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*恋するオモチャ 私一人を除いて、盛り上がっていた彼らはそのノリのままこれからカラオケに行くらしい。 あぁ・・・もう帰りたい。 居酒屋を出たところで私は一人立ち止まる。 「・・・いづみちゃん？」 「あっと・・・私、今日は帰るね。帰って今日のレポートとかまとめなきゃだし・・・何か疲れちゃって。」 「えぇ、いづみ行かないの？」 「ん〜・・ごめん。でも、あんまりその子達振り回しちゃダメだからね。高校生なんだから。」 「クスクス。分かってますって。いづみの可愛い教え子なんだから、私たちも可愛がってあげるって。」 いやいや、そういう意味でなくってね。 私が、はぁ。と小さくため息を付いていると、戸田君が傍に寄ってきた。 「じゃぁ俺、いづみちゃん家まで送ってってあげる。」 「え・・・いっいいよぉ。子供じゃないんだから、一人で帰れるって。」 「夜道は危ないよ？誰かに襲われたら大変じゃん。」 「でも・・・。」 「いいじゃんいいじゃん、いづみ。送ってってもらいなさいよ。彼も立派な男なんだから、いざって時には助けてくれるって。」 ね。って言って戸田君に笑いかけてるけど・・・何か企んでるよね、その顔。 後から何聞かれるか・・・考えただけでも頭痛が。 「っつうか、幸太郎が送り狼になったりして？」 おっ送り狼？！ 「バーカ。俺はお前らとは違っうっつうの。」 「じゃぁ、戸田君。いづみの事ヨロシクねん。」 「オッケー。任しといて♪んじゃいづみちゃん、いこっか。」 こらこら、私を除いて話を進めるんじゃない・・・って、おーい。聞いてる？ 彼女達は私たち２人を残したまま、浮かれ気分で彼らと共にカラオケへと行ってしまった。 「ちょっちょっと・・・。」 戸惑う私に臆する事無く、戸田君は私の手を握る。 彼の温もりが自分の手に伝わった瞬間、ドキン。と心臓が一つ波打つ。 あれ・・・なんで、私ドキドキしてんの？ 「手、繋いであげる。」 「・・・・・なんで？」 「危ないから。」 「子供じゃないから。」 「ちっこいクセに？」 「背は関係ないでしょっ！！」 「ぶははっ。いづみちゃんて背の事気にしてんの？」 「べっ別に気にしてないもん。」 「いづみちゃん、かっわぃぃ〜♪」 ・・・・・絶対からかわれてる。 「あぁぁのねぇ、一応これでも教師として学校に行ってるんだから、ちゃんと『先生』って呼んでよ。」 「教職受かって教師になったらねぇ。」 「・・・・・。」 くっくそぅっ。 私は彼に手を引かれるまま夜道を歩く。 誰かと手を繋いで歩くのっていつ以来だろう？ 私に彼氏がいた時だから・・・２年前？・・・うわっ。もうそんな前？？ うわぁ。私ってば２年も彼氏いないのか。 あれ、でもこの子。さっきからさり気なく私を危なくないように誘導して歩いてくれてる？ 戸田君は車道側を歩き、時折すれ違う自転車や人の波に当たらないように、かばうように脇に避けてくれる。 へぇ・・・高校生なのに結構気が利くんだ。 「あ・・・ありがとう。私の家、もうすぐそこだからこの辺でいいよ。」 私はもうすぐそこ。と言うところで足を止める。 「え、どこ？」 「すぐそこ。」 「家の前まで一緒に行ってあげる。」 「ダーメ。送ってくれてありがとう・・・また明日学校でね。」 そう戸田君に微笑むと、彼は少し拗ねたような表情を見せる。 あ・・・なんか、可愛い。こんな顔されたら家ぐらい教えてもいいかなって思っちゃう。 ・・・・・・・いぃっいかんいかんっ！何を考えてるんだ、私は。 高校生と言えども相手は一応「男」なんだから、気安く自分の家を教えちゃダメっ！！ 「ちぇーっ。けっちぃの。教えてくれてもいいじゃん。いづみちゃん一人暮らしだろ？」 「だから尚更教えないの！！」 「教えてくんなきゃ夜這いできねぇじゃん。」 ・・・・・夜這い・・・する気だったのか？ 「バカな事言わないの。じゃぁ・・・お休み。」 「あ、いづみちゃん？」 戸田君の手を離れて歩き出す私に、彼の声が呼び止める。 「・・・・・なに？」 「睫毛にホコリ付いてるよ？」 「え、嘘！どこ？・・・・・とっ取れた？」 マスカラが落ちないように気をつけながら瞼をこすって戸田君を見上げると、おかしそうに彼は笑う。 何故笑う・・・そんなにみっともなくホコリがついてるの？ 「そこじゃないって。ちょっと目を瞑って、取ってあげる。」 「え、あ・・・うん。」 素直に彼の言葉を受けて、見上げる形で瞳を閉じる。 ・・・・・・が、一向に戸田君が取ってくれる気配は無く。 「・・・戸田君？」 「もぅ、いづみちゃん。典型的なモンに引っかかってどうすんだよ。そうやって男の前で無防備になっちゃダメだって。こうやって・・・」 突然戸田君の声が途切れたかと思ったら、頬に柔らかい感触が伝わってくる。 「ひゃっ！！」 「・・・急にキスされちゃうよ？」 「なっなっなっ・・・・・。」 何て事を急にするんだぁっ！！ 頬に手を当てたまま真っ赤な顔でたじろぐ私をそのままに、戸田君はにっこりと微笑んでから、じゃぁお休み、いづみちゃん。と言って帰って行ってしまった。 なっ何なの今の・・・。 |