*Secret Face ところ変わって、ここは姫子の部屋。 二人並んでローソファーに腰掛けている。何かの番組がブラウン管から流れているものの新一はそれを理解する程余裕はなかった。 終始無言のおかげで。 あの後、新一は2次会に引っ張って行こうとする彼女達を無理矢理引き剥がし、姫子のバイトが終わるまで、店の前で待っていた。 出てきてから、家に着くまで姫子は一言も話さない。 怒ってる風でも泣いている訳でもなく、ただ無表情で無言に。 (はあ・・・いっそ怒鳴られた方がいいんだけど・・・無言が一番堪える。) 「な、なあ・・・姫子?怒ってんのか?」 沈黙が耐えられずに、新一は窺うように口を開く。 「何?藤原君。・・・私別に怒ってませんけど?」 姫子はこちらを向く事なく、淡々と話した。 (・・・藤原君て。・・・・・怒ってんじゃねぇかよ。) はあ、と大きくため息を付くと新一はぐしゃぐしゃっと自分の髪の毛を掻き毟る。 「あ〜っ!!なぁ、いい加減機嫌直してくれよ。悪かったって、内緒でコンパ行ったりして。中学ん時のダチが頭数足りないからって無理矢理呼ばれたんだよ。もう行かないから、しゃべってくれよ。・・・無言が一番堪えられねぇから。」 「・・・じゃない。」 「え?」 「そんなんで、腹立ってるんちゃうねん!!私がしゃべらん理由わかる?」 (やっぱ怒ってるんじゃねぇか・・・。しかも関西弁丸出し・・・) 「・・・コンパ行ったからだろ?」 「ちゃうわっ!そりゃ、コンパに行かれたのもショックやけど。それよりも何よりも『嘘』を付いた事!」 「嘘?」 「そう!!何で今みたいに正直に言うてくれへんかったん?友達に頼まれたから行ってくるって。 私だって理解できるつもりやで?友達に頼まれて仕方なく行かなあかん時があるって。恭子がいつも言ってるから。頼まれてどうしても断れない時だってあるって。それをわざわざ電話してきて友達と食事してくるからお前も食べて来ていいよって変な嘘付いて!!私言うたよね、新一を信用してるって。その気持ちを踏み躙るの?嘘を付いてやましい事をしようと思ってたん?」 姫子は少し涙の溜まった瞳で新一を見上げる。 その顔はどこか悲しげで。 「やましい事なんて・・・する訳ねぇだろ!!俺はお前しか見えてないんだから。」 「・・・だったら、嘘付いてまで行かんといて。正直に言うてよ。」 「正直に言ったらお前怒らないのかよ。」 「怒るに決まってるやん。」 (・・・・・・ですよね。) 「新一の事好きやから怒るに決まってるやろ?・・・でも、嘘付かれてコンパ行ったの知ったら私の事嫌いになったんかな?他の人探しにコンパ行くんかな?ってむっちゃショック受ける。いらん誤解をして、新一と喧嘩せなあかんやん。そんなん嫌や。」 「・・・姫子」 新一は頬を伝わる一筋の涙を拭いとると、姫子の細い身体を抱きしめた。 参ったな。あんだけ前は束縛なんてされんの嫌だったのに・・・こいつにだったら愛されてるって 感じで安心までしちまう。何でも聞いてしまいそうで・・・・・惚れた弱み? 「マジ・・・嘘付いてごめん。今度から正直に言うよ。でも、最初はちゃんと断ったんだからな。しかも俺、マジで行きたくなかったんだよ。今後も行きたくねぇし。」 「分かってるよ。店での新一の顔見たら、大丈夫って思えたから。」 「当たり前だろ?俺はお前以外いらないの!!」 「・・・鼻の下伸びてたら、ビール瓶でどついたろう思っててん。」 「・・・・・・」 怖いって・・・。マジでどつかれそうだし。 「今日、恭子と買い物行った時に作って新一に渡そうと思ってた物があるんやけど、やめた。 今後の行いがよかったら渡す事にする。」 「何の話だよ。」 不思議そうに首を傾げる新一を見てくすっと笑うと、カバンの中からハートのキーホルダーが 付いた物をぶらんぶらん、と目の前で揺らす。 「・・・・・鍵?」 「合鍵。」 「どこの?」 「ここの。」 「ここのって・・・嘘!!マジで!?俺にくれんの?」 「今後の行いがよければね。」 姫子は悪戯っぽく新一に笑いかける。 「うわっ、マジで。すっげぇ嬉しい。もぉ姫子最高!!」 ぎゅっと姫子の身体を抱きしめると、頬や瞼などいたるところにキスを浴びせる。 「んっ!!・・・ちょ・・新一・・・きゃははっ!・・今日あげるって・・言ってない!!」 「嫌・・・今日ほしい。」 「嫌って・・・んっ・・・新一が・・・ぁ・・ん・・・悪いんでしょ?」 「だから、ごめんって。・・・くれるって言うまで・・・キス攻め」 新一は姫子の身体をソファに押し倒し、ちゅっと音を立てながらキスを続ける。 「あっんぁ!・・・ずるいぃっ!!・・・ぁっダメよ。んふふっ・・くすぐったい・・んっ」 「くれる?」 「ダメ」 「・・・じゃあ、いいよ。作戦変更。先に姫子もらうから。くれるって言うまで何度でもする。」 ニヤっと笑うと姫子の着ているキャミソールをたくし上げると、胸元に唇を這わす。 「きゃっ!!いやっん。そんなのずるい!!・・・何も言えなくなっちゃうじゃない。」 「それが狙い。」 「バカッ!!・・・ぁ・・ん。も、もぉ分かったから。あっあげる!!だからちょっと待って。」 「最初からそうやって素直にくれればいいのに。」 してやったり顔の新一を軽く睨んで、姫子は鍵を差し出した。 「卑怯者!!」 |