*恋するオモチャ






――――あれから2週間。

戸田君は毎朝私を迎えに来て手を繋いで学校へ行き、毎日お昼を私と一緒に食べる。

最近では何だかそれが当たり前のようになってきて、朝になるのが待ち遠しかったり、お昼に屋上へ行くのが楽しみになってたりする自分が心の片隅にいた。

やだなぁ。なんか、女子高生に戻った気分。

ウキウキ、ワクワク・・・なんて、高校生相手に?22歳にもなった私が?

でも・・・・・なんで?

「・・・ねぇ戸田君?」

いつものように屋上で一緒にお昼を取りながら、私は隣りに座る戸田君を見る。

「なに?」

「どうしていつも朝迎えに来たり、お昼もこうやって一緒に食べるの?彼女とか・・・・・いないの?」

「いたらこんな事してないと思うけど?」

「でもさぁ、私とこんな所にいてたんじゃダメなんじゃない?」

「どうして?」

「ん〜・・だって他にたくさん同年代の可愛い女の子とかが隣りの棟にいるわけじゃない。こんなおばさん相手にしてないで、可愛い女の子相手にしてた方が楽しいと思うけど。」

そう、独り言のように呟きながら、赤いウィンナーを頬張る。

「あははっ。おばさんって・・・いづみちゃんも充分可愛いと思うけど?」

「またそうやって面白がって言う〜・・どうせね、私は22歳に見えない童顔ですよ〜だ。」

「だははははっ。そういう可愛いって意味じゃないんだけど。いづみちゃんてさぁ、結構自分の体にコンプレックス持ってるよな。背といい顔といい・・・もっと自分に自信持てば?」

おかしそうに笑いながら、戸田君はコロッケパンを美味しそうに頬張る。

自信を持てって・・・この体のどこに自信を持てと言うのよ。

私は少し頬をぷくっ。と膨らませて玉子焼きをお箸で突き刺す。

「そんな、人の事はどうでもいいから・・・自分の彼女を早く探したら?ん、まぁ。戸田君なら探さなくても見つかりそうだけど。」

「・・・・・いづみちゃんて結構鈍感?」

「はい?」

「なんで俺が毎朝いづみちゃんを迎えに行って、昼メシ一緒に食ってるか分かんない?」

「・・・・・?」

戸田君の言葉の意味が分からず、思い切り首を傾げる。

同じように首を傾げる戸田君と視線が絡み、思わず慌てて視線をずらした。

私ったら、何動揺してるの?

「まぁいっか。時間はまだあるし・・・長期戦で行くかなぁ。」

「へ?」

誰に向かって話してるのか、戸田君は青く広がる空を見上げながら、ぼそっ。と呟く。

・・・・・どういう意味?



――――その日の夜。

私は駅前の大きな本屋に雑誌を買いに立ち寄った。

ここって何でも揃ってるから好きなのよねぇ。立ち読みするのも楽しいし。

ラックに立てかけてある雑誌を手に取り、パラパラっとページを捲る。

暫くそれに集中していると、入り口の自動ドアが開き聞きなれた声が耳に届く。

「ったく、お前一人で本屋にも来れねぇのかよ。おこちゃま。」

「うぅぅうるちゃいっ。だってぇ夜道、怖いんだもん。幸太郎だって読みたい本があるって言ってたじゃない。」

え・・・あれって戸田君と・・・彼女?

戸田君と一緒に入ってきた女の子は彼を見上げて可愛らしく、ぷくっ。と頬を膨らます。

それをおかしそうに笑いながら彼女の頬を抓る彼。

戸田君は私に気づく事無く雑誌コーナーを通り過ぎ、奥の本棚へ彼女と一緒に進む。

雑誌を開いたままそのページを読む事なく、自分の意識が2人の会話に集中する。

「ねぇねぇ、幸太郎。あの一番上のヤツ取って。」

「あれ?もーっ、手のかかるやつ・・・ほれ。」

「ありがとぉ。幸太郎は?読みたい本あったんじゃないの?」

「あぁ、また今度でいいや。どうせお前、その本帰ってからじっくり読みたいんだろ?」

「えへへっ。だってこのケーキの本、ずっと欲しかったんだもん。幸太郎においし〜いケーキ一番に作ってあげるからね。」

「俺は毒味かよ。」

「あ、ひっどぉい。そんな事ないもん幸太郎の為に作ってあげるんだよ?」

「へぇへぇ。ま、美菜の作るやつは大抵ウマイからな。な〜んで料理とかお菓子とか器用に作るクセにそんなにドジなのかね?」

「・・・・・っぐふ。」

「クスクス。ほれ、早く買って帰ろうぜ。」

「あ、うん。ねぇ、帰りにアイスクリーム屋さん寄って帰ろう?」

「はぁ?またぁ?・・・お前、ほんっとアイスクリーム好きだな。」

「うん、だ〜い好き。ね、行こう?」

「はいはい、わぁったよ。っつうか、本屋にまで付いてきてやったんだから奢れよな。」

「えーっ!幸太郎に奢るのぉ?」

「何だよ、その不服そうな顔は・・・。」

「ぶぅっ。分かった・・・奢ります。ねぇ、何食べようっか?」

「そうだなぁ、俺は・・・。」

2人は話をしながら揃ってレジに向かい、お会計を済ませると仲良く本屋を出て行った。

・・・・・なんか、お似合いのカップルって感じ。

何だ・・・戸田君彼女いたんじゃない。お互いの名前を呼び合う程親しい仲の彼女が。

そんな事を思うと、心なしか気分がどんよりと陰りを見せる。

・・・・・あれ?何で、私落ち込んでるわけ?

戸田君に彼女がいたからって、別に私が落ち込む事ないじゃない。

そう自分に言い聞かせても、どうしても拭いきれない気持ちが自分を支配していた。

この気持ちって・・・もしかして本気で私・・・・・・

・・・本気で・・・何?

私は一瞬心を過ぎったモノを伏せるように、雑誌を静かに閉じた。



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