*恋するオモチャ






「――――・・で、どうよ?最近の高校生の男の子は。」

仕事帰りのサラリーマンが集う居酒屋。

その一角で、私は大学の友人達と共にテーブルを囲む。

どうやらみんな「高校生の男の子」に興味があるらしく、目をランランと輝かせて私の言葉を待つ。

「どうって・・・ん〜。若いなぁって・・・。」

「それだけ?」

「それだけ?って、他に何があるのよ。」

「なんかさぁ、教えるクラスの男の子とどうにかなりそう。とかって無いの?」

「どうにかって・・・。」

どうにかねぇ・・・。そこで、ふとある男の子の顔が頭に浮かぶ。

「おっ!なによなによ、何かありそうな顔ね。ねぇいづみ教えてよぉ。」

「べっ別に何もないって!ただ・・・。」

「ただ?」

「のっけから『いづみちゃん』って名前で呼ばれた。」

「や〜ん、楽しそうじゃなぃ〜。年下の男の子に名前で呼ばれるっていいわよねぇ。」

「ほんとほんとぉ。私も呼んでもらいた〜い。で、その子は可愛いの?」

「え?・・・まぁ。可愛い・・かな。多分学校内でもモテてるんじゃないかな。背も高いし甘いマスクだし。」

ぼそりと呟くと、きゃぁきゃぁと言いながら彼女達は盛り上がる。

「私も若い男の子に囲まれてみた〜い。あ、ねぇいづみぃ。その子達と合コンしようよ!!」

「はっ?!」

「あ、それナ〜イスアイデア♪いいじゃんいいじゃん。年下の男の子で高校生なんて滅多とお知り合いになれないんだから、いづみ話まとめてよぉ。」

・・・・・それって犯罪でない?

22の女が高校生と合コンだなんて・・・ダメだ、あり得ない。

「もぉ、そんなの無理だって。高校生相手に合コンしてどうするのよ。」

「いいじゃん、話のネタに。」

何の話のネタだっつうの!!

私は高校生合コンで盛り上がる彼女達を見て、一つため息を付いてからカクテルを口に含み、何気なく視線を飛ばした席に目が止まる。



「ぶーーーーーーっ!!」

「うわっ・・・いづみ。何、急に吹き出してるの・・・汚いぃ。」

「ごっごめん。」

だって・・・だってよ?

視線の先に映ったモノ・・・制服から私服に着替えてて一見大学生に見えなくもないけど、紛れもなく今日母校で授業を教えた「戸田 幸太郎」率いるグループの姿だったんだもん。

なっ何故ココにいる・・・しかも高校生なのに居酒屋?!

私が口からこぼれたものをハンカチで拭き取りながら凝視していると、向こうもコチラに気づいたようで、戸田君が、パッ。と顔から笑みを漏らす。

いや・・・きっと人違いだ・・・そうよ、そうに違いない。

などと言う思い込みも空しく、彼は満面の笑みを浮かべながらこちらの席に近づいてくる。

「あっれぇ。いづみちゃんじゃん、どったの?こんな所で。」

「こっこんな所でって・・・それはこっちのセリフ。あなた高校生でしょ?高校生のクセに居酒屋なんて来ちゃだめじゃない。何してるの。」

「え、いづみ・・・彼が噂の?」

彼女達は戸田君を見るなり、いやらしい笑みを浮かべて私の顔を見る。

・・・なんだ、その何かを企んだ笑みは。

「噂?あれ、いづみちゃん俺の事話してくれてたんだっ。超感激!俺らも今いづみちゃんの噂話してたんだよねぇ。あ、ねぇねぇお姉さん達。よかったら俺らと一緒に飲みませんか?」

にっこりと彼が彼女達に微笑むと、瞬く間に彼女達の目がハートマークへと変化を遂げる。

・・・おぃおぃ。

私の噂話って何話してたんだ・・・一緒に飲みませんか?って・・・って、ちょっと待ったぁ!!

「ちょっと戸田君?一緒に飲みませんか?って。ダメでしょ・・・あなた達高校生なんだからこんな所にいないで帰らないと・・・」

「んもぅ、いづみったら何カタイ事言ってんのよぉ。あ、戸田君だっけ?オッケーオッケー♪一緒に飲もう。隣りの席くっつけたらいいからさ、こっちおいでよ。」

「マジで?うわぁ、こんな綺麗なお姉さん達と飲めるなんて最高だよ。ちょっと待っててあいつら呼んで来るから。」

戸田君が向こうの席へ行くのを見届けてから、彼女達が一斉に小声で話し始める。

「ちょっとちょっと、何よいづみ。むちゃくちゃ可愛いじゃないっ!しかも、あのテーブルにいるこ達でしょ?カッコイイ子揃い♪」

「あ、私左奥にいる子が好み。」

「えぇ!!私もいいと思ったのにぃ・・・でも戸田君って子も捨てがたいわよね。」

「私、全員好み♪」

・・・・・勘弁してよ。



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