*恋するオモチャ






どうやら私は「高校生の男の子」とお付き合いする事になったようです。

――――教育実習が終わるまで後4日。

教師を目指してやってきたこの高校で、彼氏見つけてどうすんだっ!!

はぁぁ。こんなんじゃ教師失格じゃ・・・って、まだ教師にはなれてないけど。

いいのかなぁ・・・これで。

いつものように授業をする為に田辺先生に連れ立って教室に入ると、いつものように教卓のまん前の席でいつものように可愛らしい笑顔を浮かべながら、いづみちゃん♪と呼ぶ、先日私の『彼氏』となった戸田君の姿。

・・・・・やりづらい。

私は極力彼の方に視線を向けないようにしながら、授業を進める。

だって、戸田君見るとキスした事とか色々思い出して顔が赤くなっちゃうんだもん。

それでもその状況を楽しむかのように、いつも以上にかまってくる戸田君。

――――・・絶対遊ばれてる。

『覚えてなさいよ。』そんな意味を込めた視線を送ると、『さぁね?』とでも言うような彼の表情。

くっそぅ。17歳の高校生如きに弄ばれてる気がするっ!!

あぁ、もう悔しい。




「もぅっ。授業中、私にかまわないでよっ!!」

昼休み、いつものように屋上で2人で昼食を取りながら戸田君に向かってそう吼える。

「あはははっ。超、面白かった。いづみちゃんてば俺と視線が合うと目が泳ぐし、顔が赤くなってくるし・・・すっげぇ可愛いの。」

「ちょっと、人の事オモチャにして遊ばないで。」

「えぇ?あれも俺の愛情表現だけど?」

「もっと他の表現にしてよ。マトモに授業できないでしょ?」

「うはははっ。そう?ん〜・・他の表現って例えばこんなの?」

そう意地悪く笑って私の肩を抱き寄せると、ちゅっ。と音を立ててキスをしてくる。

「ちょっちょっと戸田君?!学校でなんて事してくるのよっ。誰かに見られたらどうするの?」

「ここ、一応立ち入り禁止になってっから大丈夫。それに、いづみちゃんが他の表現にしろって言ったんじゃん。それと、こうやって2人でいる時くらい戸田君はやめろよ、幸太郎とか幸太郎君とか名前で呼んで。」

「それは・・・無理。」

「何でだよ。」

「だって一応私はここに教師として来てるんだから、そんな公私混同みたいな事できない。」

って、すっごい矛盾した事を言ってる気がするのは気のせい?

「あははっ。いづみちゃんらしい・・・じゃぁ学校から一歩外へ出たら、ちゃんと名前で呼んでよね。それなら問題ないでしょぉ〜?」

「・・・・・気が向いたらそうする。」

真っ赤な顔で俯いてプチトマトを口に運ぶと、隣りではおかしそうに笑う声が響く。

・・・・・笑うな。

「そう言えばさ、いづみちゃんて男の経験なさそうだけど、彼氏いたの?」

何て失礼な質問をしてくるんだっ!!

「なっ?!しっ失礼なっ。私にだって経験のひとつやふたつ・・・。」

「あるの?」

「ひっひとつはあるもんっ!!」

はぁぁ。この年で一つだなんて・・・なんか、情けない。

「へぇ・・・いつ?」

「・・・・・大学2年。」

「そいつの事好きだったんだ?」

「そりゃ・・・じゃないと付き合わないし、そういう事もしないでしょ?」

「ヨカッタ?」

「ん〜・・そんな何回もって訳じゃなかったから何とも・・・って、何言わせるのよっ!!」

真っ赤な顔で彼を見て、いつものように笑われるのかと思ったら、意外な反応が返ってくる。

「ふぅん、そうなんだ・・・・・。」

あれ、急に黙っちゃった・・・何か私、変な事言った?

「・・・戸田君?」

「・・・なんかムカつく。」

「へ?」

・・・何がムカつく?え、私に対して?

私が対応に困っていると、急に戸田君が私の体を強く抱きしめてきた。

「えっ?!とっ戸田君?」

「俺、結構・・っつうかマジでいづみちゃんに惚れてるんだぜ?他のヤツとの事、そんな懐かしそうに話すなよ。なんか・・・超ムカついてきた。」

・・・・・・自分で聞いてきたくせに?

でも、それって・・・

「もしかして・・・ヤキモチ?」

「・・・悪いかよ。」

ボソッ。と耳元から聞こえる彼の声に、自然と笑みがこぼれてくる。

そんな、戸田君に比べれば私の経験なんてちっぽけなモノなのに、それにヤキモチを焼いてくるなんて・・・なんかちょっと嬉しいかも。

クスクス。っと小さく笑っていると、体を離して彼が拗ねたような表情を見せる。

あ、この顔。結構この拗ねたような表情・・・好きかも。

「何、笑ってんの?」

「だって、そんな2年も前の事・・・それもひとつしかない経験の事でヤキモチ焼くなんて。戸田君はもっとあるでしょ?私の方がヤキモチ焼かなくちゃいけないんじゃないの?」

「いっこでも10っこでも、ムカツクもんはムカツクのっ!そりゃ、自分の事を棚に上げてって言われっかもしんないけど・・・俺はそんだけいづみちゃんに本気だって事。はぁもう・・・すっげぇ、いづみちゃんを襲いたくなってきた。」

戸田君の視線が明らかに変わり、怪しい光を灯す。

雲行きが何だか怪しくなってきましたが・・・・・。

「おっ襲いたくなったって・・・ちょっと、何考えてるの?」



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