*Secret Face










『よぉ、シン。今日暇か?暇だったらちょっと付き合ってほしいんだけど。』

金曜日の午後、学校が終わり家でのんびりテレビを見ていた新一の携帯に、友人から連絡が入った。

以前、姫子の事を気に入ったと言って居酒屋に連れて来た中学時代の友人である。

新一は何故か嫌な予感がしたけれど、会話を続ける。

「あ?何だよ。暇は暇だけど・・・」

『あのさぁ、これからコンパなんだけどメンツが一人ダメになって足りなくなったんだよね。シンが いるだけで、雰囲気違うからさ。来てくれよぉ。』

(きた・・・・。こいつから電話くる時って対外女絡みなんだよなぁ・・・。)

嫌な予感が的中し、新一はひとつ息を吐いた。

「は?俺、女いるからダメ。行く気ねぇし、他当たれよ。」

『そんな冷たい事言うなよぉ。一次会だけでいいからさ。女の子も結構いいメンバーなんだよ。俺にチャンスをくれぇぇ!!』

受話器から聞こえてくる友人の声が懇願するように訴えてくる。

「一人足んなきゃ無しで行きゃぁいいだろうが。」

『向こうが4人じゃなきゃやらないって言うんだよぉ。それに、シン前は女いても来てくれたじゃんか。なぁ、頼むよ。』

「前までの女はどうでもよかったからな。今はマジに惚れてる女だから嫌なんだよ。」

『えっっ!?何、お前本気になった女出来たのかよ!!聞いてねぇぞ。』

(・・・・・言ってねぇもん。)

『男の友情より女を取るのかよ!!バレなきゃいいじゃんよ。な、少しだけでいいから頼むよぉ!!』

「だぁ〜っ!!わぁったよ。行くよ、行きゃぁいいんだろ?でもすぐ帰るからな!!ボケッ!!」

『ボケって・・・助かるよぉ、シン。それでこそ友だ!!』

何が友だ、と思いながら新一は小さくため息を付く。

コンパなんて姫子が知ったら何て思うか。

今日は親友の恭子とバーゲンに行くとか言ってたよな。

夜、家に行く約束してるからそれまでに間に合えばいいか。

あぁ、でも気が咎める。・・・前まではこんな風に思う事なんてなかったのにな。

新一は思わず苦笑をしながら、受話器を反対の耳に当て変える。

「んで、どこ行きゃいいんだよ?」

『前、一緒に行ったろ?姫ちゃんがいる居酒屋。あそこのサービス券持ってっからさ!!7時な。』

「えっ!!うゎっ・・・ちょ、そこは・・・・」

新一が慌てて受話器に話しかけるも、んじゃ、よろしくぅ。と悲しくも切られてしまった。

最後まで話を聞きやがれ!!・・・・・ヤバイ。

いくらバイトが休みとは言え、姫子のバイトしている居酒屋でコンパなんて・・・。

新一は一旦携帯の「切る」ボタンを押して、お気に入りボタンを押すと一番最初に出てくる名前を選択し通話ボタンを押した。



『もしも〜し?』

受話器から聞こえてくる声は、周りがうるさいせいか少し張り上げて返ってくる。

「もしもし、姫子?お前、今日バイト休みだよなぁ?」

『・・・新一?うん、そうだけど。どうしたん?何か用事出来たの?』

(よかった。バイトに来る感じはなさそうだな。)

「いや、今日麻田と飯食ってくるだろ?俺も・・・ツレと飯食ってくるわ。」

言いながら少し気が咎めた。

『えっ、このまま帰ろうかと思ってたんだけど・・・恭子と一緒に食べて帰ってもいいの?』

「おっおぉ。いいよ、最近バイト休みだと俺ばっかと一緒にいたもんな。たまには食って来いよ。」

『ほんとにぃ?ありがとぉ!!・・・新一ヤケに今日優しいね・・・何かやましい事でも?』

「ばっ!!何言ってんだよ。んな訳ねぇだろうが。・・・お前以外に興味ねぇって言っただろ?」

(・・・以外に感が鋭いのかコイツ・・・)

『クスッ冗談よ。何慌ててるの?新一の事信じてるもん。じゃぁお言葉に甘えてご飯食べて帰るね。』

「あ、ああ。俺も飯食ったら、すぐにお前ん家行くから。また、連絡する。」

『うん、待ってる。でも友達と一緒だったらゆっくりしてきてね。じゃあ、後でね。』

電話を切ると、新一は大きくため息を付いた。

はぁ、胸が痛い。

・・・って、俺ヤマシイ事何もしてねぇぞ!!

断ったのに、無理矢理呼ぶツレが悪い。うん。そういう事で。

・・・・・どういう事だよ。

はぁ。コンパに行くのに、こんなに後ろめたい気持ちになるの初めてだ。

これまでだったら、何の躊躇いもなしにまあまあいい女がいたらそのままホテルにお持ち帰りだったんだけど・・・・・。

そんなことを平気でしてた自分がとてもバカに思える。

今日は飯食うだけのつもりで、早めに帰ろう。

どっちにしても、他の女には興味ねぇし。

《新一の事、信じてるもん。》

あぁ〜っ行きたくねぇ!!



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