*Secret Face










「かんぱ〜い!!」

待ち合わせ時間の7時までに全員が揃った為、少し早い開始となった。

友人の言う通り、4人共そこそこの女達だった。

ズバ抜けてかわいいのはいなかったけど。

「じゃあ、とりあえず自己紹介という事で・・・」

友人がお決まりの進行を始める。ヤツの鼻の下は伸びきっている。

(間抜け面・・・・・やってらんねぇ。)

「・・・で、最後にこっちですました顔して座ってんのが藤原新一。俺らはシンって呼んでる。」

一斉に女の子達の視線が新一に集まる。

「きゃ〜〜っ!!シン君すっごいカッコイイ!!私の好みぃ♪」

「ね、ね。彼女とかいるの?私、2号でもいいから付き合ってよぉ!!」

「あっずる〜い。私もぉ。見た時から気に入ってたんだぁ。」

それまで黙っていた女の子達は堰を切ったように口々に話し出す。

(久々出たよ。・・・・・あ〜うぜぇ。)

新一は無表情で眉を寄せる。

「ね、席替え〜〜♪私シン君の隣ね。」

「あっ、ずるい〜。私も隣がいい〜。」

男性陣をまるで無視するかのように、女性陣は盛り上がる。

そして気が付けば、新一の両脇にはベタベタと張り付くように女の子が座っていた。

残された男性陣も苦笑しながら、何とかこっちに向いてもらおうと必死で盛り上げている。

(だから、来たくなかったんだよ。しかもこいつら香水くせぇ!!飯食って早く帰ろう。)

そんな事を考えながら、新一はメニューに目を通した。

「ね、シン君何食べる?私コレ食べたいなぁ。半分こしない?」

新一の横に座った一人が自分の胸を押し付けるように、新一の腕に寄り付いてきた。

「は?食いたきゃ、一人で食えば?香水くせぇからあんま寄んなよ。」

「きゃ〜。シン君ってクールなんだぁ。カッコイイ!!益々惚れたわ。ねぇ、付き合ってよ。」

「あ〜。俺マジで惚れてる女いるから、他当たれば?今日は飯食いに来ただけだし。」

「いいじゃない。あなたくらいのレベルなら2号とかいるんでしょ?遊び程度でいいからさ。」

(・・・・・バカ女。)



新一は腕に絡み付いてくる女の腕を、足蹴に交わしながら注文をする為に手を上げた。

「すいませ〜ん。注文を・・・・・げ!?」

カウンター付近で佇む店員と目が合い、一瞬にして新一の表情が固まる。

(・・・・・冗談だろ)

そこには、今日いるはずもない姫子の姿があった。

ジト目で新一を見る、冷やかな表情の姫子。

(何故いる・・・・・)

慌てて立ち上がり姫子の元へ駆け寄ろうとすると、姫子の方がすっと違う席へと行ってしまった。

何でだよ。今日は休みじゃなかったのかよ。

新一はポケットから携帯を取り出すと、履歴を出した。

メールが一件。新一が店に入る直前くらいに入っている。

どうやら、バイブにしたつもりがサイレントに設定されていたようで気が付かなかったらしい。



《ごめんね、今日急にバイトの子が一人休みになったらしくて入る事になりました。

バイト終わったら連絡します。友達とゆっくりしてね(o^▽^o) 姫子》



・・・・・最悪。

新一は額に手を当てると、はぁっ、と大きくため息を付いた。

何で今日に限ってバイトなんて休みやがる。何で代わりが姫子なんだよ。恨むぞ、チクショー。

(あぁ、もう最低。やっぱ来るんじゃなかった・・・。)

「俺、やっぱ帰るわ。」

そう言って立ち上がる新一を両脇から女達が腕を取った。

「え〜、やだぁ。いいじゃないもう少しご飯だけでも食べて帰りなよぉ。」

「そうだよ、シン。何慌ててんだよ。一次会出席の約束だろ?ほら、座れって。」

少し酔いがまわってきているのか、赤い顔をして友人が座るように促す。

(おめぇのせいでなぁ!!・・・・・)

そう新一は叫びたかった。

それから、コンパの間中姫子がこちらの席に来る事は無く・・・・・。

新一は最悪の気分でその場をやり過ごす事になった。



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