*Secret Face









友人に連れて来られたのは、街の一角にある居酒屋だった。

中に入ると会社帰りのオヤジやOL。大学生などで賑わっていた。

店で働いているバイトの子はみんな忙しそうに走り回っている。

「おい、そのかわいいって娘、どこにいんだよ?」

新一が店の中を一通り見渡して呟いた。

「あれ?おっかしいな。いね〜なぁ。まだ入ってないのかな?」

友人も辺りを見渡すがいないようで肩をすくめる。

「いらっしゃいませ。お客様4名様ですか?こちらへどうぞ。」

入り口で立ち止まっている新一達を、一人の店員が奥へと促した。

それに従い、新一達も席に着く。

ま、しばらくしたら来るんじゃね〜?と言う友人の言葉に、とりあえず目に付く物とチューハイなどを適当に注文した。



しばらくは、取り留めの無い話で盛り上がっていた。お互いの学校の事や部活の事、何で新一ばっかりモテるのか、とか。

そんな話をしていると、

「あっ!!来たっ!!」

と、突然友人が呟いた。

その声に振り返るも、丁度新一の位置からは彼女らしい子の後ろ姿しか見えない。

(くそっ、見えね〜。)

その子の後ろ姿はとても小さく華奢に見えた。肩の下まで伸びた綺麗な黒髪が印象的だった。

「あの子さ〜、俺らと同じ高校生なんだけど訳あって学校に内緒でバイトしてるんだってよ」

通い詰めて聞き出したのか、友人は得意げに話す。

「中学まで関西にいたらしくてさ、たまに関西弁が出るんだよね。それがまたかっわいくてさ」

(関西弁・・・確かあいつ・・・小暮もそうだったよな。あ〜でもそれはありえねぇよな・・・。
あいつが違反までして居酒屋なんかで働くようにも思えないし。)

ずっと後ろを向いているのも疲れ、変に思われるのも嫌だったので新一は体を机に向き直した。

必死でその子に気づいてもらえるように手を上げる友人を横目に新一は、くいっと残りのお酒を飲み干した。

それと同時くらいに友人の努力が報われ、お目当ての子が気が付いてオーダーを取りに来る。

「ご注文はお決まりですか・・・ぅっげ!!」

(・・・ぅっげ?・・・)

注文を取りに来たその子の対応に疑問を感じ、新一はふと顔を上げる。

目があったその子はとてもかわいく、サラサラのストーレートな黒髪と大きな瞳が印象的だった。

(・・・何だよこの反応。もしかして固まってる?・・・ん?でもこいつどっかで・・・・・。)

「姫子ちゃん、久しぶり〜。オーダーいいかなぁ?おい、新一とか何する?」

友人は嬉しそうに顔をほころばせ、メニューを広げている。

(・・・・・姫子・・・・・姫子・・・?あ・・・!?)

「え・・・・・小暮?」



←back top next→