*Secret Face






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わいわいガヤガヤと酔っ払いの戯言が行き交い五月蝿いくらいの店内。

その居酒屋の一室で新一は姫子と共に新一の中学時代の友人に囲まれ座っていた。

一見タチの悪そうな面構えが10人程ずらりと並ぶ。

(どわぁぁ。すごい人達だ・・・金髪にロンゲにピアスにヒゲ面・・・怖っ!!)

姫子は座った途端、新一にそっと耳打ちする。

『・・・新一、中学の時ヤンキーやったん?』

『は?ヤン・・・何?』

『ヤンキィ!・・・不良やったの?って事。』

『あぁ。そういう意味ね・・・う〜ん、どうだろ。やんちゃはやってたかなぁ。こいつらと授業 ふけてゲーセンで遊んだり、ファミレスで時間潰したり・・・クスッ、そういえば学校でチャリンコ 乗り回したりしてたっけか。』

・・・そういうのヤンキー言うねんで。

そう言葉に出しかけてグッとそれを飲み込む。

『けど、別に誰にも迷惑はかけてねぇぞ。あ、センコーにはかけたかな?ま、こいつら タチ悪そうだけど、中身はいいヤツらばっかだから。安心しろって。』

『うん。それは前に会った人達でも分かるけど・・・一見怖そうやし遊んでそう。』

『クスクス。それは否定しねぇよ、ガラ悪そうだもんなぁこいつ等。しかも「遊んでそう」 じゃなくて実際遊んでいやがるし。』

『新一も私と付き合う前はそうだったもんね。』

意地悪く微笑むと、今は違うだろ!と、むすっとした表情を見せ頬を軽くつねられる。

そんな事を2人してコソコソと話していると、横から友人の一人が呟く。

「おいおい〜。2人の世界に入ってんじゃねぇよ・・・寂しいじゃんかよぉ、俺ら。」

「あ?悪ぃ悪ぃ・・・で、何の話?」

「まだ何も話してねぇよ。染谷らからシンがマジ惚れの女が出来てから変わった〜って聞いたから 今日、こうやって集まったんじゃねぇかよ!で、紹介しろよぉ。お前の女。」

(・・・また笑いモンかよ。ったくそろそろ落ち着かせろっつうの!集まるって連絡をもらった時に 姫子も一緒にって言われてちょっと引っかかったんだ・・・くそっ、連れて来なきゃよかった。)

新一はニヤニヤ笑う友人を睨みながら、一つ大きくため息を付くと、

「こいつ・・・。」

そう呟きながら自分の隣りに座る姫子を見る。

今日の彼女は、少し胸の開いた淡いピンク色のキャミソールに細いチェック柄のシャツを 羽織り、プリーツのミニスカートを身にまとっていた。コンタクトで少しグロスを塗っている 姫子はやっぱり目を惹かれる。

「あっ・・・小暮 姫子です。どうぞよろしく。」

姫子も少し頬を赤らめながらペコッとお辞儀をした。

おぉ〜。と周りの連中からどよめきが起き、奴らの好奇の目に新一は内心ムッとする。

(おぉ〜・・じゃねぇよ、おぉじゃ!ぜってぇ指一本触れさせねぇからな。)

そんな事を考えながら、自分に引き寄せるようにそっと姫子の腰に腕をまわした。

ん?という表情を見せる姫子に対し、何でもねぇよ。と微笑むとメニューを広げる。

そんな小さな事にもイチイチどよめきが付きまとうから鬱陶しい。

(気にするからムカツクんだよな。気にせず・・――――)

「姫子ちゃん、シンのどこに惚れたの?ま、顔がいいのは認めるけどさ。コイツ冷たいっしょ?何なら 俺が変わりに・・――――。」

「だぁぁっ!お前それ以上言ったら殺すぞ!!こっから先に入ってくんなっ!!」

友人が姫子の肩に手を置こうと動いた瞬間、新一は慌ててメニューを閉じると彼女の隣りに座っていた友人との間に 手で線を引く。

一瞬の沈黙の後、店内に笑い声が響き渡る。

「ぶははははっ!こりゃ傑作ぅっ!!たまんねぇっ!!!」

「うひひひひぃ〜〜。シン、ガキじゃあるまいし、それはないっしょ?」

「マジでマジで!!何ソレ。えんがちょ切った?バリヤ??小学生かよ。」

各々が目に涙を浮かべて腹を抱えながら笑い転げる。

(クソッ・・・・・頭痛ぇ。)

新一は片手で頭を押さえると、そっと姫子の顔を見る。

「クスクスッ。」

「・・・・・笑いやがったな。」

「んぐっ・・・いや別に・・・笑ってないよ?」

含み笑いをする姫子を見ながら、 先が思いやられる・・・・・そんな事を思い、ぶすっ。と新一はメニューに視線を落とした。



***** ***** ***** ***** *****




新一のネタで笑われ続け、そろそろ1時間が経とうとしていた。

「あぁっ!もう鬱陶しい!!俺の話題はいいだろうが!!違う話しろよっ!!」

「いいじゃんかよぉ。面白ぇもん。あのシンがだよ?これ以上の酒の肴はないって!!あぁ。酒が うめぇ!!あ、姫子ちゃんも飲んで飲んで♪」

「あっ。どうもありがとう!」

「うわっ。姫子!お前もそんな酒を飲むんじゃねぇって!!しかも日本酒って・・・」

「え〜。だっておいしいよ?」

姫子は注がれた日本酒をおいしそうにちょびっと口に含む。

お酒のせいで頬が少し赤く染まっていて飲む仕草が妙に色っぽい。

そんな彼女の姿に新一の喉がごく。っと鳴る。

(ちょっと待て・・・色っぽすぎんだろ、コレ。目も虚ろになってきてるし・・・俺にもたれ掛かって きてるって事は・・・)

「姫子・・・・・お前酔ってんだろ。」

「ん〜・・・酔ってないよぉ・・・・でも暑い〜。」

姫子はそう言うと、徐に上に羽織っていたシャツを脱ぎ出す。

途端に露になる姫子の白い肌と自然に目が行く胸の谷間。

周囲の輩が、ごく。っと喉を鳴らすのがわかる。

「おわぁぁっ!姫子!脱ぐな!!って、お前ら見るんじゃねぇ!!」

慌てて姫子の脱ぎ捨てたシャツを奪ってもう一度羽織らせると周囲を睨む。

「えぇ〜。いいじゃんかよぉ、減るもんでもねぇし。」

「減る!!」

「いやぁ。暑いぃ〜・・・キャミソール着てるから大丈夫だってぇ〜。」

「だから、お前は脱ぐなって!!」

「姫子ちゃんもそう言ってんだからさぁ。いいじゃん!!ねぇ、姫子ちゃん♪」

「よくねぇ!それ以上何か言ったらぶっ殺すぞ!!」

少し離れた席に座っている友人に向かってそう叫ぶ。

(今日の服装を見たときにヤバイと思ったんだ。シャツ着てるからいいかとは思ったんだけど キャミだけの姿なんかになってみろ。肌丸出しじゃねぇか。こんな奴らに見られるなんて絶対ぇ嫌だ!!)

「おぉ怖ぇ〜。んな事言ってっけど姫子ちゃん脱いでんぞ。」

「うわっ姫子!脱ぐなって言ってんだろっ!!」

「いやっ!脱ぐ!!暑いもんっ!!!」

姫子に翻弄されている自分を見ながら笑う友人達を尻目に、未だにシャツを脱ごうとする姫子を 阻止しようと悪戦苦闘の新一。

(だぁぁぁ!!もう・・・・・・・・疲れた。)



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