*Secret Face










帰り道、彼女にしつこく「買い物に行きたい」とせがまれたが、この後中学時代の友人と会う約束があったので、無理矢理引き剥がし自宅に帰ってきた。

(何で女ってあ〜もシツコイかね。どうせ、買い物ったってあちこち引っ張りまわされるだけだし。)

新一は昔からとても女にモテた。

すらりと背が高く、スッと通った鼻筋。少し伸ばした髪の毛は茶色に染まっていて、瞳の色とよく合っていた。

街を歩くと逆ナンやスカウトの声もよくかけられる。

だから別段「彼女」というものに不自由はなかった。

別れるとすぐに違う子が告白してきて同じような付き合いが始まる。

新一は束縛されるのも嫌だったし、街に出て自分を見せびらかすように腕を組み、横を歩かれるのも嫌だった。

『顔』だけで寄って来られ、付き合ったらあったで、「冷たい」だの「優しくない」だのと、文句を言って去っていく彼女達にうんざりしていた。

そういう事もあってか、女の子と付き合う時はいつも冷たくあしらってしまう。

(俺って本気で女と付き合えね〜のかも・・・)

今回の彼女も以前付き合ってた彼女と別れた途端告白された。

ま、学校内でも上位の人気を占める綺麗な彼女に告白されて、嫌な気がする筈も無く。

だから付き合ったのだけど・・・。

(あいつも今までの奴と一緒で、俺をただ横に置いて自慢したいだけなんだよな。顔がいいってだけで。タバコくせ〜し、香水くせ〜し。・・・ってか高校生のクセにタバコなんて吸ってんじゃね〜よ。)

新一は大きくため息をつき、私服に着替え約束の場所へと急いだ。



約束の場所に行くと、もう友人達は集まっていた。

「おせ〜よ、シン。何やってたんだよ!」

「悪ぃ〜。女がうっさくてさ。無理矢理引き剥がしてきた。」

「おいおい、何だよ。ま〜た新しい女かよ。いいよなぁ〜シンは昔っから女に不自由無くってさ〜。一人でいいから回してくれよ。」

「ば〜か、女なんて鬱陶しいだけだぜ?束縛するし、見世物みたいに連れまわすしよ。」

「そんなのお前の顔がいいからだろ〜がよ。くっ〜〜うらやましいねぇ。俺も一度でいいからそんなセリフ言ってみて〜〜〜。てか、相変わらずクールなお付き合い?」

「あ?だって面倒くせ〜じゃん。まとわりつかれるのとか嫌だし。かと言って性欲が無い訳でもね〜し?どうせ付き合っても「優しくない」とかって去って行くんだから。ま、適当にな。」

「っか!!言ってくれるね〜。俺はここ1年程ご無沙汰だっつうのによ〜。お前本気で恋愛してみろって〜の。あ〜、シンが女に本気になった姿見てみて〜〜!!マジ笑えるっ。」

「ご愁傷様、んで余計なお世話・・・で、今日はどこ食いに行くんだよ。」

新一は、横で騒ぐ友人の頭にヘッドロックをかけた。

時刻は7時を回っており、夏前だと言っても少し辺りが薄暗くなってきた。

街にはポツポツと灯がともり始めている。

「実はさ〜。最近行ってる居酒屋に、超かわいい娘がいるの発見しちゃったんだよね〜。」

友人の中の一人がニヤっと笑った。

「は〜?また女かよ。お前懲りないね。前もそんな事言って通い詰めて玉砕してたじゃね〜か。」

「いいじゃね〜かよ〜。それくらい楽しみがあってもさ〜。寂しい一人身なんだから。」

(一人身って・・・・・・こいつは他に楽しみがないのかよ。)

新一は小さくため息をついた。



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