*Secret Face 階段の途中で姫子に追いつき、肩を掴む。 「おいっ、ひ・・・小暮っ!待てよ、何で先に行くんだよ。」 「おわっ!びっびっくりした・・・あれ、彼女達は?」 「彼女達は?じゃねぇよ。何で先に行くんだっつってんの。」 「何でって・・・別に深い意味はないけど。その方がいいかなぁって。」 「いいわけねぇだろ。あぁ、もぅ。久々虫唾が走った。」 「・・・・・虫唾って。」 クスクス。と苦笑を漏らす姫子に、俺は、ちょん。とわき腹を小突く。 「お前知ってんだろ、俺がああいうタイプが一番嫌いだって事。」 「んっ!・・もぅ、わき腹触らないでよっ。知ってるけど・・・そうした方がバレないかなって思ったの。」 「色っぽい声だしてぇ・・・感じちゃった?」 「はっ!?ちょっと、し・・藤原君っ!何言ってんのよ。」 「あぁ、俺ダメ。その声にすっげぇ弱い。」 「こらーーーっ!話がずれてるでしょうがっ!!新学期早々何言っちゃってくれちゃってんのよ。」 「新学期早々、第一発目サボっとく?」 俺がニヤケながらそうボヤくと、バンっ!!という鈍い音と共に思い切り背中に激痛が走る。 「いってぇぇぇ!!おまっ、最近暴力的だぞ?・・・暴力はんた〜い。」 「アホかっ!もう一回2年生やり直してきっ!!」 ・・・・・いや、それは困る。 俺が背中を擦りながら、姫子と連れ立って歩いていると、クスクス。と聞き覚えのある笑い声が背後から届く。 ・・・・・この声は。 「あ〜ら、お二人さん相変わらずお熱い事で。」 「あ、恭子おはよう。」 やっぱり・・・麻田 恭子か。 俺はヤツの顔を見るなりため息を漏らし、よぉ。と手短に挨拶を済ます。 「ちょっと藤原。随分な態度じゃない。この恭子様の顔を見て、ため息を漏らすなんざいい度胸してるわね。」 「な〜にが、恭子様だ。朝っぱらからそのニヤけた面見せんじゃねぇよ。」 「ニヤけた面とは失礼な。美しい笑顔と言って。」 麻田は、やけに気合の入った髪形を気にしながら姫子に向かって、おはよう。と呟く。 「言ってろ、ボケ。」 「あ、そういう態度に出る?いいのかなぁ、私にそんな態度取っても?中学時代の連れに全部バラしちゃうわよぉ?」 「・・・・・脅す気か、てめぇは。っつぅか、既にバラしてんじゃねぇかっ!ある事無い事べらべらと喋りやがって。お陰でこっちはいい笑い者なんだからな。」 最近、それも慣れっこになってきたけどよ。 いつまで笑い者にするつもりだ、こいつらは。 「そうだっけ?」 「しらばっくれんなっつぅの。人の事を笑いのネタにすんじゃねぇよ。」 「これ以上のネタは無いもの。」 サラリと麻田の口から流れた言葉に、姫子も、クスクス。と小さく笑う。 「お前も一緒になって何笑ってんだよ。あぁっもうムカツク!!麻田と一緒のクラスじゃないのが唯一の救いだな。」 「何言ってんの、一緒のクラスよ?」 ねぇ?と姫子に同意を求めると、うん。と嬉しそうに笑いながら頷く姫子。 「はっ?嘘だろ・・・名前なかったって。」 「誰かさんの名前を探すのに必死になってて見落としたんじゃないのぉ?」 ・・・・・確かに。 姫子の名前を探すのに必死で最初の方の名前なんて、さらっとしか見てなかった。 「・・・マジかよ。」 「ご愁傷様。」 また今年一年、コイツに笑い者にされるのか? ・・・・・冗談じゃねぇぞ。 |