻はもう夜中の2時を過ぎていた。

雨もどうやら上がっているようだ。

「げっ、もうこんな時間かよ。・・・雨も上がったみたいだし、俺、帰るわ。サンキューな。」

「あ、ほんとだ。もう2時過ぎてたんだね。気が付かなかったよ。・・・今日はいっぱい藤原君と話せて楽しかった。へへ・・・私、実は藤原君てもっと怖い人かと思ってたんだ。」

玄関まで見送りに来た姫子が、すまなさそうにペロっと少し舌を出す。

「あ?俺が?」

「あ、うん。だって、いつも誰と話す時も藤原君て無表情で素っ気無いでしょ?だから。」

「あ〜、話すのめんどくせぇしかなぁ。あんま興味もねぇし。」

(俺ってそんなに話すとき素っ気無いっけか?)

首を傾げる新一の姿を見て、姫子はくすくすっと笑いながら

「そっか、でも今日はいろんな藤原君を発見して面白かったし、怖い人じゃないって分かったから安心した。バイクの速度は怖かったけど?」

「あれはお前が遅すぎなの。で、なんだよ・・・・・いろんな俺って?」

「うん?ま、いろいろ。でも内緒。あはは、気をつけて帰ってね。」

「何だよ、言わねぇ気かよ。・・・・・ま、別にいいけど。・・・じゃぁな。」

新一はどこか奥歯に物が挟まったような感覚に捕らわれながらドアのノブに手をかける。

「あは。うん、また明日ね。・・・・・あ、ねぇ、藤原君。」

ドアを閉めようとした手が止まる。

「・・・・・なんだよ。」

「あのさ・・・・・遊びで付き合うのって、藤原君はそれで幸せ?・・・・・本気の恋は見つけようとしないの?」

「え・・・・・?」



自分の幸せ・・・・・深く考えた事もなかった。

言い寄ってくる彼女達と適当に付き合って日々を過ごし、付き合う事がうざったいと思いながらも

また、別の彼女に告白されれば渋々ながらも付き合っている自分がいる。

誰かと付き合う事で、自分が幸せになるかなんて考えた事もない。

『遊びで付き合うのって、藤原君はそれで幸せ?』

『本気の恋は見つけようとしないの?』

そう呟いた姫子の言葉が、新一の耳に妙に残る。

(あ〜〜っもう、何なんだよ・・・・・このモヤモヤした気持ち・・・・・俺らしくねぇ。)

新一は、雨上がりの道を俯きながら歩いていた。

すれ違う人などいるはずも無く、静まり返った空気は新一の心をより重たい物に変える。

本気の恋・・・・・本気の付き合い・・・・・何だよそれって。

適当に付き合って、適当に別れて・・・・・俺はそれでいいんじゃねぇの?

俺の幸せ?俺の本気?・・・・・そんなのわかんねぇよ。

自問自答を繰り返し、重い気持ちのまま家にたどり着いた新一は、携帯を部屋に置き忘れたままだったのに気が付く。携帯を開くとメールが届いていた。

今付き合っている彼女からのもので、新一はより一層気持ちが重くなる。

《今日ね、中学の友達にシンの事話したらすごく見たがったから今度一緒に会ってよ。

彼女面食いでさ、自分の彼氏が一番かっこいいって思ってるから、会うの超楽しみ。だって

シンの方が絶対顔がいいんだもん。ね、自慢したいからその時はちょっと渋めの格好してよね。》

(俺は見世物じゃね〜っつうんだよ。あ〜〜も〜〜っ・・・・・ムカツク!!)

新一は携帯を鞄に投げ入れ、ベットにどさっと倒れこむ。

言いようの無いモヤモヤした気持ちが新一を覆い、眠る事ができなかった。



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