*Secret Face










「よ〜、そろそろ帰ろうぜ。こいつギブみたいだし、ここも閉店みたいだからさ。」

机に突っ伏せている友人に苦笑しながら、新一は残る2人に呟いた。

「おお、そうだな。明日も学校だし・・・ま、こいつは多分無理だろうけど。」

「ほ〜んと、弱すぎ。チューハイ2杯でこんなんなるかね、普通。あ〜めんどくせぇ。シンはいいよなぁ。反対方向だからさ。俺らコイツ担いで帰らないといけないんだぞ。こいつがここの居酒屋に来たいって言い出したのにさぁ。ま、こいつが通いたくなる気持ちもわかるけど。」

ブチブチと二人が文句を言い、代わる代わる頭をパシッと叩いた。

「ま、頑張って帰ってよ。なんなら駅のベンチにでも置いて帰ったら?」

くすくすっと笑いながら新一は伝票を持ちレジに向かう。

あ、それい〜かも〜。と声を合わせて呟く2人になおも笑いながら支払いを済ませた。

店を出る際にチラッと姫子の姿を探したが、見当たらなかった。

(何で俺、あいつを探してんだよ・・・・)

酔っ払いの肩を両脇から担ぐ友人に苦笑しながら別れを告げ、新一は一人帰路に立った。

街は夜中近いというのに、いまだ人の往来が絶えない。いつの間に雲っていたのか、空は

今にも雨が降り出しそうだ。

(やべぇな。早いとこ帰んないと、傘持ってねぇしな。)

少し歩くと、脇の駐車場から原チャリを引いて一人の少女が出てきた。

(あっ・・・・・)



「小暮。」

新一の声に気が付き、原チャリに乗ってエンジンをかけた姫子が振り返る。

「うひゃっ!!ふ、藤原君。・・・びっくりした。今帰り?」

(何だよ、その「うひゃっ」て反応はよ・・・)

姫子の反応に、少し眉を寄せながら新一はバイクの横まで足を運ぶ。

「おぉ。お前も今から帰るのか?」

「う、うん。・・・一応ラストまでなんだけど、いつも少し早く帰らせてもらえるんだ。」

「ふ〜ん。どうでもいいけど、お前原チャリなんて乗れんの?」

居酒屋でのバイトといいバイクの事といい、今日は姫子に驚かされっぱなしだった。

一番驚かされたのは姫子の変わりようだったのは言うまでもないけれど。

「うん。乗れるよ〜。怖いからちょっと速度が遅いんだけどね。誕生日に免許とって、バイト代貯めて知り合いの人に安くで売ってもらったんだ。」

「ふ〜ん、小暮が原チャリね〜。」

その言葉に姫子は少し口を尖らせて、

「あっ、バカにしてるでしょ〜。私がどんくさいのに乗れんのかって。」

確かに姫子は少々どんくさかった。何も無い所でつまずいて転ぶし、壁に正面衝突をする。

(今の小暮なら、男どもがほっとかないだろうけどなぁ。学校の小暮じゃ笑い者で終わるもんな)
そんな事をぼ〜っと考えていると、

「じゃあ、私行くね。藤原君、また明日。」

そういって姫子は新一に手を振り、バイクを出発させた。

「あ?ああ。」



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