*Secret Face






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「――――・・私、お手洗い行って来るねぇ。」

そう言って、ふらふらっと立ち上がる姫子の体を慌てて支える。

「あぁ。もう危ねぇ・・・俺も一緒に行くから。」

「よっ、ご両人どこしけこもうってのぉ。」

「シン〜、トイレで姫子ちゃん襲うんじゃねぇよぉ〜。」

(クソッ。酔っ払いめっ・・・死ねっボケっ!!)

部屋を出る背中に浴びせられる野次に、ムカつく気持ちを抑えつつ姫子を支えながらトイレへと向かう。

トイレに入って暫くして出てきた姫子は、ふらふらっと歩み寄ってきて新一の体に抱きつく。

「・・・・・新一ぃ。」

「ん?どうした?」

「・・・・・酔っちゃったぁ。」

新一の胸に顔をうずめながら、うふふ。と笑う。

(か・・・可愛い過ぎる。ヤベッ・・・理性が。)

新一が理性と格闘していると、追い討ちをかけるように姫子が呟く。

「ねぇ・・・ぎゅってして?」

「姫子・・・・。あぁ、もう。何でこんなトコで、んな事言うかなぁ。」

「やぁ。ぎゅってしてぇ。」

姫子の潤んだ目で訴えられると勝てない新一。――――彼はぎゅっ。と姫子の小さな体を強く抱きしめる。

「んふふっ。新一、好きぃ〜。だ〜い好きぃ。」

「お前ね、こんなとこで言うな。」

「え〜、どうしてぇ?」

「・・・・・ヤリたくなんだろうが。」

「やぁ〜ん、新一のエッチぃ。」

ケタケタと新一の腕の中で笑う姫子に、苦笑を漏らす新一。

(これって酔っ払い高校生の出来上がりだよな・・・いつもの姫子なら「何言ってんの、バカ!」 って言う所だぞ。酔っ払いだけに、タチ悪ぃ・・・。)

対応に困ってる新一にまた更に追い討ちをかける姫子。

「ねぇ・・・ちゅぅ。して?」

「は?ここで?・・・出来る訳ないだろ?いや、したいのは山々なんだけど・・・あいつらに 見つかったらまた何言われっか分かんねぇだろ。」

「いや〜ん、したいぃ!!」

(コイツ、酔っ払ったらこんな大胆になんのかよ・・・『したい』って・・ いや、待て。違う意味に聞こえてくんぞ・・・うぅ、頑張れ、俺の理性!!)

ムラムラっと湧き上がる欲望を押さえ込み、何とかその場を逃れようと姫子の体を離そうとすると、 彼女の腕が新一の首にまわる。

「おわっ!ひっ姫子?」

「・・・・・ダメ?」

可愛く首を傾げ、上目遣いで見上げる彼女に勝てる筈もなく――――新一は姫子のぷっくりとした 心地よい唇に引き寄せられるように自分の唇を重ねる。

(勝てる訳ねぇだろ、この顔に・・・あぁ、もうチクショウっ!!)

重なったが最後、軽いキスでは済まなくなる。次第に深くなるキスに姫子の口から吐息が漏れる。

「んっ・・・ぁ。」

(ヤバイっ!マジやばいって・・・この声聞いたら止まんないんだって・・・こんな所をあの連中に 見られでもしたら――――・・)

「どわっ!マジで襲ってやがる!!」

「ぶっ!!・・・なっお前・・・何でここにいんだよっ!」

(何故タイミングよく現れる・・・・・)

2人の前にニヤニヤと薄笑いを浮かべた友人が姿を現す。

「何でいるってトイレしに来たからに決まってんだろぉが。シンこそ何マジで襲ってんだよぉ・・・ って、まぜて♪」

「だぁっ!バカかてめぇはっ!!まぜる訳ねぇだろ。さっさとトイレ行って来いよ!!」

うひょひょ〜。と両手を広げながら迫ってくる友人の顔を掌で押し返す。

(ヤバイ・・・またこれで何言われっか・・・・・・。)

「ちぇ。ケチぃの・・・うひひっ。戻ったらみんなに報告しようっと。」

そういい残してトイレに姿を消す友人を見ながら、さっさと帰ろう。と心に誓う。



***** ***** ***** ***** *****




帰り際、目一杯の冷やかしを背に受け居酒屋を後にした新一達。

相変わらず姫子は千鳥足で、足元が覚束ない。

そんな彼女を支えながらマンションまでたどり着くと、以前もらった合鍵で鍵を開け中に入る。

「ほら、姫子。着いたぞ・・・水飲むか?」

「ん〜?水ぅ?・・・うふふ、飲むぅ。」

(・・・・・完璧酔っ払ってやがる。)

新一は深いため息を付くと、コップに水を汲みベッドに腰を下ろす姫子の元まで運ぶ。

それを受け取ると、こくっこくっと喉を鳴らしながら飲み干し、ふぅ。と一呼吸置く。

「落ち着いた?」

「・・・うむ。」

(うむ・・・ね。襲いたいのは山々だけど、この酔っ払いじゃあなぁ・・・このまま寝かせるか。)

「ほら。姫子、パジャマに着替えるぞ。服脱いで。」

「は〜い。」

にっこり笑いながら、姫子はバサッバサッ。と着ている物をそこいらに脱ぎ散らかす。

「おまっ・・・もっと大人しく脱げねぇか?あぁ・・もぅ。ちょっと待てよ、パジャマ出すから。」

「暑いから着たくないぃ〜。このままいる!」

「このままって・・・ブラとショーツだけで寝る気かよ。風邪引くって!ほら、着せてやっから。」

「やぁ・・・暑いから着たくないの。」

姫子は小さくいやいや、と首を振るとベッドの上でぺちゃんこ座りをして両手を前につくと

「新一ぃ・・・えっちしよ?」

と、可愛らしく首を傾げ新一を見上げる。

その姿が何とも言えずいやらしくて色っぽくて可愛すぎた。

「おまっ・・・。」

突然のその言葉に新一の気持ちが大きく揺らぐ。

今まで言われた事のない言葉・・・求めるばかりで姫子から求められた事がないだけに 酔っ払いの言動とは言えど無性にその言葉が大きく頭の中に広がる。

(反則だろ・・・この格好で、んな事言われたら。ってか姫子から誘われるなんて・・・いや、 待て・・ダメだ。コイツは今酔っ払ってんだ。そんな時にヤル方が反則だろ。)

たじろぐ新一にベッドから降りて歩み寄ると、徐にシャツを脱がし始める姫子。

「おわっ!姫子っ何やってんだよ!!」

「・・・・・ダメなの?」

必死で食い止めようとする手が、姫子のその一言で止まる。

(ダメな訳ないだろうが・・・したくてたまんねぇのに。あぁ、もうダメ・・負けた。)



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