*Secret Face 《今日、バイト休みなんだろ?部活も休みだから一緒に帰ろうぜ。》 そう新一から姫子の携帯にメールが入ったのは6限の始めだった。 (一緒に帰るって突然どうしたんだろう?学校では付き合ってる事内緒にしてるのに・・・。しかも当の本人は授業サボっちゃっていないし。どこに行けばいいんだろ?) 姫子は小さくため息を付くと、先生に見つからないように返信を打つ。 《藤原君、今どこにいるの?一緒に帰るってどこに行けばいい?》 ・・・まったく、よく授業さぼるのにどうして成績がいつも上位なんだろ? 私なんて授業受けててもちんぷんかんぷんなのに。 もしかして、影で猛勉強してるとか!?んー・・・藤原君、そんな事しそうにないしなぁ。 もともとの頭の出来が違うって事?それって不平等じゃない?? こっちは必死で勉強してるのに、いつも順位は中間あたり・・・・・。うぅ。 そんな事をあれこれ考えていると、スカートのポケットにしまった携帯のバイブが鳴る。 (うわっ!!び、びっくりした・・・・・。) 姫子はびくんっと身体をよじると、こっそりスカートから携帯を取り出す。 《今、屋上で昼寝中。帰る頃、またメールする。》 (・・・結構な事で。昼寝中ですか。うぅ、何かムカツクぞ。私だって眠いのにぃ。) 姫子はもう一度ため息をつくと、携帯をスカートのポケットに戻した。 かったるい授業が終わり、教室にいた生徒もほぼ帰宅してまばらになっていた。 新一からのメールは届いていない。 (もしかして、屋上で爆睡とか?・・・・・ん〜、屋上に行ってみようかな。) 姫子は少し迷ってから、屋上に足を向けた。 屋上の扉の前までたどり着くと、大きく息を吐いた。 ぎ〜〜〜っと鈍い音を立てながら、ドアが開く。 (どこにいるんやろ?) 辺りを見回しても新一の姿は見当たらない。キョロキョロしながら貯水タンクの裏に回ってみると、そこの丁度日陰になった縁に横になって眠っている新一がいた。 「お〜い、藤原君。起きて〜。帰る時間だよぉ。」 姫子はそっと近づいて、新一の耳に口を寄せるように跪いた。 (むぅ。身動き一つしないよ。・・・ほんとに爆睡?・・・わっ、睫毛なが〜。私も長い方だけど負けてるかも。ほんと綺麗な寝顔・・・・・しかも、肌綺麗。) 姫子は新一の頬に手を伸ばし、形のいい唇をそっと指先でなぞる。 (あ・・・勝手に手が触っちゃったよ。起きるかな?) んが・・・起きない。 突然姫子にムラムラとした気持ちが湧いてくる。爆睡している人間を前に悪戯をしてしまいたくなるのは人間の性というもので・・・・・。 自分の髪の毛を少し摘むと、鼻先にこちょこちょこちょ・・・・。 むむむっ!!無反応。 それならばと、ほっぺをムニっと摘む・・・これも反応なし。 (・・・・・おもしろくない!!) 何の反応も示さない新一に対し、姫子の悪戯心がより一層駆り立てられる。 耳に口を寄せると、ふっ。と息を吹きかけてみる・・・・・・もぉっっ!!起きない。 「こらっ、起きないなら、チューしちゃうぞ!!」 小さく呟きじっと寝顔を見つめ、姫子は彼の唇に自分の唇を重ねた。 ほんの一瞬。そのつもりだった。彼の腕が自分の身体にまわされるまでは・・・。 「・・・・・!!」 「・・・寝込みを襲うのは卑怯なんじゃなかったっけ?」 「わわわっ、ふ、藤原君、おっ起きてたの!!い・・・いつから?」 (悪戯してたのもバレてる!?) 姫子は慌てて起き上がろうと身体を起こしかけたが、新一の腕によって阻まれた。 「お前が屋上に来た時から。」 「お、起きてるなら起きてるって言ってよ。もう放課後だよ。爆睡してたの?」 「ん〜、してたかも?天気いいし、ここ日陰で気持ちよくってさ。」 新一は姫子の綺麗な黒髪を撫でながら、そっと微笑んだ。 (あ・・・優しい顔の藤原君だ。この顔、好きなんだよね。私にだけ見せてくれる顔。) 「ね、もう帰ろう?・・・で、腕を離してもらっていいかな?」 「まだ駄目。もうちょっとしてからな。まだ結構残ってるだろ?それにさっき俺の事いじられたから、お礼しないとな。」 よいしょ、と言って新一は身体を起こし縁に座ると、姫子を自分の片方の膝の上に座らせた。 もちろん、逃げられないように片方の腕は姫子の腰にまわして。 「えっ・・・やっ!!何してんの、藤原君!?」 「待つ間に、悪戯してくれたお礼にさっきの続き。」 「な、何よ。さっきの続きって?」 「ん?チューしてくれるんだろ?」 新一はニヤっと笑うと、姫子の顎に手を当てそっと自分に向けさせる。 「やっ、あれは藤原君が起きなかった場合の話で・・・もう、起きて・・・んっっ!?」 言い終わらないうちに、姫子は口を塞がれてしまった。彼の唇によって。 (や、やだ・・・ここ学校なのに・・・ふ、藤原君!!) 「んんっっ!!」 必死で抵抗するも、新一の手によって頭を押さえられている為唇を離す事ができない。 何度も何度も角度を変えて降り注がれる甘く優しく・・・次第に深くなるキス。 (藤原君て、やっぱりこういう事慣れてるのかな・・・キスするの上手い?あ・・・ダメ。) 次第に姫子の抵抗する力も弱くなっていく。 長いキスに息苦しくなって姫子の唇が少し緩む。そこからそっと新一の舌が割り込んでくる。 (・・・・・なっっ!!) びくっと身体が反応するも、抵抗する気にはなれなかった。 姫子はどうしていいかわからず、新一の舌の動きに翻弄されていた。 ぼ〜っと意識が遠のくような、感覚に包まれる。 しばらくしてそっと唇を離すと新一はニヤっと笑い 「お前のキスすっげぇ好き。離したくなくなる。」 と呟くとちゅっと音を立てて、もう一度軽くキスをした。 (・・・・・何か、キャラ変わってへん?藤原君てこんな事いう人だった?・・・しかもむちゃ笑顔。) 「もっ、もう何言ってんのよ。藤原君は、こういう事慣れてるかもしれないけど私は外で・・・とか慣れてないんだから。」 姫子は恥ずかしくて俯いてしまった。 はぁっとため息を小さく付き、姫子の顔を自分に向けさせるともう一度軽くキスをする。 「前にも言ったよな。俺、自分から誰かにキスしたことはないって。こうやって俺からキスしたくなるのも、離したくなくなるのもお前だけなの。今までのヤツとはこんな所でしたことなんてねぇよ。どっちかってぇとされるの嫌だったし、避けてた。俺だって慣れてねぇの!!」 「う・・・ごめん。」 姫子はすまなさそうに眉を寄せて新一を見上げる。 「あ〜もう、そんな顔で見んなよ。さっきの寝てる時に耳に吹きかけられた息もそうだけど、たまんない。我慢できなくなる。」 「へ・・・・・?」 |